05-06 レアルマドリード vs バルセロナ
05-06シーズン第12節サンティアゴベルナベウ開催のクラシコです.
第一次銀河系軍団晩年のレアル
対
ライカールトとロナウジーニョで一時代を築きつつあるイケイケのバルサ
という構図です.
では,スタメンを見ていきましょう.まずはホームのレアルから.
基本布陣は4-4-2
GKは守護神カシージャス.
DFは右からサルガド,セルヒオラモス,エルゲラ,ロベルトカルロス.セビージャから新加入のラモスはなんとまだ19歳.メッシとともにこれからのクラシコをけん引していく存在になります.
二列目は右からロビーニョ,ベッカム,ガルシア,ジダン.石頭ジダンは今シーズンオフのW杯後に引退するため,これがラストシーズンとなります.ロビーニョは今シーズンサントスから加入した21歳です.
一列目は全盛期の過ぎたロナウドとクラブ史上最高の生え抜きラモス.
ジダンは基本的に中央でプレーするのでサイドにいることはありませんでした.また,銀河系としての寄せ集めのしわ寄せとしてベッカムをボランチで起用していることも特徴的な点といえます.
銀河系軍団で中盤の守備を一身に担っていたマケレレはもういません.
チームを率いるのはヴァンデルレイ・ルシェンブルゴという監督ですが,正直全く知りません.
続いてアウェーバルセロナ.
基本布陣は4-3-3
GKは生え抜きバルデス.
DFは右から生え抜きオレゲル,エジミウソン,生え抜きプジョル,ファンブロンク・ホルスト.
中盤アンカーはマルケス.CBもできます.
インテリオールにデコと生え抜きのシャビ.
3トップに右から生え抜きの18歳メッシ,エトー,エースのロナウジーニョ.さすがにメッシ若いですね.
(それにしても生え抜き多い...)
この写真を見ると,胸スポンサーがないことに気づきます.バルセロナは昔はユニフォームに企業名を入れないというオサレな主義を貫いてきました.その後,Unicefのマークを付けるのようになるのですが,広告費を受け取るのではなくバルセロナが児童福祉に寄付するという、超絶オサレなことをしでかします.しかし,ひとたび企業ロゴがユニフォームに刻まれてしまうとだんだんとなし崩しになり,今ではガッツリ胸スポンサーがついています.ちなみに今の胸スポンサーは我らが日本の楽天です.イニエスタらバルサ風の選手がたくさん神戸に来たのもそういった繋がりがあります.
エースのロナウジーニョは03年夏にPSGから鳴り物入りで加入した,というわけでもなかったようです.当時のバルサ会長はベッカム獲得を公言していたのですが,レアルに強奪されたため,外れ一位的な感じで獲得したようです.まあ,それでもユナイテッドと相当争ったっぽいですが.ほんとに時の運で何が起きるかわかんないですね.
そんなロナウジーニョも今では,偽造パスポートでメキシコに入国し逮捕され,監獄内サッカーで無双するというわけわかんないことしてます笑
チームを率いるのは3シーズン目のライカールト.前のシーズンはリーガを制覇しているので,連覇を狙うシーズンとなっています.
では,試合を観ていきましょう.
レアルは基本布陣は4-4-2でしたが,攻撃時は左のジダンが絞って中央に構えるため,その構図は崩れます.そのため左サイドはロベカルが気合で何とかするか,ロナウドが流れる場面がちらほらありました.
右サイドはロビーニョが開いて受けるシーンが多く見受けられました.ただ,ロビーニョは時折左サイドでも受けてましたし,もっと言うと中央にいる機会も結構多かったので,前線は比較的自由が与えられていたのかな,と思います.
開始直後はそこそこ一進一退の攻防が繰り広げられていたように思います.ただ,バルサの方が3トップを中心に効果的な攻撃ができていたように思います.
一方でレアルも狙ったような形からチャンスを作りかけます.例えばこのシーン.15分,ボランチで先発したベッカムが中盤で前を向いてフリーでボールを受けます.
そして右に開くロビーニョの裏抜けめがけて抜群のタイミングでパス.
しかし,ここはファンブロンクホルストのギリギリのクリアで難を逃れます.
ベッカムは本来サイドの選手ですが,この試合はボランチとして中盤から効果的な中長距離のパスを何度も繰り出します.
