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眩耀夜行とは何なのか【蓮ノ空歌詞考察】

私は梢先輩推しなので、やはりスリーズブーケが好きです。
しかし、スリーズブーケが好きなのは単にこずセンが好きだからというだけではありません。
スリーズブーケの歌詞は、他ユニットに比べて心情描写がストレートでわかりやすいと思っていますが、それでいて情景描写のひねり方が巧みで聞けば聞くほど歌詞のイメージが鮮明に思い起こされる深みがあります。

歌詞の素晴らしさを言語化して、皆様と一緒に歌詞、ひいてはスリーズブーケの関係性の理解を深めていきたいと思います。1オタクの妄想の話なので、解釈違いがあっても何卒ご容赦ください。


眩耀夜行とは何なのか

歌詞に入る前に前提から見ていきましょう。
眩耀夜行はスリーズブーケの2ndシングル表題曲で、103期7月度Fes×LIVEにて披露された曲です。

リリックビデオも公開されています。


作者は誰か

スリーズブーケの漢字4文字タイトルは、梢先輩が作った曲と巷では言われています。こちらは根拠もたくさんあるしその通りかと思うので、有識者のブログなどを別途参照いただくとして、「スリーズブーケの伝統曲ではない」「梢先輩の作詞作曲だろう」ということだけ気にしておけばいいのかなと思います。
つまりストーリーの本筋や蓮ノ空女学院の歴史とはとはあんまり関係なかろうということですね。

タイトルから考える

本のタイトルやプレゼンのスライドのように、楽曲のタイトルたる曲名にはその曲が一番伝えたいメッセージやテーマが表されていると考えていくようにしています。
「眩耀」とは聞きなれない言葉ですが、ネット検索によると「まばゆいばかりに光り輝くこと」とのことです。
ジャケットを見るに光っているのはおそらく流し灯篭だろうかということまで推測できますね。夜行のほうは深く考える必要はないと思いますが、百鬼夜行のような感じで、夜中に出歩くことというのは意味深というかいけないことのような感じがします。
結局タイトルだけだとよくわかんないですね。

歌詞から考える

アプローチ

それでは歌詞のほうに入っていきます。
私は歌を聴くとき、下記のようなことを気にしています。

▼テーマ、モチーフは何か
曲のテーマやモチーフは何かを考えます。テーマというと難しいですが、スリブは百合っぽい、みらぱは応援してくれてる、ドルケは複雑なこと語ってる、くらいのものでよいのではないかと。タイトルと合わせて何を伝えたいのかどうかを考えます。
モチーフとは今回の眩耀夜行でいえば「光」「夜」「星」「七夕」とかでしょうか。よく出てくる言葉や比喩表現が何を例えてのものなのかからヒントを得ようというわけです。

▼MVだとどう撮られそうか
実写のアーティストだとMVで寸劇が展開されますよね。あんな感じのことが脳内でシミュレーションされる感じです。

▼歌詞の内容が実際に見ていること(実景)かイメージっぽいか。後者の場合、情景であるかどうか
情景=人の感情に脚色された実景のことであると思っています。そこには比喩表現などが含まれるのが常で、キャラの感情をより情緒をもって美しい印象に見せてくれるので、そういった言葉選びが好きというのもありますね。
ただし実景描写が比喩を含まないわけではないので、描かれている景色が何を意味してのものなのかを考えたいということです。

▼曲調
私はコード進行については詳しくないので、真の意味では語れないのですが、使うコード、楽器の選択、音色、どれだけ音を重ねるかでの盛り上がりの波の作り方など、曲の雰囲気や内容の盛り上がりどころ、テーマを探る参考になるのではと思います。

前提

まずは前提として曲の舞台ですが、蓮ノ空の舞台が金沢ですから多分金沢のどこかです。ジャケットを見るに川か海、灯篭を浮かべてて夜だな、きれいだなくらいの印象です。
実際、灯篭流しは金沢の行事としてありますね。
眩耀夜行のようなストーリー仕立ての曲は上から順に見ていくのが個人的に好きです。落ちサビもありますし、曲調含めて流れがありクライマックスに向けてストーリーの情感も高まっていきそうです。
こんな感じのことを考えながら歌詞を順に見ていきましょう。

