プロラグビー選手・金正奎が語るリーダーシップの在り方
ラグビーワールドカップの解説等を最近は投稿してきました。
今回は9月30日に行われた、第1回リーダーアカデミーについて書いていきます。
受講者である僕がこうしてnoteに書こうと思った理由はただ一つ。
一人でも多くの人に共感してしてほしいから。
ただそれだけです。
リーダーシップと聞くと、スポーツ界ではキャプテンが率先して意識していることのように考えられがちですが、プレーヤー全員に当てはまることであること、また、スポーツだけでなく社会に出たときにも通ずる内容でした。
そのこともあり、たくさんの人に届きますようにと願いを込めて書きます。
当イベントは株式会社REVIVE主催で行われました。
また、一番の驚きは参加費は無料だったのです。
正直お金をとっても良い内容だったと思います。
そのこともあり、僕自身も一人での多くの人に伝えることができればいいなと思いこうしてnoteで発信することにしました。
当日の内容は金選手のTwitterでLIVE配信していましたので、お時間のある人は覗いてみてください。
■アジェンダ
初めに約2時間ほどの時間でのアジェンダを簡単に紹介していきます。
・自己紹介
・ワークショップ
・トークセッション
・再びワークショップ
・まとめ
上記の順で進めていきました。
これより以下はとても長くなりますが、トークの内容と僕自身の感じたことを深く書いていきます。
■自己紹介
イベントの開始は金選手の自己紹介から始まるやいなや、すぐに椅子を片付け、全員で円になり自己紹介を全員しました。
みんなの緊張を解くこと、また話しやすい雰囲気づくりのためにも良い手段だと思いました。
ですが、何気ないここにもポイントがあったのです。
それは、プレッシャーのなかで何かをすることです。
この時、1人15秒という制限をつけました。
約25人が自己紹介を終えたあと、金選手はこう言いました。
この中で15秒以内に終わることができたのは3人ほどしかいなかった。
なぜこの制限の中で完結して話すことが必要なのか。
それは、練習中や試合中を考えれば分かると思います。
試合だともっと時間がないかもしれない。
その限られた時間の中で完結して言葉にする必要があります。
ぼく自身、不覚にもなるほどと思ってしまいました。
人に伝えるということの難しさを感じてた身としては、その伝えるときに制限をかけられていることを考えたことがなかったため、このスタートで、この後にどんな話があるのだろうと参加者全員の目の色が変わりました。
■ワークショップ
自己紹介が終わればすぐにワークショップに移りました。
ここで行ったことは、フラフープを用いたゲームでした。
ゲームの詳しい内容は上記の金選手のTwitterのLIVE配信をご覧ください。
全員初めて行うゲームに戸惑いながらも、試行錯誤しながら挑戦していました。
ここで、大切なことはやはりリーダーシップでした。
ぼく自身も、このイベントの趣旨を理解して参加したので皆をまとめることができるように声掛けしていました。
このゲームを通しての初めの気づきは、皆初対面にも関わらず、リーダー的存在の人、補佐をする人、話を聞く人、意見を述べる人など、全員が何らかの役割になり、チームとして成り立っていたことです。
チームワークという言葉がありますが、こんなにも簡単にチームになることができるんだなと感じました。
ですが、あとのトークセッションで気づくことなのですが、ここでの間違いとしては、一人のリーダーにすべてを任せてはいけないということです。
1人が話した方がスムーズに話が進んでいるように思うかもしれませんが、本当に建設的な会話が行われているとは限りません。
先ほどの様に、チームにはたくさんの役割があります。
その多様性や個性を生かし、チームのメンバーを活かしていくのがリーダーがとるべきリーダーシップなのではないかと感じました。
■トークセッション
●3つの『C』とレジリエンス
・Change
・Challenge
・Control
Resilience
このことが金選手が日常で心掛けていることだそうです。
このことについては、のちほど嫌というほど出てきます。
