『猫のぬくもり』
・『猫のぬくもり』
普段ツンとしてハンターのような目をしているうちの猫も、眠たいときに抱き抱えると腹の上で丸くなって眠る。そうなると、心臓はかわいさで破裂する。僕は嬉しくて顔やお腹を撫でたり、猫の寝顔を眺めていたりする。と同時に、ふと悲しくなる瞬間がある。それは猫の寿命を想うときだ。
猫の寿命は人間よりもずっと短い。平均は14年や15年と聞いた。うちには猫が2匹いるが、一番歳をとっている猫でも2歳半。だから、まだ先のことを考える必要はないんだけど、癖みたいなものでどうしても生の短さについて考えるときがある。そのときに僕は悲しい気持ちになる。だけど、それは仕方がないこと。先のことを考えていらない気持ちになる方がもったいない。
ふわふわの毛とやわらかいお腹が一定のリズムで上下する。僕の腕のなかで確かに熱を感じる。僕はその熱を逃さないように、今に集中する。
なるべく望むものはあげたい。何を望んでいるのか汲み取ってあげたい。汲み取ったうえで与えるのが難しいこともある。とくに環境はどうしても人間の都合を押し付けてしまうことになる。それを時に申し訳なく思う。だからこそ、与えられる環境の中で可能な限りしてあげられることをしたい。
寝顔をみるに、きっと僕のこんな思いなどなんのそのという感じで、のんびりやってるんだと思う。人間の価値観とは全く別の軸で生きているんだろうな。
今はまだまだ若いし、病気もない。気にすることは何もない。今はただ、僕の腕で眠るいのちのぬくもりを忘れないよう、静かに感じていたい。