桃太郎と鬼
僕の家族はあいつに全員殺された
僕は箪笥に隠されて静かにしていた
あいつが僕を探してる
この部屋に来た
きっとこの箪笥の中なんかすぐに探されて殺されるだろう
僕は箪笥の扉の隙間からあいつを見ていた
あいつがこちらを振り向いて近づいてきた
僕も殺される
そう思った
でもあいつは箪笥の前まで来て少し考えたような顔をしてすぐに出て行った
あいつが出て行ったことを確認してからすぐに警察に電話をかけた
何度も番号を間違えた
その上何度正しい番号にかけても繋がらなかったため交番まで1㌖弱の道を泥だらけになりながら走って行った
当時の新聞には「謎の凶悪犯によって三男以外惨殺」の見出しで新聞の一面に乗ったらしい
しかしあいつは捕まらなかった
証拠が少なすぎたため捜査が進まないまま事件は闇に葬り去られてしまった
あれから25年
俺は社会人になってしばらくたったがまだ一人暮らしである
それでも収入はまあまあ安定してるしそこそこの楽しみもある
でもあの日のことを忘れた瞬間は一瞬も無いし
あいつの顔が夢に出てこない日もなかった
そんな時
老けたあいつの顔を出張先の近くの公園のベンチで見つけた
ちょうど出張先での仕事が終わっていたので部下にはそのまま帰らせて自分はあいつがどこに帰るかを観察していた。
あいつは時々運動しながら夕方まで公園の近くをぶらぶらしていた
あいつがようやく家に帰ったのは日が暮れている最中ー黄昏時である
あいつの家がわかった
家族もいる
これで奴に復讐できる
それからじっくり数年の時間をかけてあいつの一家を全滅させる計画を練った
それと同時に計画を成立させるのに必要な様々な技術を
その間に新たな出会いがあった
30年ほど生きてきて一度もできなかった恋人ができたのである
その恋は計画を練る数年の間に実っていき
ついに計画していた日の昼間に彼女と婚約した
しかしこれは自分の理想である
頑張って理想の自分を作り上げているのだ
つまりそれをやめれば
あの憎いあいつを殺すまいとする自分になってしまうのである
その日の夜ついに計画を実行に移した
電話線の工事をしていて電話が繋がらないのは確認済みである
携帯電話は妨害電波を発信しておくことで対策をした
ぴったりサイズのゴム手袋と軍手をはめて指紋が残らないようにした
その他服なども証拠隠滅がしやすいように完璧に準備した
…つもりだったのにあろうことか目出し帽を忘れてしまった
近くのコンビニでそれとなく似たようなのを買ってこようかとも思ったが怪しまれるとまずいと思いやめておいた
まずはダイニングで一家団欒しているのを確認して裏口から鍵をピッキングしてキッチンに侵入
もちろん鍵がピッキングしやすいディスクシリンダー型であることは確認済みである
キッチンから包丁を取る
そして一度裏口から出て窓硝子をわざと音を立てて割る
これで誘き出す作戦だ
あいつの妻が出てきた外を確認している
悲鳴を出させてから殺す
次に出てきたのは三番目に生まれた次男であった
母の悲鳴を聞いて急いで駆け出してきたところを一瞬で延髄を背骨の隙間から叩き切って殺した
訓練の賜物である
そしてあいつを残して他のやつも全員殺した
そして最後にあいつもたっぷり痛めつけて殺してやった
それからも彼女とはうまく行った
子供も生まれて幸せな日々が続いていた
しかしあの日以来の悩みがある
それはあの日の感覚がずっと手に残っているのだ
それでもあいつの顔が夢に出てくることは無くなった
そのはずだが今日だけはあいつの顔が夢に出てきた
そしてその日の夜私は俺に惨殺された
過激な表現が多くなってしまいましたすいません
ミステリーなのか恋愛小説なのかわからないので分類不明です。