金正奎選手の経歴をさかのぼると、啓光学園→早稲田大学→NTT communications ShiningArcsでラグビーを続けており、サンウルブズや日本代表にも選出された経歴を持っています。
一流のアスリートが、中学、高校、社会人と様々な場所で主将を務める上での失敗談を見ていきます。
●高校時代
高校時代の金選手の体験談をもとに考えて行きます。
なんと高校2年生のときに、花園で優勝を経験しました。
ですが、高校3年生の時は良いメンバーが揃ったにも関わらず、2連覇を成し遂げることができませんでした。
花園には出場することすらできなかったのです。
大阪予選の決勝で負けてしまったのです。
これほど輝かしい選手ですが、金選手の人生での一番の結果が高校2年生の時の優勝だそうです。
これ以降、これを超える満足した結果を追い求めている最中です。
高校2年生でFWの中での中心選手だった金選手はもちろん3年生でキャプテンになります。
2連覇もかかっていたので、周りをまとめようと必死だったそうです。
当時を次のように振り返っていました。
・なんでも自分でやってしまう
・全ての責任を自分で抱える
・誰にも頼らない
この3つに悩まされていたことを、高校を卒業してから気づいたそうです。
負けた原因は自分にあったのではと後悔ばかりだそうです。
当時の金選手のキャプテン像として、「キャプテンはすべて一人でやる」という固定観念を持っていました。
のちにこの考え方がよくなかったと気づいたそうです。
全てを自分自身が背負おうとした結果、自分自身で自分の首を絞めているようだったそうです。
その経験を活かし、名門早稲田大学に入学します。
●大学時代
大学4年生、自分の代になり初めキャプテンではなく、副キャプテンについたそうです。
キャプテンは東福岡高校出身の垣永真之介選手でした。
とても優しい人で周囲からの信頼も厚かったそうです。
過去、自分自身がキャプテンとしてチームを引っ張ってきた金選手でしたが、初めて副キャプテンという立場になってみて肩の荷が下りたように感じた。と表現していました。
この4年生で意識してしたことは以下の3つです。
・キャプテンを支えたい
・勝利至上主義
・優勝のことしか考えていなかった
これまでキャプテンとしてチームの先頭に立ち、チームを導いてきた金選手だからこそ感じることもあったと思います。
実際に4年生の時は大学選手権準優勝であと一歩届かずの結果となりました。
金選手のラグビー人生で2番目の成績だそうです。
ですが、次のことをボヤっとつぶやいていました。
「優勝じゃなければ意味がない。2位も最下位も同じだと思ってるんで」
この言葉を聞いたときは、鳥肌が立ちました。
ぼく自身も日常で意識していることではありますが、なぜか金選手の口からでたこの言葉は重みが違うような気がしました。
上記の3つ以外で実践していたことがあります。
〇キャプテンの言う事に同意をしながらも逆を向くようにしていた。
このことを意識していたそうです。
垣永さんが右をむけ、というと金選手は意図的に左を向くようにしていたそうです。
その理由としては、反対意見をだすことによって、話す幅が増え、良い話し合いができるようになるからです。
「反対意見の重要性」を日々考えていたそうです。
一番大切なのは、キャプテンの言う事に同意しながらという部分です。
一方的に反論するのではなく、尊敬の念を持ち、同意した上で反対意見を出すという事だそうです。
●社会人時代
社会人2年目にしてチームのキャプテンを務めることになった金選手。
現在6年目なので、トップリーグのチームで5年もの間キャプテンとして先頭に立ち引っ張ってきているのです。
ですが、2~4年目は過去の繰り返しだと振り返ります。
それは、高校生時代にしていたことと同じことをしてしまったのです。
すべて自分自身で背負い込み、自分自身で解決しようとしていたのです。
この3年間はチームの成績も伸びることなく、低迷期だったそうです。
5年目にようやく分岐点が訪れました。
それは、人に悩みを打ち明けた瞬間でした。
この時は、チームメイトだったそうです。
実際に、今チームがこういう状況でここをこういう風に改善したいんだけど、、、のように話したそうです。
