審判員の練習をどうするか?
暑い夏の期間、選手時代はただひたすら熱い時間の中
ボールを追いかけていましたが、昨今の暑さはそれすら
許されないのではないかと思わせる暑い日が続いて
います。
正直あの環境では技術的にうまくなりたいというよりは
精神修行のような感覚がありましたが、みなさんは
いかがですか?
少し間が開いてしまいましたが、先日の試合で感じた
ことを書きたいと思います。
審判員の練習とは?
普段のトレーニング
選手の皆さんは、チームに監督がいればメニューを
与えられますし、自主練では自分の技術を磨いたり、
フィジカルトレーニングをしたりしていますが、
審判員のトレーニングとはどういうものがあるで
しょうか?
自身が1級審判員をしていた時期はトレーニング
といえば、フィジカルトレーニングがほとんどで、
判定力を鍛えるトレーニングをしていたかと
言われると、正直ほとんど記憶にありません。
審判員にとって判定力を鍛えるトレーニングは「試合・
プレーを見ること」が大部分になってくると思います。
選手の皆さんのようにゲームの中で判定をすることが、
日常のトレーニングの中で出来る人は、自身がチームを
指導している人以外はほとんどその機会がないのでは
ないでしょうか。
1級審判員であれば、JFAから各担当カテゴリーの映像が
送られてきたり、Jリーグの全試合を振り返るシステム
のアクセス権をいただいて、その週にあった警告・退場
・アドバンテージ等のシーンを振り返って見る機会が
あります。
2級・3級・4級の方々はそういったシステムもない
ですので、自身でDAZN等と契約してJリーグの映像など
を見るしかないと思います。
ただこれはあくまでも止まった状態で何度もリプレイを
見て判断しており、判定力を高めるトレーニングになる
一面もありますが、その反面映像のイメージが残って
しまい、印象で判断してしまうというデメリットも
あります。
審判の判定は試合によって違う?
私がよくサッカーをたまにしか見ない方から聞く意見
としては、「Jリーグとか海外の試合はあんなにシャツ
を引っ張ってるけどいいの?」という疑問でした。
正直、競技規則には相手を押さえることはファウルと
なるとしか書いてありませんので、文面からすれば
そのプレーに差はないはずです。
しかしながらサッカーの審判員は試合のカテゴリーや
選手によって判定に幅があります。
それは選手がそのままプレーできるのであれば
ファウルとしないこともあり、すべてをファウルと
してしまえば、サッカーのエキサイティングな部分が
削がれてしまいます。
Jリーグの選手ともなれば、多少の接触や押さえられる
ことも振り切って進めることもあり、行われたファウル
のようなシーンも影響を見極めることになります。
実際に審判員によってこの人はファウルをなかなか
取らないという人もいれば、簡単に笛を吹くと思われる
人もいます。
審判員は簡単な文章で書かれた競技規則を適用する為に
判定の幅(人によって判定が変わる部分)が極力
小さくなるような研修をしています。
激しいプレーを流しても荒れない審判員
同じサッカーの審判員であっても、すごくタフな
サッカーをする基準で笛を吹いても試合が荒れない
審判員がいます。
実際に私もいかに笛を吹かない、カードを出さない
審判員になれるかを目指していました。
そこの違いとは選手が嫌なファウルに関してはちゃんと
ファウルとし、どちらともいえない・選手は続けて
プレーしたいという判定に関しては笛を吹かず、
コントロールできるかどうかだと思います。
選手の中には相手から当たられることを利用して
ドリブルする選手や、それを利用して相手を引き付けて
スペースを作る選手もいます。
そういった選手は簡単にファウルとすると逆に
ファウルをもらうために簡単に倒れるように
なったりします。
審判員としては選手が続けようとしているのか、
影響はどうか、またされて嫌なプレーではないか
(ケガにつながるようなプレー)を見極める必要が
あります。
実際にJリーグの選手たちは足の裏を見せて
飛び込んでくるプレーにすごく怒りを露わにします。
これはケガにつながりやすいプレーであり、選手は
ケガしてしまえばプレーが出来ず、最悪契約が
切られてしまうという恐怖があります。
その為、怪我するかもしれないプレーをされると
相手にも怒りますし、対処してくれない審判員に
対しても怒ります。
しかしこれは見た目に激しいプレーでなくても、
少しの接触でも起こります。
たまになんでそんなに痛がっているのかと言われたり
しますが、当たり方によっては見た目以上のダメージが
あります。
(小指を角にぶつけたときってなんであんなに痛いん
ですかね)
そういったプレーはやられたプレーヤー経験のある
レフェリーは敏感です。
かく言う私はそこまでの選手経験がなかったため、
そこを共感することが一番難しいと感じていました。
なので試合中に選手に「今のプレーはどうだった?
ファウルにした方が良かった?」
なんて聞いたりしたこともありました。
最近の若手審判員はプレー経験をあまり積まずに
レフェリーになる方もいるので、なるべくプレーヤーを
出来る人にはプレーヤーを続けてファウルされる経験を
してきた方がいいよなんて伝えます。
(冗談ぽく言いますが結構本気です。)
審判の技術向上に必要なことは?
ここまで審判員の判定について述べてきましたが、
今日言いたかったことは審判員はもっとチームと
連携して、試合中にその判定についてやった方
やられた方両方に意見を聞ける場をどう作るかが
重要となってくると思っています。
それに一番いいのは練習試合です。
実際私も審判を始めたころは高校や大学の練習試合で
笛を吹かせてもらって、さっきの判定はどうだったか
当事者の選手に終わってから聞くようにしてました。
サッカーの審判員が施行している競技規則には
相手競技者を不用意に蹴ったらキッキングの反則と
するとしか書いていません。
どれくらいどのように蹴ったらファウルなのかは
審判員に委ねられています。
だからこそ選手の皆さんが今のはプレーに影響が
あったとか、当たったけど気にならなかったとかの
意見をもらうことは非常に重要です。
審判員の判定力を上げるトレーニングは現場でしか
できません。
なのでもっとチームの方とコミュニケーションを
取ってそういった場に出向いていくことで、
お互いの理解も深まっていきますし、
よりよいサッカーが作られていくのではないかと思います。
映像を何度も見ていても、同じシーンは一度として
ありません。
審判の判定は受け取る側(選手)の感覚も大きく
左右します。
審判指導者としても現役審判員としても、
もっと若手審判にチャレンジの場を作れるように
働きかけをしていけたらと思っています。
これを読んでいる選手の方で身近に審判を懸命に
やっている方がいるという方はぜひ一度練習試合に
呼んで、意見交換をしてみてください。
そこにはお互い新たな気づきがあるかも
しれませんよ。