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「非アウトドアなIT系は高原でリモートワークできるのか?チャレンジ」をしてみた

これから書く内容は、自称「非アウトドア人間」のIT系従事者がお誘いを受けてキャンプ体験もできる知人の山小屋(山荘に近いと思うので以降「山荘」とする)に行き、そこまでの思案と現地で体験したことに基づく所感である。同類な人は他にたくさんいると思われるが、あくまで個人の価値観からの考えであって、全ての方に当てはまるわけではないことは最初に言っておく。

なぜ行くことになったのか?

場所は山梨県某所。知人が私財を投じて作ったリモートワークができる山荘に、IT系の仲間たち6〜7人が集って体験し、使い方を考えるという集いにお声がけいただいた。現地にはWiFiも電源もキッチンもある。宿泊はテントと寝袋に泊まることになるという(軽いキャンプ状態)。生粋のインドア派な私にとって、こういう機会でもなければキャンプっぽいアクティビティをすることは多分ないだろうと思った。またこの施設に対して意見を前々から求められていたが、体験しないことには言えないなと思って、チャレンジしてみようと思ったのがきっかけである。

私と山、私にとっての山

アウトドア体験はある

インドア派と書いたが、全くアウトドア活動がダメということはない。高校時代のカナダプチ留学ではカヌーを同級生と漕いで無人島に行き、キャンプファイヤーと山小屋に一泊するという体験はしたことがある。また、仲の良い友達とトレッキングに行ったり、高原に旅行したこともあって、全く経験がないとか、必要な装備がわからないとか、山のアクティビティが嫌いとか、そういうことでもない。ただ、山登りしたり、テントで寝袋で寝たり、という経験がなかっただけ。
山と海、どちらが好きかと言われたら、どちらもそんな高い頻度でアクティビティはしに行かない。趣味が音楽活動なので、基本的に休日はインドアアクティビティで過ごしているからだ。でも、自宅が海に近いので、しょっちゅう自転車で港や海辺の公園まで行って、波の音を聞きながらぼんやりするのは好きではある。もし自分の生活圏に山があれば、登っていたのかもしれない。

虫が嫌い

山に関しては一つ難点があって、それは私が大の虫嫌いということだ。小4の時に引っ越した今の実家は、畑と神社と森に囲まれていて、小山を取り崩したところに立った住宅地だった。一戸建ての家にはしょっちゅう何らかの虫が侵入していた。アリ、ダンゴムシ、ムカデ、ゲジゲジ、足の長い巨大なクモ。。。中でもムカデは天敵で、寝ている間にベッドに入ってきて足を刺されたことがある。さらにお気に入りのスニーカーの中に潜んでいて、歩き始めて爪先がモゾモゾしていることに気づき、道の途中で脱いで真っ赤な足のムカデが出てきたとき、私は近所の畑の前で、ひとり泣いた。
虫にまつわる出来事がトラウマに近いレベルで最悪なものであり、大人になっても克服はできていない。小さい頃からそういう環境だったならこうはなってないだろうと思う。なぜなら子ども時代を田舎や山で過ごしたことがある自分の親は、虫を見ても平気な顔で過ごしていたからだ。自我が出てきた年齢で突然こういう環境に置かれると、その反動で虫とは縁のない生活を送りたくなるのだと思う。

で、どうだったのか?

想定より大丈夫だった

前置きが長くなったのでこのタイミングで結論を書いておくと、テントも寝袋も、虫も、最終的に大丈夫だった。
二泊して、一泊目は大雨と緊張もあって寝付くまでに時間を要したが、二泊目はぐっすり寝て6時には目がさめて朝のコーヒーをいただき、周辺を散歩するという爽快さだった。ギリギリまで寝ているタイプとしては、こういうことは自宅ではまずやらない。朝が強くなくても、旅先ではスッキリ早起きできちゃうような感覚に近いかもしれない。
逆に今日はゆっくり寝たいな、ぐうたらしたいなと思っていても、起きちゃうのかもしれない。

時間が経つと虫が気にならなくなった

虫についてはお借りしたテント自体が非常に良いものだったのもあり、大型の虫がテント内に侵入するとか、寝袋に侵入するということはなかった。テント内のランプに集まる小さい虫たちは、持参した「押すだけベープ」で何とかなった。滞在2日目くらいから、パソコン作業や読書をしている時に虫が飛んでいたり、誰かが踏んだ虫が転がっていても、気にせず作業に没頭したりできた。慣れの問題であるということはわかった。(これは現地でご一緒した方々からも言われた)
ただ自宅や日常で過ごす空間がこういう状態なのは厳しいので、やはり旅先で置かれた環境に順応したということなのだと思う。

何日間なら滞在できるか?課題は?

