選手の思いと審判の思い
忙しくなるとすぐに筆が止まってしまい、ほとんど更新されずでした。
今回は最近行ったある取り組みについて書きたいと思います。
オフザピッチでの意見交換
最近若手審判員の経験を積む機会を作ろうと、チームの関係者に頼んで練習試合に審判員を派遣させてもらう機会を作っています。
その中で感じたことを少しご紹介させていただきます。
その日派遣した若手審判員21歳は前の週に公式戦でそのチームの試合を担当し、異議による警告を2枚出していました。
毅然とした対応が出来ていると褒められる反面、私の感覚では異議で警告が出るということは、選手とのコミュニケーションがうまくいかなかったんだなと感じます。
その意見交換は若手審判にはなかなかできない経験だったみたいで、いろんな気づきがあったと喜んでもらえました。
私も若いころには上のカテゴリーに所属するチームの試合を担当するときは選手に舐められてはいけないと思い、毅然と選手に接することを心がけていました。
Jリーグ開幕頃、両者の関係性は?
余談ですが、日本の審判界は選手とのコミュニケーションについて変遷してきた歴史があります。
Jリーグ開幕した頃は審判指導者からは選手とコミュニケーションを取るより強さを全面に押し出していく事を求められていました。
当時審判を担当されていた方の多くは先生をされていた方が多く、「審判と選手」は「先生と生徒」という関係性に近かったかもしれません。
その後も審判は強くあるべきという考え方から、選手に負けないことが重要視され、選手との距離感(実質的にも精神的にも)をうまく取ることが求められました。
その一貫として体幹を鍛えて姿勢を正すなんてこともありました。
変わり始めたキッカケは家本さんのゼロックススーパーカップ
以前も書きましたが、2006年ゼロックススーパーカップでの一件以降少しずつ選手との関係性が変化してきました。
選手とは戦うのではなく、一緒に作り上げる仲間として様々なコミュニケーションを取ることを求められてきました。
選手の側からしても、判定に対して納得がいかないことが日常茶飯事です。
なんせ自分はファウルをしようとしているわけではないのにファウルを取られることもありますし、自分はフェアにプレーをしていると思っているのに笛が鳴るんですから。
「なんでファウル?」「どこがファウルなん?」という言葉はピッチ上でよく選手から発されることがあります。
そこで重要になるのが選手と審判のコミュニケーションです。
最近の指導として選手とうまくコミュニケーションを取りなさいという指導をされることが若手の審判員には多いのではないかと思います。
若手の審判員の皆さんは「うまくコミュニケーション」取れていますか?
選手の求めているコミュニケーションとは?
そこで今回の試みですが、これをやろうと思ったきっかけはある監督さんとの話でした。
その方との話で印象的だったのは、ファウルを取った時に何のファウルを取られたのかがわかっていない選手が多いという事でした。
選手は必死にプレーをしている中で、比較的わかりやすいファウルに関しては理解していますが、押した・押さえた・引っ張ったなどの審判によって幅の出てしまうファウルについては特にどの部分がファウルだったかがわからないとの事でした。
審判の立場で言えば、その瞬間にファウルと判断すれば笛を吹きますが、細かく説明することができません。
そこで「今の手の使い方はよくない」や「接触部位が足だからファウル」などショートフレーズで伝えてあげると、「ああそうなのか」と消化することができます。
しかし笛は吹かれたけど、何がファウルかわからない状態で「何がファウル?」と聞いても答えてもらえないとフラストレーションと不信感がたまっていきます。
選手と審判のコミュニケーションというと、対面して話すことや選手とフレンドリーに話すことのように見えますが、試合を止めず流れを作るためにはショートフレーズを伝えることで解決することが結構あります。
ベテランになれば人生経験も積んでいろんな方とお話しできるようになりますが、そういう経験が少ない若手審判員はショートフレーズを伝えてみるということをやってみてください。
そうすることであの審判はわかりにくいというようなことが減ってきます。
一度お試しください。