11-12 マンチェスターユナイテッド vs マンチェスターシティ
DAZNのRe-Liveで11-12シーズンのマンチェスターダービーの放送があったので視聴しました.2011年10月23日プレミアリーグ第9節,マンチェスターユナイテッドホームのオールドトラッフォード開催です.
油売買で資金力を得て強化を続けてきたシティが前年の10-11シーズンで3位になり,初めてCL出場権を獲得,そしていよいよPL制覇を目指すというシーズンでした.
一方のユナイテッドは前年の10-11シーズンはプレミアリーグを制覇しています.09年夏に退団したCロナウドの影響もあって優勝を逃した09-10シーズンからの見事な奪還劇でした.今までは眼中になかったものの本格的なライバルになりあがってきた隣人のシティに引導を渡したルーニーのオーバーヘッドはあまりにも有名です.
しかし,CL決勝でペップグアルディオラ監督率いる当時史上最強といわれたバルセロナに1-3で粉砕されてしまい,失意の中,チーム中心選手のギャリーネビル,ファンデルサール,スコールズが引退してしまいます.連覇を目指しつつも,世代交代を急がなければならないシーズンとなっていました.
まあ,第3節でアーセナルを8-2でボコっているので,相変わらず最強でしたが.
さて,ではこの試合のスタメンを見ていきましょう.まずはユナイテッド.
......................地味だ
基本布陣は4-4-2
GKはデヘア.引退したファンデルサールの後釜としてアトレティコからやってきました.
DFラインは右からスモーリング,ファーディナンド,エヴァンス,エヴラ.右SBにCBが本職のスモーリングを起用しています.エヴァンスは現在好調レスターの正CBとして活躍しています.
中盤は右からナニ,フレッチャー,アンデルソン,ヤング.
そして2トップがルーニー,ウェルベック.ルーニーの髪は復活の過渡期にあるようです.
チームを率いるのはおなじみサーアレックスファーガソン監督.翌シーズン終了後に勇退することになるので,コーチとしては晩年のころのことになります.
今シーズン夏の新加入は,デヘア,アシュリーヤング,フィルジョーンズの3名のみ.デヘアは世界最高のGBになり,デヘアユナイテッドと呼ばれるほど,チームを1人で助けるような中心選手になっていきます.ヤングとジョーンズはいずれもネタ枠っぽくなっていきますが,なんやかんや長期間在籍していたので適格な補強だったといえるのかもしれません.
続いて,シティのスタメン.
基本布陣は4-5-1
GKはハート
ディフェンスラインは,右からマイカリチャーズ,コンパニー,レスコット,クリシー.マイカリチャーズはシティのアカデミー出身の選手ですね.
中盤は,ヤヤトゥーレとバリーの2ボランチ.2列目は右からミルナー,シルバ,バロテッリ.ミルナーは今ではリバプールで鉄人として活躍しています.
そして1トップにアグエロとなっています.
ただ基本的にバロテッリは左サイドにいることはなく,アグエロとの2トップのようになっていました.シルバとミルナーもかなり自由に動き回り,左右どちらのサイドにも顔を出していました.ちなみにシルバは髪フッサフサです.
今はこんな感じ.あれ,もうちょい伸びてましたっけ...
チームを率いるのはロベルトマンチーニ監督.インテルでリーグ3連覇した後,シティの監督に抜擢されました.
このシーズンの主な新加入は,クリシー,ナスリ,アグエロ.クリシーとナスリはアーセナルから強奪してきました.強奪したというよりは二人とも魂を売却した感じですかね.また,アグエロはこのシーズン加入だったんですね.紆余曲折ありながらもずーーーーっとレギュラーで活躍し続ける存在となっていきます.そういえば,アグエロもデヘアもアトレティコから引っ張ってきたんですよね.アトレティコってほんとにいい選手を生み出しますね.
では,試合を振り返っていきましょう.
試合は大した動きを見せないまま,22分シティが先制します.シルバが中盤でボールをもって攻め上がります.ここでユナイテッドのフレッチャー,アンデルソンはプレスに行くことができずに,後方からFWのルーニーがプレスバックして対応していますが,これだけのスペースがあったらシルバからしたら余裕でしょう.