個人的には2泊3日くらいまではいけるなという気持ち。小旅行とか合宿くらいの日数だったら、非日常の中で仕事をする、生活をするということは苦にはならず、無駄な疲労もないような気がしている。
また後述しているが「非日常の中の日常」を自分で実現することも大事で、普段のルーティンやスタイルで、集団生活の中で周囲に悪影響にならないものは現地でも積極的にやったほうが良いと思っている。それに必要な道具は多少重くても持っていく。
今回、自分が体験するまでに感じていた懸念、それをどう解消したか、体験してみて感じた課題についてはいくつかの種類があるのでそれを後述したい。

装備で持って行ってよかったもの・現地で借りてよかったもの

トイレ対策

  • 災害用簡易トイレ

  • 衛生用品

山荘と、山荘の近くに設営したテントに泊まると聞いた時点で、普段の自分の生活とも宿泊施設とも違う環境で過ごすことは覚悟していた。当然、テント内にトイレはない。またトイレのある山荘までは、テントから約50メートルくらいの坂を上がって行く必要があった(行った時はそうだった)。
もし夜中に行きたくなったら?懐中電灯があるとはいえ、天候の悪い状態でぬかるんだ斜面を歩けるか?しかも急に行きたくなるような緊急事態だったら?
近所の友人に聞いて持っていった方が良いとアドバイスされたのが、災害用簡易トイレ5個パック。これは使わなくても後で防災用品リュックに入れておけば良いし、いざとなったら、の用意があるのは安心感につながって安眠につながる(はず)。
普段から夜中にトイレに起きることがあったりする人にはオススメする。
それから、女性の場合は環境が変わるとバイオリズムの周期がズレて生理きちゃったということがあるので、最低限の衛生用品は必須。ただ私の感覚では、それ以前に、絶対この週はアイツが来ないなという時期に調整していきたいと思う(コンディション良い時に行きたい)。

泊まったテント


防災・防犯対策

  • 防犯ブザー

  • 南京錠

  • 頭に取り付けるタイプの懐中電灯(借用したもの)

実は山荘に行く1〜2週間前に、「女性ソロキャンパーのテントに男性が侵入未遂」というニュースを目にした。
今回、顔見知りの人もいれば、初対面の人もいる。そして女性比率が非常に低いことが予想された。近くに別荘地があり、民家もあって完全に孤立した山荘ではない。この時点で行かない選択をする女性はいるだろう。
女性ひとりでテントに泊まることが事前にわかっていて、それでも行くからには、何かあってはいけない。前提として、顔見知りも多い中で何か起こす人はいないと深く信じているけれど、夜中に間違ってテントに入ってしまったとかあったら良くないし、間違って入れる状態にしていたのが良くないと言われてしまうかもしれない。だったら考えられる対策をして行くに越したことはない。
そこで、女性ソロキャンパーの装備をインターネットで調べ、3点セットが大事ということがわかったので、揃えた次第である。
ちなみにテントは入口が1箇所だけのものもあれば、3箇所くらいあるものもあるので、南京錠を使うなら複数個を用意するのが良いことがわかった(もしテントを借りるなら、のお話)。
鈴は100円ショップで買って紐にでも通しておけば良し。
防犯ブザーは、夜中にテントや周りの環境の異変で災害になりそうとか、具合悪くなって助けて欲しい時のためにも、女性に限らず全員持っていた方が良いと思う。

懐中電灯は、ラジオ機能付きのものを持参していた。でも結局、現地でお借りした、頭にヘアバンドのように取り付けるタイプの懐中電灯(ヘッドランプと言うらしい)が両手が使えて便利だった。もし買って持って行くなら両手使えるやつが良さそう。

睡眠対策(初秋で10度〜20度前後の気候の場合)

  • 飛行機用まくら(膨らますやつ)

  • 薄いジャージ

  • 薄い通気性の良いパーカー(アウトドア用品が速乾性も高くベストだが、ユニクロのエアリズム系も十分だった)

  • 通気性の良い肌着(同上)

  • 通気性の良いスパッツ(同上)

  • 貼るホカロンミニ

見よ、人生初の寝袋(借用した)とマイまくら

寝袋とマイまくら(飛行機用)

今回初めて寝袋で寝てみてわかったのが、意外と、というより想定よりかなり温かいということである。事前に気候をうかがって、10度〜20度くらいの気温だったため、寒さ対策もしていった。寒さ対策はこちら。

  • パタゴニアのフリース(温かいし通気性のよいメッシュが付いている)

