思い出のゲーム「ライブ・ア・ライブ」
「覚えておくがいい…誰しもが魔王になりえる事を…」
これはこのゲームでいちばん印象に残ったセリフ。
当時のRPGといえば、当然のごとく「勇者がいて魔王がいる」という設定のもと、勇者が魔王を討伐するという内容のものが多かった。そして、そこに魔王がいる理由について深く考えることはなかった。しかしこのゲームの魔王は、まさにその魔王を討伐しようと立ち上がった一人の剣士だった。
正義感に基づき、民衆のためにとった彼の行動が、ひょんなことから誤解され、邪推され、噂が拡散し、誰からも信用されなくなってしまう。最終的にすべてを失った主人公が、魔王としての道を進み始める。
そんな「誰しもが魔王になりえる」という内容が、タイトルにも込められている。ライブ・ア・ライブのLIVEは、逆から読むとEVIL(悪)である。また、タイトル表記は『LIVE A ƎVI⅃』 と鏡写しの文字になっており、生きることと悪の概念が表裏一体であることを表現している。
このゲームには、当時のRPGとしては斬新な要素が多数盛り込まれている。当時、中学生だった私は、この作品からいろいろと衝撃を受けた。
・魔王の視点、魔王サイドでも進められるストーリー
・悲しい、やり切れない結末多めのマルチエンディング
・隠し条件から発動されるスーパーバッドエンドの存在
・やり方次第で難易度が劇的に変わるゲームシステム
もう30年近く前の作品だが、「本来正義感(もしくは別の何らかの意図)からなされた行動が曲解されて拡散されて世間の不信を買う」様は、現代のSNS社会にも通じるものがあると感じる。「何もやっていないのにやったことになっている」場合も多かったりする。
現代社会は、より一層「誰しもが魔王になりうる」構造にあると再認識できるという意味で、30年近くが経った今でも色あせない作品であると思う。