自作:意味が分かると怖い話【いいね】

【いいね】
私は駆け出しの新人配信者。不安でいつも押しつぶされそうになる中、毎回いいね一杯押してくれてる人がいてとても助かってて嬉しいんだけど、誰?と呼びかけても全く返事がない。きっと恥ずかしがり屋さんなんだろうな。でも、ちょっとくらい手を休めてもいいから話して欲しいな。口下手なら致し方ないけど。

そして、いつものように嬉しい【いいね】の雨の振る中、ちょっとしたトラブルがあった。毎回のクセのようになんの気なく『いいね押してくれてるの誰?』と尋ねた。すると名乗り出たひとがいた。あっと思ったら、その人は初見さんだった。
『え、そうなの?でも〇〇さんが入室する前からいいねが増えてたけど』

「しらね。でも入って来てからは俺がやってたよ」

『そう…』なんだか釈然としなかった。
『これ実はサブ垢でさ、今までいいね押して来たのも俺なんだよねー』

嘘だと思った。

『じゃ、なんて垢?』
「当ててみな」
そして〇〇さんがコメント打ってるだろう間もいいねは増え続けていた。
(質問に質問で返さないでよもう)
やや不快なやり取りが続き、次第に〇〇さんの嘘が明白になっていく……ついに捨てセリフのように〇〇は言った。
「うっせーな、なんだよ黙っていいね押してる奴なんてキモうっぜ〜wwwwww」
その瞬間いいねが止まった。私は静かに〇〇を諭し通報しブロックした。

ーーそれからの配信もこま切れ的にいいね連打してくれる人はいたが、たぶん違う人だなと思った。この間の悶着が響いたのか、それとも新人扱いを運営にされなくなったからか、単に私の力不足なだけか枠は次第に過疎っていったーー

『もう今日は来ないかな……』時刻も皮肉か0時を回っていた。入室者0の中、私は枠を閉じようとしたが、往生際悪くもう一度だけ開き直した。すると、すぐさま入室者は1となり、いいね連打が始まった。
『え?』
しかし入室者を知らせるコメントは流れてこない。
『え、何?こわい……』しかし入室者は1となっている。
『あ、じゃあ、こっちの方がバグなのね。ほっ、このアプリはバグ多いから』
そうして久方ぶりのいいねの雨を堪能した後ーー
『この間は不快な思いさせてごめんね。これからもいいね一杯押しに来てね。もう遅いから枠閉じるね、もう一度来てくれてありがとう❤』
そう言ってから私は配信を閉じた。そして、さっきのバグを運営に報告しようとした。すると運営からの仕様変更の通知に気づいた。
私は血の気が引いていったーー



【解説】
運営からの仕様変更は配信者も入室1とカウントするというもので、0時過ぎてからの適用となった。つまり誰も入室していないのに……今までのも、実はそうだったのだろうか?

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