  • L.L.Beanのセーターフリース(ちょっと寒い時の羽織として最適)

  • ユニクロのウルトラライトダウンコート(折りたたみ)

  • レッグウォーマー

  • ヒートテック素材のスパッツ

補足:
冬山によく行かれる方とかアウトドアショップの店員さんから以前アドバイスを受けていたこととして、寒いからといって山でヒートテックはよろしくない。なぜかというと汗をかいた時にそれがそのまま冷たくなって汗冷えしてしまうから。そしてこれは自分自身も冬に汗冷えで調子崩したりと実感していることでもあった。それから寒い地域に旅行するときは、アウトドア系の肌着かエアリズムにフリースという出で立ちにしている。

結果的に、寝袋が非常に保温性が高くて、フリース着てると汗かくし、ヒートテックスパッツなぞを履いていたら足が暖かすぎて逆に眠れないという事態になった。そこで野球拳よろしく一枚一枚とっていって、最終的に残ったのが上述の服装ということである。これが1泊目の1番の格闘ポイントと言っても良い。
ちなみに貼るホカロンミニは、冷え防止対策のためお腹付近に貼ったのがとても効果を発揮した。冷え性の方はオススメ。
寝袋で寝たことはこの時までなかったが、枕はないだろうなということは想定できたので、少しでも快適な睡眠を実現するために、長時間フライトで使うまくらを持っていったところ、これは非常に役立った。ポイントを挙げるとすれば、そんなに空気を入れずにふくらますことだろうか(写真はちょっといれすぎだったので後で空気を少し抜いた)
ちなみに寝袋自体に抵抗はないか?というのは現地でよく聞かれたが、抵抗はなかった。私の感覚では、10時間以上のフライトで飛行機から支給されるブランケットを頭からかぶり、靴を脱いで眠れる人は、寝袋も同じ感覚で眠れるのではないかと思う。

その心は、こちら。
飛行機という空間に押し込められ、狭い席で周りがわちゃわちゃしててもマイリラックス空間を作れている(もしくはマイリラックス空間の暗示を自分にかけられる)

テントという閉じられた空間で、睡眠に足るリラックス状態を自分で作れるかどうか境目な気がしている。

水分対策

  • 蓋つきのコップ(保温できるやつ)

  • 保温ボトル(500mlくらいの)

私自身が普段から冷たいものをあまり飲まず、温かいノンカフェインのお茶をたくさん作ってボトルかポットに入れてマグに移して飲んでいることもあり、日常生活を離れた場所にいてもそこは継続したいと思った。なお、私は毎日2リットルくらい水分を取っている。
現地にはコーヒーメーカーもあるし、マグカップもあってお茶は入れられたけど、水分を多く取る人にとっては毎回ポット前に行くのが面倒なので、ボトルを持って行くと良いと思う。
結果的に、ボトルに常に温かいお茶を入れてマイマグで飲み、寝る時は満タンにしたボトルを持ってテントに移動して、ちょっと喉が渇いたら温かいお茶が飲める状態にした。これは言ってみれば「非日常における日常」で、私にとってとても大事なことだった。

衛生対策

  • アルコールティッシュ

  • 手ピカジェルなど

  • トラベル用歯磨きやシャンプーなど

  • 紙せっけん

  • 水で膨張するタオル(100円ショップで入手)

  • 捨てても良いタオルまたは100円ショップのタオル(大量)

新型コロナが収束したのかどうかよくわからないが、集団生活かつ近くにコンビニはないので、あらゆることを想定して持っていった。
ぬかるみで転んだり、暑さで汗だくになったり、雨に降られるなどしても、自宅やホテルのようにすぐシャワーには行けない。こういうプチトラブルみたいなことを想定して、タオルは大量にあったほうが良い。でも良いタオルはかさばるのでなるべく薄いやつをたくさん持っていった。
それから、過去の国内旅行でいくつか立ち寄り温泉や公共トイレなどに入ったことがあるが、大抵の場合、洗面台や手洗いにせっけんがなかったりする。なのでちょっと手を洗いたいなということがあった時、紙せっけんはあって良かった。
こう書くのは、私自身が気管支が結構弱く調子悪い時は吸入することもあるため、新型コロナ予防対策もそうだけど、そもそも風邪などをもらわないように普段から結構な注意を払っていたためである。消毒用品は普段使っているものを持参して、こまめに消毒していた。多分、その姿を見た人は、「なかなか潔癖だな」と思われたかもしれないが、本当に気管支を守りたい人もいることは知っておいて欲しい。

総合するとどういう滞在ができると良いのか?