そうすることで、チームメイトと一緒にチームを創っていこうという良い流れができたそうです。
チームの成績がみるみる上がっていったそうです。
・強がらない。
・人に弱さ(自分の素)を見せてもいい。
・悩みは人に話した方がいい。
この3つにこの時気づかされたそうです。
ここで先ほどの3つのCをいかにして意識していたのかを説明していきます。
個人とチームという観点で説明します。
・人に変わってほしいと思う前に自分自身が変わる。
他人を変える難しさを知ること。
変わる勇気を持つこと。
自分自身が変われば、良い影響を与えることができるんじゃないか。
・コントロールできることにフォーカスする。
一番容易にコントロールできるのは自分自身です。その中でも、感情、行動、態度の3つは意識して変えることができるはずだと金選手は語ります。
この3つのうち、1つでも変われば他の2つも変わるはずです。
自分自身をコントロールするためは、気づくことです。
例えば、今怒っているな、や、こういう場所に行くと気分が悪くなるなど、事前にマイナス方向になることに気づくことでコントロールすることができます。
・チームメイトを100%信頼して役割を与える。
高校、社会人(2~4年目)までは、自分自身ですべてを背負っていた役割、責任をチームメイトに任せるようにしたそうです。
現在はおどろくことに、試合や練習の円陣では金選手の話すことは「頑張ろう」などの一言で済むそうです。
これは、究極の形だと僕は思います。
ラグビーの話しでいえば、AT担当の人、DF担当の人、FWやBK、戦術、など様々な分野に役割を与えることで会話の幅が広がったそうです。
うまくいかなかった時を振り返ると、円陣ですべてを金選手が話していたそうです。
その時は、なんでみんな話してくれないんだろうと思っていたそうです。
ですが、気づいたのは、話せる雰囲気作りができていなかった。話さない人が悪いのではなく、話せる環境を作れなかった自分が悪いのだと考えたそうです。この環境を改善するためにも、チームメイトの中心選手に声掛けをし、君はここの部分を話してくれ、など役割を振ると、自ずと会話が活発化したそうです。
何事も一人で抱え込まないことだそうです。
・とにかく変化に恐れずチャレンジする
はそのままの意味です。
・目的・目標を全員が同じ絵を見て、とにかく言葉に出す。
・チームの強みを理解して同じ絵を見る。
現在、ラグビーワールドカップが行われていますが、日本代表の選手はメディアに向かい全員がベスト8以上と言います。
なぜ、今の日本代表が強いのかは、全員が同じ認識をもち、そこに向かってなにをすればよいのかを全員が理解しているからだと思います。
金選手が所属するチームでも自分たちがなぜその目標を目指すのか、など言語化して認識し合ったそうです。
ぼく自身の実体験でもこのことの重要性を感じたことがあるので、紹介します。
入学、入部と共に赴任してこられた先生がラグビー部の顧問になります。
中学生の頃、部活動で何気なくラグビーをしていた僕達に、「お前らの目標はなんだ?」という問いに僕らは答えることができませんでした。
強豪でもなければ、弱小チームに近いチームでした。
そんな僕らは、先生から「近畿大会出場!これが目標だ!!いいか?」と唐突に言われたのを覚えています。
正直、無理だと思っていました。
その気持ちが全員のどこかしらにあったのか、練習の雰囲気もよくありません。でも、顧問の先生は一人で、「そんなんじゃ近畿出られへんぞ」と叫んでいました。
選手の僕らには到底叶うことのない夢のように考えていました。
ですが、顧問の先生は諦めが悪いのか本当に毎日毎日言い続けました。
そんなに言う?と思っていましたが、それほど言われれば近畿大会に出れるんじゃないかと思うようになり、選手間でもキーワードとして口にでるようになりました。
ミスボールへの反応が遅い人には、必ず注意をするなど意識レベルは格段に上がりました。全員の認識が一致した瞬間でした。
今でも忘れないのは、カメラに取材にされたときの練習をしたことです。
「君たちの目標は?」と先生にマイクを向けられると、喜んで「近畿大会出場です!!」と叫んでいたのを思い出します。