1A

「もっといけるよ」跳ねてゆく声
小さな影が水切りをしてる
「ねえ私たちも」君が笑った
大袈裟だけど流れ星みたいだな

いやまぶしすぎるだろ。

いきなりキレてしまい申し訳ありません。初手から綺麗すぎです。
地元の小さな子供たちが無邪気に水切りで遊んでいる様子を二人は見ているのでしょう。影で見えるということは河川敷は暗くて川沿いの建物は明るいんだろうなと。
夜の京都の鴨川とかそんな感じですよね。金沢の灯篭流しの画像も見てみると綺麗です。その場に立っているような美しいイメージ描写です。
私たちもと誘う相手(歌割り的に花帆)がとてもまぶしく見える。高校生の女の子が水切りをしたいというのはちょっと子供っぽくてかわいいですが、それが風景も合わさって愛おしく見えます。
きっと振り返って髪をなびかせながらキラキラした笑顔で誘ってきてくれたんだろうな。その一瞬の輝きが流れ星のように輝いて見えたんでしょう。
映像ならスローになってほしい。
イントロのピアノが切なくてそういう話だというのも予感させます。

Fes×Liveではしっかり後ろに流れ星が流れているのも芸が細かいです。

1B

水面を駆ける光の波紋
銀河に石を散りばめた夜に願い事を
今夜叶えようよ

ここは諸々の前提から。
河に浮かぶ灯篭流しを星に例えた歌詞かと思います。そして眩耀夜行は7月Fes×LiveのMCで七夕をイメージした曲だと梢先輩が言っていました。
七夕といえば織姫と彦星の物語。天の川が一番鮮明に見える季節です。
灯篭が流れる川=天の川という比喩が美しいです。
ちなみに、灯篭流しは6月に行われるイベントで、浅野川三流しという七夕も含む恒例行事の一つです。浅野川は「せーはす」でも訪れていた茶屋街のすぐ近くです。
七夕関連で行くと、眩耀夜行衣装も七夕飾りっぽい淡い色合いでとてもいいと思います。
歌詞は二人の水切りが天の川に生む光の波紋が美しすぎますね。
暗闇に浮かぶ淡い暖色のロマンチックな風景が浮かんできます。

さて、ラストですが激アツポイントです。
「今夜叶えようよ」=流れ星に願いを伝える行為ですよね。
1Aで梢は花帆のことを流れ星のようだと歌います。
流れ星は願いを叶えてくれると言われますね。そして、このセリフの歌割りは花帆ちゃんです。
では、この願いを叶えてくれるのは…?

あぁ~~~~~~っ^^!!!!!!

でもここではまだ願いを伝えていませんね。

1サビ

ここじゃないどこかへ
まだ誰も知らない場所まで
街中が空を余所見する間に
このまま遠くへ
川沿い下って行けるとこまで
固く繋いだこの手はもう
離さない
怖く…(怖く…)
ないよ…(ないよ…)
暗闇だって
君とならこんなに眩しい

圧倒的百合描写です。
時系列的にはラスサビでの出来事がふさわしいですから、ここは前振りと思っています。

街中が星空を見ているが、二人だけは天の川を見ている。この天の川は灯篭流しが行われる川のことです。
星空そっちのけで二人だけは1Aでの綺麗な思い出のある天の川に目を向けている。二人が走り出したことには誰も気が付きません。
祭りの喧騒から離れるように二人だけで走っていく描写、エモすぎます!
暗闇でこそ星は良く見えますから、もしかするとお互いの輝きが強まるのは喧騒の中ではなく、二人だけの世界なのかもしれません。

伸びやかでゆったりした高音、それでいて疾走感のあるメロディーは儚くてむずがゆい情景を引き立てますよね。心がキュッと締まるのを感じます。

見返しながら書いているのですが、七夕の織姫と彦星の話もイメージしているようなことを梢先輩がFes×LiveのMCで言っていましたね。
七夕といえば1年に1日しか会うことができない時間制限がありますよね。
二人の間は天の川が物理的に隔てていますから、手を離さないというのは離れたくない二人の想いを表しているのではと…

