MTTとキャッシュゲームのCB戦略の差異【MTT】
皆さんこんにちは!Naokiです。
今回はMTTとキャッシュゲーム(anteなし)のCB戦略の違いをpiosolverを使用し、184フロップに対して集合分析を行ったので、そちらに関する記事になります。
最後に集合分析の結果も公開しておりますので、記事内ではっざっくりとした違いに焦点を当てていきたいと思います。
それでは早速行きましょう!
MTTとキャッシュの大きな違い
私は元々オンラインキャッシュゲームを専門に打っていたのですが、昨年の6月に某アミューズメントポーカースポットでライブデビューしてから、最近はライブトーナメントによく出るようになりました。
そして今年の1月に行われたJOPTのMain Eventでは1128エントリー中、25位になることが出来ました!(自慢)
そんなこともあり、最近からトナメの勉強を始めたのですが、一つ衝撃的なことがありました。
「BBのディフェンスレンジ広すぎない?」
そうなんです。
ずっとキャッシュゲームの感覚でトーナメントを打っていたので、これはかなり衝撃的でした。
なぜこのようなことになるのか。それはanteが存在するからです。
下記はGTO wizardの100bbキャッシュゲームにおけるBTN,UTGの2.5bbオープンに対するBBのディフェンスレンジです。
vs BTN (2.5bbオープン)
vs UTG (2.5bb オープン)
それに対して下記は100bbMTTにおけるBTN,UTGの2.3bbオープンに対するBBのディフェンスレンジです。
vs BTN (2.3bbオープン)
vs UTG (2.3bb オープン)
オープンサイズの違いもありますが、anteによってオッズがよくなっている分かなり広いレンジでディフェンスしているのが分かります。
特にvs UTGはかなり顕著で、UTGのオープンレンジはMTTとキャッシュでそれほど変わりませんが、BBのディフェンスレンジのみ広くなっています。
ちなみにMTTはレーキがなく、プリフロップでポットを奪いに行くモチベが少なくなるので、SBからコールドコールのレンジが増えます。(これはまた別の話)
「こんなにプリフロレンジが違うなら、フロップの戦略もMTTとキャッシュでかなり違うんじゃね?」
と思ったのが今回の記事作成のきっかけです。
piosolverの設定
集合分析の結果に入る前に、piosolverの設定を記します。
※読み飛ばしていただいても構いません。
プリフロップのレンジ
BTNオープンレンジ(100bbキャッシュゲーム)
BBの vs BTNコールレンジ(100bbキャッシュゲーム)
UTGオープンレンジ(100bbキャッシュゲーム)
BBの vs UTGコールレンジ(100bbキャッシュゲーム)
BTNオープンレンジ(80bbMTT)
BBの vs BTNコールレンジ(80bbMTT)
UTGオープンレンジ(80bbMTT)
BBの vs UTGコールレンジ(80bbMTT)
ベットサイズ
flop 30% 50% 80% raise 50%
turn 40% 80% 150% raise 50%
river 40% 80% 150% raise 50%
計算精度:1.0
ドンクベットは採用していません。
※今回はエフェクティブスタック80bb、ポットサイズは同じ(アンティ入れ忘れ(笑))で計算をしているので、GTOとは異なるところもあると思いますが、レンジが広いとどのような影響があるかをざっくり見ていただければと思います。
フロップ
集合分析は、こちらのリンクの中の184フロップを使用します。
集合分析結果
まず、184フロップの平均の頻度は以下のようになりました。
BTN vs BB
UTG vs BB
どちらを見ても、MTTの方がキャッシュよりベット頻度が高いことが分かりました。
これはBBがかなり広いレンジでディフェンスをしているため、フロップ以降も弱いレンジが多くあるためであると考えられます。
普段キャッシュだと広くチェックレンジをとるようなボードでも、MTTだとレンジでCBを打っても問題ないボードが増えてきます。
具体的に中身を見ていきましょう!