しかし,この直後15分,前がかりになったレアルのライン間で受けたメッシが独走します.そしてこのままボックス付近まで1人で運んじゃいます.
しかし,そのボールをまさかのエトーが強奪!!!!
そのままディフェンスをかわし,ロベカルのカバーが間に合う直前にシュート
このシュートが決まりバルサが先制します.
ドリブル中のメッシのボールをかっさらうなど今では考えられませんが,この時の序列を如実に表している出来事だと思います.
この後バルサは3トップを中心に何度もチャンスを創出します.正直,メッシもエトーもロナウジーニョも1人を抜くことなどたやすいので,レアルからすると二列目を突破されてしまうと,バルサの3トップ相手に4バックで守るのはなかなか厳しいところがありました.
一方のレアルはポジションがバラバラなこともあって,パスをつなごうにもちぐはぐな展開が続きます.ボールを持ってもパスでうまくつなげずに,一瞬にしてバルサ守備陣にからめとられるというシーンが目につきました.
前半はこのまま終了し,バルサ1-0レアルで折り返します.
後半開始してしばらくして,ラウールが怪我をしてピッチを後にします.
代わりにサッカー界の白石麻衣ことグティin
レアルは顔面偏差値を爆上げすることに成功します.まあ,ラウールも相当イケメンですが.
グティが入ったことでそれまでよりはボールを前線に運べるようになります.また,中盤をグティに任せることができるようになったのでベッカムが動きやすくなります.
例えば59分のこのシーン.右SBのサルガドが大きく上がったことでベッカムとともにサイドで数的優位を作ります.そしてバルサの左SBファンブロンクホルストがプレスに行ききる前にベッカムがクロスを上げます.
しかし,クロスの質が低かったことや,中の準備が不十分だったこともあり,シュートまではいけません.
それまでよりゴールに迫るシーンは増えましたが,シュートまで行けないという展開が続きました.
一方のバルサは上記シーンの直後,上がったレアルSBサルガドの位置にぽっかり空いたスペースでロナウジーニョがボールを受け,爆走していきます.
そしてまずマッチアップしたのがセルヒオラモス.
瞬殺
続いてマッチアップしたのが,エルゲラ
瞬殺
そしてなんなくゴール.
正直ラモスの性格考えるとファール覚悟で止めに行ってるはずなのに触れることすらできないって相当ヤバイですよね.最後のエルゲラはペナルティエリア内ということで強く当たれなかったのかもしれませんが,空気みたいなかわされ方をされてしまい,格の違いを見せつけられてしまいます.
守備者側からするとカウンター時に数的同数もしくは数的同数+1程度ではバルサ3トップ相手にはどうしようもないですね.これがバルサの3トップが守備時に下がらなくても何とかなる仕組みです.つまり,バルサ守備時に3トップを前に残しておくことで,相手チームは少なくとも4枚はディフェンスに待機してなければなりません.そのため,バルサ守備陣は数的優位な状況で守れるという仕組みになっているというわけです.上記シーンではレアル右SBのサルガドが上がっていたこともあって,レアルからしたらさらに厳しい状況になっていたといえます.ファーストDFがCBのラモスでしたもんね.
69分メッシに代えてイニちゃんイン
今考えると信じられない交代ですが...
当時は二人とも青二才です笑
2点を先行されて攻めるしかないレアルですが,77分,この試合最大級の決定機が訪れます.
4-3で守るバルサに対してリスク覚悟でSBを高く上げることで優位性を見出し,このシーンでは右サイドのハーフスペースをSBサルガドが攻略します.
そしてそのまま前を向いてシュート!
しかし,これはGKバルデスのファインセーブにあいゴールには至りません.
ただこうなるとお決まりの展開で右SBのサルガドが空けたスペースをやはりロナウジーニョが攻略します.
そしてまたもマッチアップするラモス
瞬殺
そしてそのままゴール
2点目のデジャヴともいえるこのゴールで試合は決定づけられてしまいました.
このゴール後,レアルホームのサンティアゴベルナベウでは信じられない光景が見られました.レアルサポーターが今日のロナウジーニョのプレーに対して拍手を送ったのです.クラシコにおいて相手チームのプレーに対して拍手喝采が起こることは後にも先にもないと言われるので,それだけセンセーショナルな出来事だったといえます.まさに”脱帽”という感じですね.