そして左サイドのミルナーにパス.ミルナーはシルバにリターンするようなマイナスのパスをします.
しかし,シルバはそのパスを華麗にスルー.ユナイテッドディフェンス陣は大いにつられてしまいます.
その先に待っていたバロテッリにボールが渡り,ダイレクトでシュート.狙いすましたシュートでした.ユナイテッドはエヴァンスがゆる~く対応するにとどまってしまいました.
そしてこのセレブレーション.
ドーーーーーん!!!!
"WHY ALWAYS ME ?"
これは当時超話題になりました.いつもバロテッリを騒ぎ立てるマスコミに向けたメッセージなのですが................
なんで心当たりないねん!!!!
ちなみにバロテッリは前日に自宅の風呂場で花火をして火事になっています笑
このシーンで特筆すべきは,バロテッリの落ち着いたゴールもさることながらシルバのポジショニングです.ハーフスペースという概念が当時あったかは定かではありませんが,いわゆるハーフスペースと呼ばれる位置にポジションをとっています.
前半はシティ1点リードで折り返しますが,後半開始早々ユナイテッドに大事件が起きます.
バロテッリにディフェンスライン背後に抜け出されそうになり,エヴァンスがバロテッリを引っ張って倒してしまいます.
そして問答無用でレッドカード.後半丸まる1人少ない状況で戦わざるを得ない状況になってしまいます.
この写真はヤングがレッドカードをもらったみたいになってますが,もらったのはエヴァンスです.ヤングはこういうところもいちいちお茶目ですよね.
ユナイテッドは交代策を用いずに,フレッチャーを右SBに,ファーディナンドを左CB,スモーリングを右CBにして対応します.スモーリングをSBとして起用していたことが地味に功を奏します.
しかし,そんな状況でシティ優位は変わらず,60分右サイドからシティが崩します.
右サイドいっぱいでボールを持ったミルナーからハーフスペースのシルバにパス.
ボールを一時キープしたシルバは縦に走りこんだミルナーにパス.ヤングやエヴラはミルナーについてこず,フリーで受けることに成功します.
そして,キーパーとディフェンスラインの間を通す速いグラウンダーのクロスを上げ,大外のバロテッリがゴールを決めます.今のシティでよくみられるゴールに通ずるものがある気がします.
ここでもやはりシルバはハーフスペースを攻略しており,感覚的なものか戦術的なものかはわかりませんが,明らかにハーフスペースを活用しようという動きが見えます.
ユナイテッドはたまらずアンデルソンに変えフィルジョーンズを投入し,ディフェンスラインのてこ入れを図ります.
さらにナニに変えてチチャリートことハビエルエルナンデスを投入し,完全にワンチャン狙いに出ます.
しかし,流れは変わらず次のゴールもシティに生まれます.中盤でフリーになったミルナーにファーディナンドがガッツリつられます.その空いたスペースにバロテッリが走り込み,そこにヤヤトゥーレがパスを出します.そしてそれにエヴラがカバーが入ります.
バロテッリは落としてミルナーにつけます.ミルナーは大外に張っているマイカリチャーズにパスを出します.エヴラはバロテッリに引っ張られ,ナニはプレスバックが遅れているので,マイカリチャーズは完全にフリーでボールを受けます.
そして再びゴールキーパーとディフェンスラインの間に速いグラウンダーのクロスを上げ,最後は大外のアグエロが決めます.最後のフィニッシュは二点目と瓜二つといえるものでした.
その後シティはバロテッリに変えてジェコ,アグエロに変えてナスリを投入します.攻撃を活性化させるとともにバランスを取りに来ているようにも見えます.この時のシティってアグエロ,バロテッリ,ジェコ,テベスと9番タイプが4人もいるのえぐいですね.マンチーニはよくまとめててすごいです.ちなみにこの試合テベスは不在なのですが,CLのバイエルン戦でマンチーニにウォーミングアップを命じられても拒否したために2週間のベンチ入り禁止処分を受けていました.ほんっとマンチーニはよくまとめててすごいです笑.
一方で敗戦ムードのユナイテッドでしたが,81分1点を返します.フレッチャーが前を向いてボールをうけます.
そして降りてきたチチャリートとワンツー.