BTN vs BB の考察
集合分析の結果、MTTレンジの方がキャッシュレンジよりもベット頻度が高いフロップは184フロップ中、165フロップあることが分かりました。
特に大きく性質が異なるボードはAハイです。
例:As7d2s
キャッシュゲームにおいてこのようなAとミドル、ローカードのフロップはIP側に強いAはあるものの、2Pやセット等はBB側にも多くあり、レンジ全体としてそこまで有利とはいえません。
ゆえにAハイボードとはいえベット頻度はそこまで高くないことが多いです。
キャッシュ As7d2s
エクイティ分布
しかしMTTでは、BB側に2Pやセット等はあるものの、それを凌駕するほどの圧倒的なごみレンジが存在しており、レンジ全体のエクイティが大きく上回るため、レンジで安CBが打てます。
MTT As7d2s
エクイティ分布
例:Ac4d3s AsQs3s
キャッシュゲームではかなりの頻度でチェックするボードも、MTTではベット頻度は高くなります。
キャッシュ Ac4d3s
エクイティ分布
MTT Ac4d3s
エクイティ分布
キャッシュ AsQs3s
エクイティ分布
MTT AsQs3s
エクイティ分布
例:AdQs9s
キャッシュゲームではこのようなAK~ATのツートーンのフロップは、IP側にセットやトップ2P等が一方的にあり、ナッツアドバンテージを生かしたオーバーベットCB or チェックの戦略がよく使用されます。
キャッシュ AdQs9s(150%CBを入れ計算し直しています)
エクイティ分布
一方でMTTでは、先ほどと同様な理由でフロップからオーバーベットCBの頻度も出てきますが、BB側は安ベットにすら耐えられないごみレンジが多いので、広範囲で安ベットの頻度も上がります。
ゆえにベット頻度はかなり上がります。
MTT AdQs9s(150%CBを入れ計算し直しています)
エクイティ分布
K~TハイはAハイ程顕著に違いが出ているわけでもないですが、それでもMTTの方がキャッシュよりもベット頻度が高くなる傾向があると感じます。
特にブロードウェイ2枚ボード(KTx、QJx等)はMTTだとレンジでCBを打っても問題はないかと思います。
このようにBB側のディフェンスレンジが広すぎるため、ハイカード(T以上)が落ちた時、IP側が有利になりやすく、高い頻度でベットしていく戦略は有効であると感じます。
ではどのようなフロップでベット頻度が下がるのでしょうか。
キャッシュの方がベット頻度が高いフロップ(19フロップ)を見ると、ある共通点を見つけました!
それはローカード(6以下)のペアボードです。
19フロップは以下のボードになります。
この中で、KKxやAAA等のトリップスボードはどちらもベット頻度が高いボード、Qとローカード2枚、6以下のローボードはどちらもベット頻度が低いボードなので、ベット頻度にそこまで違いがありません。
ゆえに戦略的な違いはローカードのペアボードのみになります。
何故このようなことになるのでしょうか。実際のボードを見ていきましょう!
例:6c2s2d
キャッシュゲームにおいて、ローカードのペアボード(特に2)はお互いのレンジにトリップスのコンボが少ないため、一方的にオーバーペアを多く持っているIP側に有利なボードであり、大きいサイズのCBをそこそこ高頻度で打つことが出来ます。
キャッシュ 6c2s2d
エクイティ分布
しかしMTTでは何が起こるでしょうか。
BB側はスーテッドすべて、オフスートに至ってはQ2o+がほぼレンジに残っており、ごみレンジから変態トリップスへ格上げされるコンボがかなりあります。
また、エクイティ分布を見るとナッツ付近がかなり拮抗していることが分かります。ゆえにレンジ全体として有利とはいえなくなるため、ベット頻度は下がります。
MTT 6c2s2d
エクイティ分布
UTG vs BB の考察
次はUTG vs BBについて考えていきます。
集合分析の結果、MTTレンジの方がキャッシュレンジよりもベット頻度が高いフロップは184フロップ中、166フロップあることが分かりました。
大前提としてUTGのオープンは強いです。(唐突)
その強いレンジに対して、BBは広くコールしているため、かなりのボードでCBを打っても問題ないように感じます。
特にハイカード(T以上)が落ちた場合は積極的にベットしていきましょう。
例:Jc9d7s
キャッシュゲームにおいて、Jハイのコネクタが強いボードはBB側に有利な場合が多く、IP側のベット頻度は下がります。
キャッシュ Jc9d7s
エクイティ分布
しかしMTTではBB側にごみレンジが多いため、高頻度でベットしていくことが可能になります。
MTT Jc9d7s
エクイティ分布
では9ハイ以下のボードではどのようになるのでしょうか。
9ハイ以下のフロップ(44フロップ)の平均の頻度を以下に示します。
MTTの方が圧倒的にベット頻度が高いです。
キャッシュだとレンジチェックが肯定されるボードでもMTTでは、かなりの頻度でCBを打つことが出来ます。
逆に言えば、キャッシュの感覚で広くチェックをしていると、EVを損ねかねません。
何故このようなことになるのでしょうか。実際のボードを見ていきましょう!