右SBのサルガドが上がって空いたスペースをロナウジーニョが攻略するというのは,2点目の時と同様で完全に狙っていた形だと言えます.
中盤で守備を担っていたマケレレを放出してベッカムをボランチで起用するようになったことの弊害は想像以上に大きかったようです.
そういえば,「ロナウジーニョを無力化するには放っておくべし」という考え方があり,事実,セビージャ時代のダニエウアウベスがロナウジーニョを完全無視して攻撃しまくってロナウジーニョを無効化しましたという話があります.しかし,このゲームではロナウジーニョサイドのSBのサルガドは思い切って攻めあがっていましたが,ロナウジーニョを無効化できませんでした.なぜでしょう.わけわかんないですね.わかる方いたら教えてください.
試合はこのままバルサ3-0レアルで終了しました.
ーさいごにー
ロナウジーニョ全盛期はさすがに最強でしたね.さらに彼含めたエトー,メッシとの3トップもレアル守備陣を蹂躙していました.シャビやデコを中心とした繋ぎも見事で,スムーズに前線の3枚にパスを供給していました.
一方のレアルはメンバーこそ豪華そのものでしたが,ひとつもかみあっていませんでした.「船頭多くして船山に上る」とはまさにこのこと.少なくともマケレレは残しておいた方がよかったですよね.第二次銀河系軍団の際にシャビアロンソを獲得したのはそういった意味も含めて最高にクールでした.
このシーズン,バルサはそのままリーガとCLを制します(CL決勝は我らがアーセナルが相手でした).そしてロナウジーニョはバロンドールを獲得します.
しかし,イケイケのバルセロナもロナウジーニョもこのシーズンをピークに徐々に下降線を描いていきます.そして2008年夏ロナウジーニョは構想外となりミランに移籍します.構想外を言い渡したのは他でもないこのシーズンから指揮を執ることになったペップグアルディオラでした.その後のペップ下でのバルサの隆盛は言うまでもありませんが,トップチームで初めて指揮を執る監督が,衰えていたとはいえロナウジーニョを構想外にするなんて,正気の沙汰とは思えませんね笑
そういえば,バルセロナはルイスエンリケ体制あたりからバルセロナらしさを失いつつあると言われています.確かに生え抜き選手を中心として”ティキタカ”を体現していたペップ体制のころと比べると,MSNと呼ばれるトリデンテによる攻撃に偏重していました.しかし,この05-06シーズンのバルサを見ると,”バルサらしさ”とは何だろうと思わざるを得ないです.あまりにも3トップの躍動が目立ちますからね.ただ一つ,生え抜き選手を使わず,マネーゲームによるチーム強化に乗り出すことは,アイデンティティを喪失することになりかねません.なぜならそれがレアルの十八番だからです.今のバルサは徐々に生え抜き選手を使わない方針に傾きつつありますが,そこは一線を画してほしいところです.
一方レアルはやはり波に乗り切れずに,ヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ??監督はシーズン途中に解任されてしまいます.そして銀河系軍団も解体されていくのです.
銀河系軍団の中心選手でもあったジダンはこのシーズン終了後のWカップの頭突きをもって引退するのですが,2016年冬に監督としてレアルに戻ってきます.監督としての才能もレベチなのもすごいですよね.
この試合でロナウジーニョに圧倒された若き日のセルヒオラモスですが,これが契機となったのか,相手を止めるためには手段を択ばなくなります.その証拠に,2020年5月現在退場回数でレアル,リーガ,CL,クラシコ,5大リーグすべてで史上最多となっています.名実ともに史上最強のレッドカードコレクターとなり,白い巨人における赤い悪魔として君臨し続けることになるのです.
世界最高峰のダービー”クラシコ”ですが,この試合に出場していたメッシとラモスがその後のクラシコをけん引していきます.2020年5月現在,クラシコ最多得点は26点でメッシ,最多出場は44試合でラモスとなっており,15年以上も二人は中心選手として活躍し続けています.
クラシコには様々な因縁もあるのですが,ダービーの起こりなども含めて一度まとめてみたいと思います.クラシコに限らずですが.
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