第23節 大分対川崎

今回はjリーグの大分対川崎について書いていきたいと思う。

大分のフォーメーション
GKはウィリアム
DFは左から三竿、エンリケ、坂
MFは左から香川、小林、長谷川、井上
FWは左から渡邊、長沢、野村

川崎のフォーメーション
GKはチョンソンリョン
DFは左から登里、谷口、ジェジエウ、山根
MFは左から橘田、シミッチ、脇坂
FWは左から長谷川、ダミアン、家長

今回は前半の給水前と給水後、後半の給水前と給水後の4つの場面に分けて、互いの守備と攻撃について書いていきたいと思う。

<前半の給水前>
~大分攻撃時、川崎守備時~
大分はビルドアップ時、ボランチの選手が守備ラインに入った4-4-2、もしくはGKを含めた4-4-3のシステムであった。一方で、川崎は家長は外を切りつつCBにプレスをかけ、ダミアンは中盤の選手へのパスコースを切りながらプレスをかけていた(プレスとはいえ強度なものではない)。中盤におりてくる野村に対しては、脇坂がマークについていた。GKがボールを持った時、家長がCBにプレスをかけているため、左SBの位置をとっている三竿がフリーで受け、攻撃につなげられるシーンがあった。8分13秒~8分53秒のシーンである。GKから三竿にパスが通ったとき、三竿の前方にいるのは大分の香川と川崎の山根であり、2対1の状況ができる。大分は、GKから左サイドへのフィードは試合中何度もみられ、この試合の起点を左サイドで作りたかったのが分かる。また、左サイドのフリーになる選手に実際に何度かボールを届けることができていた。個人的には非常に計算された良いビルドアップであると感じた。だが、川崎の守備連動が大分のビルドアップよりも優れていた。三竿にボールが出た瞬間、山根が香川へのパスコースを切りながらプレス。そのため、三竿→渡邊→エンリケ→長谷川→井上と一度DFラインに戻し逆サイドへ展開している。左サイドの密集から右サイドに展開しているので、井上がフリーで受けられるはずであったが、登里の素晴らしいスプリントで縦へのコースをなくし、サポートに来ていた小林へのパスコースは橘田が切りながら寄せ、クリーンにボールを奪っている。登里と橘田の素晴らしいスライドからのボール奪取であった。仮に、橘田のスライドが間に合っていなかったら、小林にボールが入り、非常に有効な攻撃になっていたと考えられるので、素晴らしいプレーであったと思う。また、この守備でのスライドの意識を植え付けている鬼木監督に脱帽した。

~大分守備時、川崎攻撃時~
大分は守備時、5-2-3のシステムで、シミッチを野村がマンマークで付き、残りの二人がCBとインサイドハーフへのパスコースを切るポディションに立ちながら、SBにボールが出た時にはスライドして対応するという戦術であった。だが、川崎はインサイドハーフの片方がシミッチのとなりに下りてきてビルドアップを助けていた。大分は、ボランチの選手は下りていく選手についていかなかったために、シミッチへのマンマークも外れ、マークの受け渡しが曖昧になり縦パスを通されることが多かった。9分の失点シーンでは、インサイドハーフが下りてきてビルドアップに参加していたわけではないが、そこへのパスコースが気になったためにSBへのスライドが間に合わず、山根からダミアンに決定的なパスを通されてしまったと考える。

<前半の給水後>
~大分攻撃時、川崎守備時~
大分の攻撃、また川崎の守備に関しては特に変更点はなかった。
だが、40分を過ぎるとその時間帯以前に比べて、川崎の切り替えのスピードが落ちていて、大分はボールを持てる時間が増えた。43分の渡邊の登里の背後のスペースを狙った動きなどはよかった。
一つ気になったシーンは、43分の三竿がライン間でボールを受け、最終的に長沢のヘディングシュートで終わった場面である。スローインの後のプレーであったため、デザインされた攻撃ではなかったと思うが、三竿の咄嗟に中に絞る動きは、とても興味深いと思った。

