数学がラグビーに活かされていること
今回は僕自身が大学で専攻している数学という学問が、ラグビーというスポーツに紐づいていることを書いていきます。
正直、勉強がラグビーに活かされていることなどないと思う人が多いと思いますが、実はそうでもないのです。
皆さん、気づいていないだけで何かしら役に立っているはずです。
僕自身が数学という学問の中で学ぶことができたのは論理的思考力です。
この論理的思考力とはなんなのでしょうか?
■論理的思考力
論理的思考力とは…論理に基づいて思考する能力(の高さ)という意味で用いられる表現。 道理や筋道に則って思考を巡らせて結論を導いたり、あるいは、複雑な事柄を分かりやすく説明したりできる能力として主に捉えられる。
意味は読んで字のごとくですが、この能力を身に付けることは至難の業だと思います。
数学という学問の中で、道理や筋道に則って思考を巡らせて結論を導いたり、あるいは、複雑な事柄を分かりやすく説明することってあるの?と思う人も多いと思います。
世の中では理系文系に分かれ、多くの人は高校生で数学は終わったという人が多いと思います。
高校数学では、微分積分という分野が難易度MAXの範囲です。この分野では主に計算力を問われます。
一方、大学数学では計算能力はほとんど問われません。扱う分野としては、証明問題をイメージしてもらえればわかりやすいと思います。そして問われるものは、論理的思考力なのです。
■証明問題がラグビー上達の秘訣?
皆さん、証明問題を思い出してみてください。得意だったという人はいましたか?
おそらく、ほとんどの人が苦手意識を持っていた思います。
なぜ、証明問題が苦手なのでしょうか?
その理由は簡単です。証明問題を解くカギは、最初と最後をイメージできているかどうかです。間違えた人のほとんどが、一言も書くことができなかったはずです。少しでも書き始めることのできている人は、どういった内容をこの先書いていけばよいのかわかっています。書き始めるには、証明終了までをイメージする必要があるからです。
これは論理的思考力の意味の、「道理や筋道に則って思考を巡らせて結論を導いたり」に当たる部分です。
■なぜラグビーに役立つのか?
この部分はラグビーにも同じことが言えます。
ラグビーの開始はセットプレーで終わりは笛が鳴るまでです。
僕自身がラグビーのプレー中に考えていることは、次に笛が鳴るときのことです。スタートとゴールをイメージしながらプレーをすることで、ゴールを達成するために何をすればよいのかが明確化されます。
証明問題で最初と最後のイメージができたら、あとは肉付けです。
論理的思考力の意味の、「複雑な事柄を分かりやすく説明したりできる能力」の部分にあたるところです。
肉付けの部分は、いかに相手にわかりやすく書くことができるのか?です。
証明問題と計算問題の違いは、読み手にあります。
解答を読む必要があるのか、あるいは見るだけでいいのかに違いがあります。
これをラグビーに当てはめると、多くの人は計算問題を解いているような感覚です。
ですが、本来は証明問題の様に相手に伝える必要があります。
伝え方は人それぞれです。ド直球に伝えるもよし。遠まわしでも良しなのです。伝えたい相手によって伝え方は異なるからです。
SOとしてゲームメイクをするにあたっては、セットプレーがはじまり次の笛が鳴るまでをイメージします。
セットプレーは決まっているので、ゴールに当たる笛が鳴った際、どういったプレーで再開されるのかを決めます。
始まりと終わりが決まれば、あとは肉付け(ケースごとにどのプレーを選択するのか)になります。
ゴールが決まっているので、その終わりに向けて逆算していくイメージを持ちます。そうすると判断に迷うことなく、一貫して目標を見失わずにプレー選択することができます。
■肉付けの例
・part1
この場合のスタートはキックオフ、ゴールは左ハーフウェイでのマイボールラインアウト。
ゴールを達成するためには、敵陣22mインサイドで相手に蹴りださせる必要があります。そのために一番容易な選択はキックオフの時に22mに蹴り入れてしまうことです。
そうすると、相手キッカーの能力にも依りますが、自陣10mから敵陣10m付近のマイボールラインアウトから再開することができます。
・part2
スタートは自陣22mインサイドでのマイボールスクラム、ゴールは自陣10mでの相手ボールラインアウト。
一番容易な選択はそのまま蹴り出すこと。
では、このスタートに対して他のゴールはないのでしょうか。
赤のラインで書いたことは、ほかのストーリーです。ゴールに関して、位置はあまり変わらず、左右の違いだけです。一番の違いはどちらのボールで再開するのかです。
自陣スタートなので相手のBK3が下がっている可能性があり、外側にスペースがあります。そこを攻め、ゲイン(自陣10mまでを予想)をした後に蹴りこむことで相手22mまで蹴りこむことができます。相手が蹴り出す選択肢しかなくなります。相手のキックがどれだけ良くても自陣10mくらいまでしか戻すことはできません。リスクはありますが先程よりは良い結末を迎えることができます。
・part3
実際のシーンから。
予定していたゴールから大幅に良い結末を迎えることができたシーン。
スタートは22mアウトサイドのマイボールスクラム、イメージしていたゴールはハーフウェイでのラインアウト(この場合はどちらのボールでも良いと思ってました)。自陣だったので、早めにキックを用いて敵陣に入りたいという思いがありました。
このスクラムは劣勢だったので、出玉が乱れコンタクトが起きた地点は22mインサイド。ですが、ラックができたシーンは22mを出たところ。初めは、インサイドということからタッチに蹴り出し、ハーフウェイを狙うつもりでした。
ですがラックができ、アウトサイドということを知り、相手の裏のDFを見るとタッチに出されることを予想したポジショニングをしているのが目に移りました。
タッチに直接蹴り出すことができないことと、相手の頭を越えることができればエリアを回復することができると思い、少し内側に蹴る選択をしました。
結果論ですが、風の影響もありタッチに出たところは敵陣22mインサイド、単純計算で60mものエリアを回復したことになります。
ゴールの設定は最高のシナリオではなく、合格点のラインで設定することが大切です。
この理由は、ラグビーは不確定要素が多々あるので、上手くいく時も上手くいかない時も紙一重です。そのため、「これだけはせめて」というラインで設定することで試合の流れを崩すことなく進めることができるようになります。
このゴールに向かってプレーするのですが、意識することはいかにこのゴールよりも良い結果を手に入れるかを考えます。
■余談
僕自身は数学を学んでいて、あとからこれは論理的思考力を身に付けることができたんだなと実感しました。今から身に付けたいという人は、証明問題の話を頭に入れるだけでいいと思います。
論理的思考力をわかりやすく言うと、自分自身でかみ砕き相手にわかりやすく伝える能力です。ラグビーというコミュニケーションありきのスポーツにおいてとても大切になってくることが論理的思考力だと思います。
証明問題を解けるようになる必要はないので、どうすれば相手にわかってもらえるのかを常に追い求めることが、ラグビーの上達に直結すると思います。
part3の映像をもう一度確認してください。
kickを選択した地点は自陣22mアウトサイド、タッチにでたのは直接ではなく敵陣22mインサイドでした。先日取り上げた、50:22の試験的ルールが仮に適用されていたならば、またあの位置からマイボールのラインアウトでの再開でした。
これを考えるととても夢があります。
ルール改正に1票入れたいと思います。