タイザン5作、「タコピーの原罪」第七話を読む
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東京へ行く計画を練る東の側で、しずかは虫捕りに興じる。
計画はそもそも、チャッピーに会いたい、というしずかの願いを叶えるためのもので、その出来に誰よりも関心を持たなければならないのは、しずかのはずだが、彼女は計画作成の進捗報告に「ふーん」とだけ返して、東を遊びに誘う。
しずかには、今やタコピーも東もいる。チャッピーの代わりとしての二人がいるしずかの、チャッピーへの関心は、相当に薄らいでいるように思われる。
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一方、タコピーはまりなとして、まりなの両親と会話する。「っピ」という語尾は隠せていない、と言うより、隠す必要性をあまり感じていないようだ。その語尾に、まりなの父は肯定的な態度を示し、まりなの母は否定的な態度を示す。
まりなの母はタコピーと二人きりになった時、タコピーに語尾を直すように迫り、タコピーがそれに真面目に従えないと、まりなの母はタコピーの頬を、語尾が直るまで、繰り返し引っ叩く。
まりなの母は、タコピーに向かって、以前のまりなではなくなった、と言う。タコピーは怯えながら、「以前のまりな」になる、と言うが、まりなの母はそれを強く否定する。
まりなの母は、目の前の、まりなの姿をした少女が本当はまりなではないことを察知し、空調のリモコンを掴んで振り上げ、それでタコピーを殴り付けようとする。しかし、まりなの母はリモコンを振り下ろさず、床に伏すと、まりなを返して、と懇願する。
恐らく、このまりなの母の振る舞いは、カメラを振り下ろしてまりなを殴り付けてしまったタコピーの振る舞いと、対応しているのではないか。
タコピーは、棚や壁に飾られた家族写真の数々を目にして、まりなの家族が過ごしてきた時間を想像し、自分がまりなを殺害したことがどういうことかを理解し、まりなのものと思われる部屋の鏡の前で、涙を流して謝罪する。
タコピーは、自分がしてしまったことの意味、本当はどうするべきだったか、これからどうするべきか、それらをしっかりと考えて、まりなの死を願ったしずかと、もう一度話さなければならない、と決意する。
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第一話で読者は、チャッピーを連れて立つしずかを見た直後に、汚れた格好でチャッピーの首輪を持って一人で立つしずかを見る。そしてその後、しずかが首を吊っているところを見る。
だから多くの読者は、しずかはチャッピーと引き離されたことを嘆いて自殺した、と思わされる。しかし、そこには別の解釈が成り立つことに、ここまで物語を読み進めてきた読者は気付ける。
あの汚れた格好でチャッピーの首輪を持って一人で立つしずかは、タコピーなしに、自力でまりなを殺害してきた後の姿だったのではないか。
だとすれば、しずかの死の事情も違って見えてくる。しずかは、ただまりなの執拗な虐めによって死に追い込まれたのではなく、その果てに逆上してまりなを殺めてしまい、そのことに耐えかねて自らの命を絶った、ということになる。
ところで、タコピーはハッピー星に帰ることができず、なぜ帰れないかの理由を思い出せないらしい。
ここから飛躍を承知で物語を推測すれば、まりなを殺めてから自殺してしまったしずかが、何らかの神秘的な力に導かれて、過去を変えるために時間を遡って、全く別の姿となって現れたのが、タコピーなのではないか。
しずかであった時の記憶と姿を奪われながら、自分がしてしまったことの取り返しを付けなければならない、というのが、原罪を背負ったしずかに与えられた罰なのではないか。
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森の中に隠してきた、まりなの死体は大人達に見付かってしまう。タコピーの変装も、まりなの母に感付かれ、しずか達の悪事は破綻と清算の時を迎えつつある。
果たして、タコピーはまりなを殺害したことにどう向き合うのか。そして、しずかはそれをどう受け止めることになるのか。その時、東はどうするのか。次回の配信を待ちたい。