~大分守備時、川崎攻撃時~
川崎のビルドアップでの変更点は特になかった。一方で、大分は守備の改善が見られた。まず、長沢と渡辺の立ち位置である。給水前とは異なり、SBへのパスコースを切りつつCBへプレスをかけていた。その結果、空いてくるインサイドハーフには、ボランチの選手が給水以前よりもくっついていくようになった。SBに対してもWBが積極的にプレスに行くようになり制限できるようになっていた。だが、ボランチのスライドが間に合わなかった場合は、うまくはがされてしまう場面があった。34分のシーンはまさしくそうである。脇坂に対してのプレスが遅れ、前に向かれた後、小林は橘田に引っ張られ、空いたスペースに登里がフリーでボールを受ける。慌てて坂が登里に制限をかけに行くが、反対に坂の裏のスペースを利用され、ゴール前まで運ばれた。給水前の失点の原因、守備の修正が見られた給水後のプレーであったが、一つ目のラインを突破された後のプレスバックがあれば、もっと川崎にいやな思いを与えられたと思う。

<後半の給水前>
~大分攻撃時、川崎守備時~
基本、前半の給水後と同じシステムで互いにプレーしていた。川崎は運動量が回復せず、家長がSBをきりながらCBによって行くが、SBへのパスコースが空いており通されているのが気になった。

~大分守備時、川崎攻撃時~
こちらも基本的には、前半の給水後と同じシステムであった。だが、相手の運動量の低下のせいか、前半は前線のプレスバックが間に合っていなかったり、ブロックを組むことができていなかったが、後半は5-4-1で守ることができていた(できていたとはいっても、WBが川崎のSBにまで出てきていたので、狙った形ではなかったと思う。)。ただ、5-4-1もどちらかのサイドに誘導したりすることはなく、受け身であると感じた。また、一度家長にプレッシャーのかかっていない状態でライン間でボールを受けられているのが気になった。

<後半の給水後>
~大分攻撃時、川崎守備時~
大分のビルドアップの形は、変化がないように思える。ただ、中盤に下田が入ったことにより、多少プレスが来ていても前に運べるようになっていた。川崎は給水後、サイドに宮城と遠野が入り、家長がトップ下に入った。守備時は家長が一列前に上がる4-4-2の形を作り、サイドの選手はSBを切りながらCBに寄せ、前線2枚は中盤とCB間に立ち、CBにボールを持たせる意図のある戦術に変えた。

~大分守備時、川崎攻撃時~
守備のシステムは特に変化はなかった。給水前は、押し込まれる展開が多かったので、WBをSBまでプレスさせてボールを奪おうとしていた。失点シーンも実際登里に対して、井上をプレスを出させ、マークがついている家長にパスを通させた。裏に抜けだされてしまった宮城にパスが通り、失点してしまったが、宮城にはマークがついておりシステム上は奪いきれる形であった。裏に抜けだされた後も1対1を作れていた。だが、登里のスプリントに対して、マークについていた井上はプレスバックすることができず、2対1の場面を作られフリーでのクロスを許してしまった。最後は選手の質で決められてしまった感があった。大分がボールを失った後にすぐ取り返すという場面が終盤に何度かあったが、これは川崎が守備時4-4-2、大分が攻撃時4-4-2にする関係で、攻撃のシステムが相手のシステムにかみ合った結果であると考えられる(もちろん、川崎の選手の運動量低下も要因ではあるが)。

<感想>
観戦していて、とても楽しい試合であった。大分の試合を見るのがほとんど初めてであったが、3バックから4-4-2への可変など非常に興味深かった。GKがビルドアップに参加したときに川崎の守備で空いてしまう左サイドを起点として攻撃しようとしているのも非常に面白かった。川崎のSBとボランチのスライドが間に合っていなかったら、ゴール前まで運べていたであろうシーンがいくつか見ることができ、大分と川崎、両チームの素晴らしいサッカーを見ることができた。両チームともこれから追っていきたいと思わせてくれる素晴らしい試合であった。川崎に関しては、宮城天選手に関しては特にこれから注目していきたいと思った。

大変長文になってしまいましたが、読んでくださりありがとうございます。                                                                                                                

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