見出し画像

『自然公園』

・『自然公園』

知らない土地を進むと僕はいつも心臓のあたりを指の腹で触られたような妙な感覚になる。そしてそれは悪い気分ではない。その詳細は不安10%と好奇心90%という感じ。大人になったし、スマホもあるし、手持ちもある。だから知らない場所でも問題なく突き進めるが、やはり根底にはここはどこだろうか家には帰れるだろうかというまるで子供のような原初の不安があるような気がする。でもその不安もスパイスになって楽しい。知らないを進んでいくのは楽しい。

あてもなく原付に乗った僕は、思い立って前から気になっていた大崎自然公園へと向かっていた。以前グーグルマップを見てたときたまたま見つけたのだ。何か動物がいるという情報は覚えているが、なんの動物だかは忘れた。まあ行けばわかるかということで、原付で知らない土地を爆走した。

ほどなくして山道に入る。自然公園への案内看板が見えた。僕はカントリーロードを歌いながら山道を突き進む。ご機嫌だ。耳をすませばの映像をぼんやりと思い浮かべる。そうしてカントリーロードを歌い終えるころに目的の自然公園へと着いた。だだっぴろい駐車場には僕ともう一台の車しかない。平日の昼過ぎとはいえ人がいなさすぎる。第一印象は寂しい場所だなと思った。原付のエンジンを止める。さっきまでよくカントリーロードを歌えていたなと少し恥ずかしい気持ちになる。歌い終えた僕を待っていたのは拍手喝采ではなく静寂だった。

園内マップをみると、ドッグランやらキャンプ場やらゴーカートがある。そして、あ、そうか、クジャクだ。クジャクだった。マップのひとつにクジャク園というエリアがあった。この自然公園にはクジャクがいるのか。クジャクかぁ。なんだかピンとこないなぁとおもいつつ、別に入園料が取られるわけでもないしなと思い、僕はクジャクを見るため目的のエリアにむかった。

クジャクエリアに辿り着く。まず真っ先に目についたのはクジャクだ。当たり前だクジャクエリアなのだから。でも視界の左側でなにか動いてるのに気づいてそちらを見るとヤギがいた。あ、ヤギもいるのね。ヤギとクジャクか。僕はクジャクよりもヤギに興味が引かれたので、まずはヤギをじっくり観察することにした。

めっちゃかっこいい。絵になる。髭やツノの生え方が只者ではない仙人のような感じ。そのヤギは地面に生えている草を食べていた。おお、すごいお金かかんないね。そこらへんの雑草食べちゃうなら、ごちそうだらけだ。人間がもしも草食動物だったら家畜の問題とかは発生しなかったのかなとか考える。みんなが大量に植物を育てる。もし人間が草食動物だとしたら、食べられるおいしい植物はきっと鑑賞という用途から食材という目線に変わる。人間が草食動物だったらというIFを考えるといろんな妄想ができそうだ。

ヤギを見終えていよいよクジャクを見に行く。このエリアはそこそこ敷地が広いらしく色々歩いて回れるみたい。クジャクのいるゲージ?には100匹以上のクジャクがいた。これだけいれば一匹くらい羽を広げてくれるだろうと期待したが、1匹たりとも羽を広げないしこちらを見向きもしない。ただ地面をぐるぐる歩いてるだけ。おお、すごい地味だな。せめて羽みたいな。と、クジャクに声をかけるけど、私興味ないですよって感じで軽くあしらわれる。説明書きをみると「羽を広げる時期は3月〜6月です」と書いてある。今は10月だから見れないのか。残念。

目的のクジャクを見終えて一気に徒労感が出た。そうだと、自分の喉の渇きに気づく。この自然公園に入ってから、なかなか自販機が見つからないでいた。それを思い出して、クジャクのエリアから周りを見渡すと休憩所に自販機を見つけた。さすがクジャクエリア。お、アイスの自販機もある。いいね。何もないところに自販機の一つでもあるとなんだか嬉しい気持ちになる。アイスと飲み物の両方を買う気分ではなかったので桃のジュースだけ買った。そうして、この後どうしようかなと考えながらぐびぐびやってると、右どなりに馬の尻が見えた。なんだいんじゃん。他の動物。喉も潤った。他の動物もいる。一気に元気が回復して、もしかしてと思い近くにあった園内マップを確認するとどうやら他にもいくつか動物がいるらしい。なんだ見落としてただけか。さすがにクジャクとヤギだけじゃないか。よかった。

馬小屋に近づく。なんだか背が低い。説明をみるとポニーらしい。だから背が低いのか。黒髪のポニーと、白髪のポニーがいた。優しそうな目をしている。かわいい。足元をみると馬のポロポロうんちが柵からはみ出て僕の足元に転がっていた。うわとおもったけど、全然臭くない。草食動物だからかな。うんちの中には消化されずに残った草が混じっている。かと言ってわざわざ踏みたくもないのでうんちを避けながら観察を続けた。説明書きを見る。白髪の馬の写真の横にお父さんと書いていた。あ、君はお父さんなのね。次の写真は白髪の馬の横にお母さんと書いていた。??。目の前にいる馬がお父さんなのかお母さんなのかわからない。ちょっと面白い。次の説明に移ると黒髪の馬の写真に、ぽっぽちゃんと書いてあった。白髪の馬の子供らしい。なぜぽっぽちゃんだけ黒髪なのかわからない。もしかしてお母さん、、、。やめとこう。人の家庭環境につべこべいうのは良くない。というかなぜぽっぽちゃんだけ、名前の紹介がされているんだろう。なんだか色々とツッコミどころのおおい公園だな。僕は楽しくなってきた。

カモのエリアに着く。カモが一匹だけ檻の中に入っていた。かも太郎というらしい。安直すぎる笑 犬に犬太郎、猫に猫太郎とつけているようなものだ。だけどそのちょっと抜けた感じがいい味を醸し出していた。カモ太郎は鳥インフルエンザ対策でインコのエリアに入れられていた。インコからは完全にハブられている。完全に孤立しているが、カモ太郎には強くいきてほしい。頑張れカモ太郎。

他にもウサギやフラミンゴがいた。全体的におとなしくて飼育の手間がそこまで多くない動物が飼われているのかな。そんな気がした。クジャクエリアなのにクジャク以外の動物の方が僕の心を躍らせてくれたな。きっとオンシーズンであったならクジャクはポテンシャルを発揮してくれたのだろう。機会があればまた会おうではないか。年末に妹がくるから連れてこようかな。まあでもやっぱりいいかなどうかな。さすがにちょっと地味すぎるかな。そんなことを考えながら僕は大崎自然公園を後にした。

いいなと思ったら応援しよう!