ひょいと四国 ニセ新幹線で行こう!
「ひよいと四国へ 晴れきつてゐる」
晩年、遍路となり、四国で生涯を終えた種田山頭火。
山頭火の俳句で、一番好きな句。
そう、四国の空は青く、晴れきっているのだ。
四国のどこへでも「ひょいと」行ける、今を全力で楽しもう。
乗客もまばらな早朝、特急しまんとに乗り込む。山越え谷越え、時に太平洋を臨みながら、およそ3時間で窪川に着く。
窪川、大好きな街。
初めて降りた1年前は、春の柔らかな日差しの中、まだ川幅の狭い上流の四万十川を渡って高岡神社へ行った。森林公園で、森のピアノを弾いた。
駅前の喫茶店の雰囲気も大好き。まるで楽園のような街。
窪川は今日もいい天気。
お寺めぐりの女性に、お寺の方向を教えてあげた。
僕も岩本寺へ行って、記念のスタンプを押してもらった。
「蒼生福」とは、人々の幸せのこと。
さあ、新幹線で行こう。見事な団子鼻、これを新幹線と呼ばずしてなんと呼ぶ。四国唯一の新幹線!
前日は雨、水量多めの四万十川は迫力満点だ。
旅人たちは立ち上がって、その姿を写真に収める。
一方、少年は車窓に目もくれず、車内に飾られた鉄道模型を一心不乱に眺める。キハ181に反応し「昔のしおかぜだ!」とご発言。なかなかシブい。
山里、四万十川、青空。これ以上の景色ってあるのかな、と思う。美しい四国。
近永で途中下車し、お散歩。街角に残る、古い郵便局の建物。
川を渡り神社へ。若葉が芽吹く社叢。
古い商店の建物にあるおしゃれカフェ。ラスト1個の親子丼弁当をいただく。
ここは、地域の人が集う場所になっているようだ。明日は地元の高校の入学式。寮もある高校で、遠くから来る新入生もいるらしい。なんと、東京からやってきたという新1年生のお母さんが、お店の人と話している。
東京と四国。何が違うのか?
答えは難しいけれど、いろんな世界を知る、それぞれの世界の当事者になることは、得難い経験だ。
うまく言葉にはできなくても、その答えを心で知っていることが大切だと思う。
コーヒーを飲み、ついつい長居してしまったカフェを出て、再び駅へ。
青い空を眺めていたら、黄色い列車がやってきた。
山は力強い緑色。田植えに向けて水が張られた田んぼに日の光が反射し、車内はポカポカ。乗客がほとんど気持ちよく眠っているような車内。
気がつけば、うとうと。
四国は今日も、晴れきっている。