結果、大阪の決勝で負けてしまい、近畿大会出場はあと一歩で叶いませんでしたが、決勝まで行けるチームではなかったので明らかな成長を今では感じます。
・練習=試合(同じ扱いにする)
ラグビーではよく、「練習でしたことしか、試合にはでない」といいます。
まさしく、その通りだと思います。
試合では当たり前のことが練習では疎かになってしまいます。
その積み重ねが、試合での当たり前の質を下げることにつながるのです。
例えば、ラックでの姿勢、寄り、ボールキャリアーの仕事をしない、ミスボールへの反応など、挙げればきりがないですが、こういったことに練習でこだわることが大切なのです。
・円陣はタイトに話す人の顔を見る。
全員が同じ認識をすることが大切だと言いました。
円陣では、話す時間も限られている中で、全員が共通認識を持たなくてはなりません。
なので、当たり前かもしれませんが、このことは意識して損はないです。
・コントロールできることをコントロールする。
試合で天候をコントロールはかなり難しいです。
また、レフリーをコントロールすることも難しいです。
ですが、自分自身やチームメイトをコントロールすることはできるはずです。
一例ですが、ペナルティをしたら、1秒以内に10m下がろうというルールを決めます。
すると、ペナルティを取られレフリーに文句を言っている選手がいたとすればその1人がラックのそばに残り、残りの14人は10m後ろにいます。
そうすることで、レフリーに文句を言っていた選手は自分のしていることに気づくのです。
この様に、なにかしらのルールを決めてコントロールすることもありです。
このトークセッションで一番伝えたいことがあります。それは、自分自身にフォーカスすることです。ベクトルを自分に向けるなどとも言えると思います。
自分が行っている行動は、周囲に良い影響を与えることができているのか?を考えると、自ずと自分自身にスポットライトが向くと思います。
■再びワークショップ
これだけのトークを金選手にしていただいた後に、再度自己紹介の直後にしたワークをしました。
この時も、制限をかけ行いました。
雰囲気はLIVE映像をご覧ください。
その場にいた僕が感じたことを書きます。
最初に行った時は、自らリーダーシップをとる人間がでてきたり、補佐役に回る者をいれば、口数が少ない人もいました。
ですが、リーダーを決め、全員に役割を与えると、会話がスムーズになりました。
一班7~8人程度だったため、皆が参加することができていましたが、この人数が増えるに比例して、話す機会が減る人が出てくることも考えられます。
ですが、なにも考えずに行うよりも意図を明確化し、全員が参加する意欲を持ち、なにより全員が目的・目標を共有した状態で行うことで明らかな違いが見られました。
今回はゲーム感覚のワークでしたが、ラグビーはもちろん、ラグビー以外のスポーツもしかり、会社の中など組織の中で活かせることがあるなと感じました。
■まとめ
最後にResilienceの話をします。
resilienceとは回復力や弾力を意味します。
このスライド1枚にこのイベントで金選手が伝えたい内容がすべて詰まっています。
最後に、キャプテンシーは先天的、リーダーシップは後天的の話をします。
言いたいことは、キャプテンシーとリーダーシップは同じものではないということです。
キャプテンシーはその人の素質の部分で、キャプテンシーがある人は生まれ持った才能だと金選手は言います。
キャプテンシーに似たリーダーシップは誰でも身に付けることができる能力だと言います。
リーダーシップの形に正解はありません。
なので自己流でいいのです。
その中で、自分自身をコントロールし、変化させ、チャレンジし続け、失敗体験を乗り越えることで成長につながるのです。
僕自身キャプテンでも副キャプテンでもありませんが、何か一つでもチームのためになにか良い影響を与えることができるように、このイベントで学んだことを意識していきたいと強く思います。
とても長いですが、最後まで読んでいただき有難うございました。
いつも読んでいただきありがとうございます。 一人でも多くの方に読んでいただき、ラグビーをより楽しんでいただけるようこれから頑張っていきます。 コメントお待ちしています!! よければスキもお願いします。