オフサイドとは何なのか
こんにちは。
サッカーは「深く狭く」掘り下げたいアラサーライターの蹴道浪漫(シュウドウロマン)です。
今回は、サッカーでもっとも分かりにくいルールであるオフサイドについて、気ままに考察します。
オフサイドの定義
1人のサッカー経験者として、よく受ける質問の1つに「オフサイドって何?」というものがある。サッカーは、基本的にはシンプルなルールで行われているスポーツだ。だからこそ、世界中で多くの人に親しまれているのだろう。しかし、このオフサイドだけは非常に分かりづらい。
結論から言うと、学生時代にサッカーの審判資格を取得した私ですらも、オフサイドを厳密には説明できない。これは、何も私に限った話ではなく、プロの選手でも細かい部分は分かっていないはずだ。それくらい、オフサイドは分かりにくいものである。サッカーの試合を見ていると、選手と審判が言い争っているシーンを目にするが、オフサイドがきっかけになっていることも多い。
オフサイドルールのルーツ
オフサイドとは、大雑把に言うと待ち伏せ禁止のルールだ。元々は、選手がゴール前に固まるのを禁止するために、作られたルールのようだ。以前、テレビの企画で高校生がオフサイド無しのサッカーの試合をしていたが、両チームとも何名かが相手のゴール前に残っていた。攻撃と守備の切り替えが遅くなって、全体的にダラダラとしたサッカーになっていたのを覚えている。何なら選手同士が、試合中に雑談をしていたほどに、運動量の少ないサッカーになっていた。
現在の日本では、小学校の3年生からオフサイドルールが適用される。しかし、私の経験上ではあるが、3年から4年生くらいだと理解できていない子も多い。チームによっては、監督やコーチが選手にまだ教えていないというケースもあるため、試合ごとにオフサイドを取るかどうかを決めていた記憶がある。5年くらいになると、問題なく対応できるようになる。
オフサイドになる条件
オフサイドポジションにいる状態でボールを受けたら、その選手はオフサイドとなり、相手チームのフリーキックから試合が再開される。では、オフサイドポジションとは、どこなのか。
自分たちが攻撃している状況で言うと、相手のゴールキーパーと、相手チームの中でもっともタッチラインに近い位置にいる選手の間のポジションだ。キーパー以外の相手選手よりも、相手陣地のタッチラインに近い位置でボールを受けてはならないということになる。
ここまでは比較的シンプルなルールだが、いくつか分かりにくい条件が加わる。ここでは、代表的なものを5つ挙げていく。
1、ボールに関与しなかったらオフサイドではない
仮に、オフサイドポジションにいる状態でボールが向かってきたとしても、触らなければオフサイドにはならない。「関与しない」の定義が各審判に委ねられているが、触ろうとした段階でファウルになる。ボールと全然違う方向に歩いたり、その場でしゃがんだりするのが、オフサイドを避ける確実な方法だ。
2、味方がボールを蹴った瞬間で判断
自分にボールが渡った瞬間にオフサイドポジションにいなかったとしても、味方がボールを蹴った瞬間にオフサイドポジションにいた場合は、オフサイドになる。これは非常にややこしく、味方がシュートを打つタイミングによって、オフサイドかどうかが大きく左右される。
これを逆手に取ったのは、前回のワールドカップで日本がセネガル相手に行った、オフサイドトラップだ。セネガルの選手がボールを蹴るために下を向いた瞬間に、日本の選手が一斉に前方に走り出して、セネガルの選手をオフサイドポジションに取り残していた。オフサイドトラップは、ミスをするリスクも高いため、現在のサッカーではあまり見られない。オフサイドトラップを成立させてしまうほどの、日本人の生真面目さや正確さに、各国のメディアは驚いていたようだ。
3、前方から戻ってきたボールはオフサイドにならない
味方の選手がドリブルでオフサイドポジションまで侵入した際に、その選手が折り返す形で自陣の方向に向かってパスをした場合は、オフサイドにはならない。しかし、相手陣地の方向にパスをした場合はオフサイドになり、真横にパスを出した時はオフサイドにはならない。
4、相手選手が触ったらオフサイドにならない
自分がオフサイドポジションにいたとして、味方からのパスが相手の選手に当たった場合、自分にボールがこぼれてきてもオフサイドにはならない。よくあるケースだと、味方がシュートを打って相手のキーパーがボールを弾いた場合だ。このケースだと、味方がシュートを打ったタイミングで、オフサイドポジションにいなければ、オフサイドにならない。
5、プレーオン
基本的には、オフサイドはグラウンドの横にポジションを取っている副審が判断する。しかし、プレーを止めるかどうかの裁量は主審にしかない。仮に、オフサイドだったとしても、守っている側に不利な状況になっていなければ、そのままプレーが続行されることが多い。或いは、副審の判定に主審が気付いていなかったり、副審がオフサイドだと判断しても主審がオフサイドではないと判断したりと、プレーオンにも様々なケースがある。
自分が守っている状態で、副審がオフサイドのジェスチャーをしたため、プレーを止めたのに、主審が止めていなかったケースも多々ある。こういった場合、オフサイドポジションにいなかった相手選手が走り込んできて、一気にピンチになることもある。逆に、主審がプレーを止めているのに、副審がオフサイドの判断をしていなかったため、選手がまったく気付かずにしばらくプレーが途切れないこともある。単純なファウルとは違い、オフサイドは主審と副審の判定が一致しないといけないため、分かりにくさに拍車をかけているのだ。
ここまで、分かりにくい条件を見てきたが、これ以外にも細かい部分を挙げていったらキリがない。というよりも、厳密には決まっておらず、審判に委ねられている部分が多いはずだ。たとえば、腕がオフサイドポジションにあって、足はオフサイドポジションにない状態でパスを受けた場合、恐らく明確な基準は決まっていない。多分、このケースだとオフサイドにはならないはずだが、逆のパターンだと分からない。つまり、足だけがオフサイドポジションにあった場合、どうジャッジされるのかは不透明だ。
オフサイドを廃止した場合
サッカーからオフサイドがなくなった場合、ダラダラした試合展開になるだけではなく、日本にとっては不利な状態になるだろう。なぜなら、遠くにボールを蹴ったり、速く走ったりと、身体能力の高さが重要になるからだ。オフサイドがない場合、相手からボールを奪った瞬間に、相手のゴールを目掛けてロングボールを繰り返し蹴り込むだろう。
細かいボールコントロールは必要なくなるため、かなり雑な試合展開になる。世界のサッカー界で覇権を握るのはアフリカ大陸の国々となり、日本はアジアでも勝ち抜けなくなるはずだ。この先も、細かいルールの改定はあるはずだが、日本サッカー界にとっては、待ち伏せ禁止という大枠の部分は変わらない方が良いだろう。