非日常の中の「自分の日常」をどう自然に実現するか

非アウトドアな人間からするとアウトドアアクティビティは非日常である。でも全てが非日常すぎると疲れてしまうし、それが長い期間続いたり、高頻度であるのも疲れてしまう。
なので、山荘でリモートワークという選択肢自体はアリなのだが、非日常の中で「自分の日常」要素が自然に実現できるか、が快適さのポイントかもしれないと考えている。
いくつか挙げてみる。

  1. 生理的安全

  2. 心理的安全

  3. 2次活動(社会活動)環境の確保

1は、トイレ対策と防災・防犯対策の話である。これは日常レベルを実現するということではなく、非日常の中で心配なく過ごせる環境であるかという点だ。
心配なく過ごせるとは、トイレに行きたい時に安全に行けるか、熟睡できるか、ということである。
今回、施設としても様々な用意をしてくださり、自分でも色々な事前準備をして行ったので、大きな心配事は生じなかった(強いて言えば大雨の中のトイレくらい)。ただ様々な価値観の方がいると思うので、これで万全とは言い切れず、どこまで施設として対応するか、自己対策を求めるか、は考える必要がある。

2は、睡眠対策、水分対策、衛生対策である。今回は私のことを知っている人が結構いて、マイペースな人であることも、割と自分の意思をはっきりと言う人であることも、なんとなくわかっているだろうし、まぁいいかと思って、自分の日常で外せないスタイルを持ち込んで快適に過ごすことに努めたり、やってみたいことを色々やらせてもらうことを貫かせてもらった。

例えば、ランチタイムにみんなは山荘の管理人さんの作った焼きそばを食べているが、私はキャンプ飯を作ってみたかったので、自分の分のみ自作させてもらうとか。
普段から自炊していることもあって、自分のために作ること自体は「日常」である。一方で、現地でご一緒している人たちのランチを私がついでに振る舞いたいかと言われるとそれは「非日常」なのでNoである。
普段から家を行き来するような親しい友達に対して、お気楽な料理を提供するのは問題ないが、いろんな人がいるパーティーのような場面で振る舞うとかは前日からシミュレーションしたくなるくらい緊張する性質である。

これらのリクエストは、ご一緒した人々が知人やその友人たちであるからこそ伝えたり提案したりできたことで、初対面や関係値が遠い人だったら若干は遠慮したのではないかと思う(たぶん)。
実際に、ここで過ごす時、「自分は今はこうしたい」と自然に伝えられる空気感の醸成は大事なのではないかと思った(私は自己主張が激しい人間だけど、そうではない人はみんなに合わせますとなっちゃって、疲れちゃうケースがあるのではないかと)。

またテント泊について、今回は私は参加人数の関係もあり、女性1人にしてもらったが、これが複数人になるのは相手との関係性によっては抵抗がある。
全員で雑魚寝をする分にはいろんな人がごっちゃになっているので気にならないが、2人〜3人でいきなり閉じられた空間で同居するとなると、お互いに色々なことが目についてしまうと思う(男性はイビキ問題とかありそう)。
特に社会人になってから知り合った人たちとはお互いにプライベートな姿を見せていないので、すごく気を遣うことだろう。
次にテントで泊まるときも私はひとりを希望するのではないかと思う。

3についてはリモートワークや、クローズドな合宿、ワークショップを行うような時、その空間がきちんと確保できるかという点である。
通信面では問題ないので、どちらかというと同時期にご一緒する人々の声、機密情報を含むような会議対応などである。
会議はテントを個室として使えば良い。
施設の広い場所を借りてワークショップをしている時にそれに集中できる場所があるか、ワークショップを行うことで他の利用者の方がうるさいと思わないか。実行しようとしていることが滞りなくできるのかはワークショップ運営を行う者としては気になる。

非日常の中の日常とは書いたものの、その「日常」が人によってバラバラで日常を貫きたい度合いもグラデーションがある。そのあたりをどう許容し合うのかは場の設計が関与する。

自作キャンプ飯(サバ缶パスタ)


綺麗な空気は最強の薬

最後にいくつか写真を掲載したい。
近隣を散策して、栗がいっぱい落ちていたり、稲穂が刈り取られていたり、夜は一面の星、と関東にいたら巡り会えない光景を見られて、リフレッシュになった。
なおかつ空気が綺麗なので、冷たい空気を吸っても、気管支は無事だった。逆に帰り道、八王子付近からなんか埃っぽいなと感じるくらいであった。

一面の栗たち
ベートーヴェンの田園が聴こえてきそうな光景
一面の星(iPhone撮影)
駅からのパノラマ写真(周辺の山々)