帰ってきたボールをダイレクトでゴールにぶち込みました.絵にかいたようなきれいなワンツーでしたね.それにフレッチャーのゴールも見事でした.
しかし,ユナイテッドが一矢報いたのもここまで.1人少ないユナイテッドはシティの攻撃に耐えていましたが,試合終了間際にとうとう決壊します.
89分,コーナーキックから,ファーに流れたボールをレスコットが折り返し,最後はジェコが決めてゴール.まあ,ジェコが決めたってよりはジェコに当たったんですけども笑.
91分,カウンターを発動して中盤を独走したジェコから,サイドのシルバへパス.
最後はデヘアをあざ笑うようにあっさり決めて追加点をあげます.
さらに死体蹴りは続きます.93分,ユナイテッドのクリアミスの浮いたルーズボールを受けたシルバが,トラップしたボールを地面に落とすことなく,そのままジェコにパス.抜け出したジェコがゴールを決めます.
このゴールはシルバの圧倒的なスキルを目の当たりにしたことや,大勝の最後のゴールであったことから強烈に記憶に残っています.
マンチーニもニヤニヤが止まりません.
ゲームはこのままユナイテッド1-6シティで終了します.
ユナイテッドが6失点を喫したのは1996年10月以来とのこと.シティが敵地オールドトラッフォードで勝利を収めるのも1974年以来二度目のことだったそうです.
まさにユナイテッドからしたら本拠地で最悪の失態を犯したことになります.
そして,マンチェスターの覇権がユナイテッドからシティに移った瞬間でもありました.
ー最後にー
ユナイテッドは,サイドにスピードやテクニックのある選手を配置して一気に攻め上がりクロスを上げるという,非常に”らしい”戦い方をしていましたが,ほとんど機能していませんでした.2トップがルーニーとウェルベックではなかなか厳しいものがありますね.中盤もフレッチャーとアンデルソンでは物足りなさがあります.やはりスコールズの偉大さを感じます.キャリックがいたらもう少し違ったかもしれません.
というか,ユナイテッドはあんなメンバーでよく結果を出していたな,と改めて思いましたね.それを可能にしていたのがファーガソンだったのでしょう.ファーガソン勇退後に就任したモイーズが大失敗して,ユナイテッドはそれ以来不調にあえいでいます.しかし,このような戦い方ではファーガソンがその後も率いていたとしても似たような未来になっていた気がしなくもないと思いました.二度にわたりペップに手玉に取られたファーガソンもうすうす気づいていたんじゃないかなと思います.
シティは何人かの選手で丁寧にサイドを攻略するシーンが目立ちました.特にシルバ,ミルナーを中心として得点シーン以外でもハーフスペースを攻略するシーンがたびたび見られました.4-4-2の守備を殺すために最近流行っていることですが,まあ当時はシルバに気分よくプレーしてもらう土壌を整えたら,勝手にそこを攻めたって感じなんですかね.ただあまりにも似たようなプレイが続いていたので,狙っていた形だったのかもしれません.4-4-2殺しに使われるプレーが純4-4-2のユナイテッドにはまったのは言うまでもありません.
また,シルバとミルナーがポジション関係なくボールサイドで自由に攻撃していたのも印象的でしたね.ミルナーは今の雰囲気からは想像できないほど器用なプレーをしていて驚きました.
このシーズン,ユナイテッドとシティはPL制覇をかけてデッドヒートを繰り広げ,優勝は最終節に持ち越されます.最終節を残して両者は勝ち点86で並び、シティが得失点差+63で、ユナイテッドが+55でした.
最終節,ユナイテッドはサンダーランドに1-0で無難に勝利をおさめます.
一方,勝たなけれなならないシティはQPRに大苦戦.1-2で負けた状態で後半アディショナルタイムに突入.しかし,ここからジェコが点を決めて同点,さらにアグエロが劇的なゴールをぶち込んで大逆転優勝を決めたのでした.シティがリーグを優勝するのは1967-68シーズン以来.ゴール後,ユニフォームをブンブン振り回すアグエロの姿は強烈に目に焼き付いていますね.
ちなみに最後アグエロにアシストしたのはバロテッリなのですが,バロテッリがプレミア公式戦でアシストを記録したのは後にも先にもこの一度きりらしいです.それほど劇的だったということですね.
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