例:9c6d4s
キャッシュゲームにおいて、9ハイ以下のボードはBB側に2Pやセット等の強いレンジが多く、IP側はオーバーペア等もかなりチェックレンジに回し、高頻度でチェックする戦略を取ります。
キャッシュ 9c6d4s(150%CBを入れ計算し直しています)
エクイティ分布
しかしMTTにおいては、BB側に強いレンジはあるものの、ごみレンジが多すぎるため、レンジ全体のエクイティはUTGの方が上回っています。
ゆえに、9ハイ以下でストレート、フラッシュ目の見えないボードに関してはフロップからオーバーベットCBを使用していくことが多い印象があります。
MTT 9c6d4s(150%CBを入れ計算し直しています)
エクイティ分布
例:6s5s2d
また、キャッシュゲームではレンジチェック一択のようなボードでもMTTだと高頻度でベットしています。
キャッシュ 6s5s2d
エクイティ分布
MTT 6s5s2d
エクイティ分布
ではどのようなフロップでベット頻度が下がるのでしょうか。
MTTの方がベット頻度が低いフロップ(18フロップ)を以下に示します。
上記ボードのうち上から3つ以外はそこまでベット頻度が変わらず、キャッシュと同じような戦略を取ります。
サンプル数はかなり少ないですが、ハイカード(Q以上)とミドル以下のペアボードがベット頻度に違いが出ると考えられます。
例:Kc4s4d
キャッシュゲームにおいて、UTGオープンに対するBBのコールレンジに4はあまりありません。また、KハイはUTG側にかなり有利なので、広い範囲でCBを打っていきます。
キャッシュ Kc4s4d
エクイティ分布
しかし、MTTではBB側にトリップスのコンボがかなり増え、UTGのオープンにはほとんどトリップスがないため、Kハイとは言えベット頻度は下がります。
MTT Kc4s4d
エクイティ分布
また、ここで注目すべきはJc3s3d、Tc2s2d等のボードです。これらのボードはBTN vs BBにおいて、MTTだとかなりベット頻度が下がりました。
しかし、UTG vs BBにおいてはベット頻度はそれほど下がりません。
それは何故でしょうか。
例:Jc3s3d
キャッシュゲームでは先ほどの理由と同じで、3がBB側にほぼないので、高頻度でベット出来ます。
キャッシュ Jc3s3d
エクイティ分布
BTN vs BB ではBB側にトリップスが多い、かつBTNのオープンレンジが広いので、BTN側が弱くなりやすく、ベット頻度が下がります。
しかし、UTGのオープンレンジがそもそも強いのと、相手のJヒットに対して、ターン以降で捲れる可能性がそこそこあるので、このようなボードだとUTGはベットしていくことが出来るのではないかと考えます。
MTT Jc3s3d
エクイティ分布
まとめ
最後に今回の結果をざっくりまとめます。
最後に今回使用したexcelシートを公開します。
いかがだったでしょうか。
本来なら全フロップで集合分析をかけたかったのですが、時間の都合上断念いたしました(泣)
ただ傾向としてはこれだけでもかなり掴めるかなと思うので、よかったら参考にしてみてください。
皆さんのMTTの勉強の助けになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!