ちなみに灯篭流しは加賀友禅へのリスペクトの行事らしいのですが、織姫といえば機織りでもあり、衣装を作っている梢先輩とも重なるところがありますね。彦星は花帆ちゃんとは重なりませんが…

2A

どんな感情もどんな場面も
全部並べて一つの星座にしよう

ここはイメージ描写かなと思います。
モチーフの星を使った綺麗な描写です。
星座は半永久的に見られるものですから、二人の思い出をずっとということなのかもしれませんね。切ないです。

七夕ばなしになりますが、織姫と彦星は夏の大三角のうちの二つ「ベガ」「アルタイル」であると言われます。この二人の間を天の川が隔てています。悲しき星座ですね。でもこっちの二人は自業自得感もあるお話なのがおもしろいです。

曲的にも1Aより尺が短くなっていて、気持ちが上がっていく感じがして良いです。

2B

望遠鏡を覗かなくても
大事なものは
見えている 君に
出会った日から

ここすき。
望遠鏡といえば天体観測が好きな梢先輩です。
活動記録第9話で、瑠璃乃ちゃんがスクールアイドルへの挑戦をやめてしまいそうで悩んでいるときに花帆ちゃんの相談に乗ってあげたシーンがあります。
そこでスクールアイドルを星に例えていますね。

肉眼で観測できる星はほんのわずか。
だけど、空にはいつだって満点の星が浮かんでいる。
それってまるで、スクールアイドルみたいだわ。
私が狙うのは、当然、いちばん輝く一等星だけれどね。

活動記録 第9話 『ルリ・エスケープ』

ここのこずセンめっちゃ可愛い。
「望遠鏡をのぞかなくても大事なものは見えている」
輝きは強く、近い。最初からすごく輝いてみえてたんですね。
ここも1Bであった今夜叶えようよに相当する文がなくなってますが、尺カットと合わせてむしろ1Bの激アツセリフを引き立てていて良いです。

ちなみに、同じシーンで梢先輩が花帆ちゃんになりたいのはどんな星かしら?と問いかけていますが、ベガとアルタイルは一等星で、全天でも特に明るい星です。
二人はとっくに輝いてますよと。そう思います。

2サビ

伝えていいよね
見送るだけじゃ届かない
夢に浮かべた言の葉の船
「時間を止めてよ」
神様にも笑われちゃいそうな
声に変わって君を
困らせそうだ

やってますこれは。
1Bでの圧倒的伏線張りからの最強2サビです。

「見送るだけじゃ届かない」
流れ星には願えばいいだけかもしれないですが、ここでの流れ星は花帆さんですから、声に出して伝えなければいけないですよね。伝えていいよねと気持ちが溢れます。

「夢に浮かべた言の葉の船」
ここはワードセンスがハンパなさすぎて随分悩みましたが、葉っぱの船から連想できるのは笹の葉の船じゃないかと思います。
浅野川三流しで7月に行われるのが「笹流し」です。

毎年7月7日前後の土日に開催されます。町会の班単位で制作した七夕飾りと、子どもたちが装飾した飾りを持ち寄ります。子どもたちは町内を飾りを持って七夕行列をしながら、最後に梅の橋に集まり、橋の上から浅野川に七夕飾りを笹ごと投げ入れます。短冊に書いた願いを浅野川の​流れが叶えてくれるという言い伝えによるものです。

https://www.3nagashi.com/landscapes

願いを記した笹流し。金沢のイベントになぞらえた情景描写、とても良いです。

「時間を止めてよ」
ついに気持ちが言葉として溢れ出します。
あぁ~~~~~^^!
これには神様も笑っちゃうでしょ。
でも「君」は多分困らないですよね。
「今夜叶えようよ」と言ってる側ですからね。
あぁ~~~~~~~~~~~~っ^^!

七夕もスクールアイドルも時間制限があるもので、時間を止めてよというのは表現として切なすぎやしないかと…
とても良いです。

歌詞に合わせて1サビと振りが変わっているのも見どころです。

C

いつもより賑わっている橋の上
背中向けて静寂の方へと走る
息を切る鼓動と足音 今はそれだけ
滲む…(滲む…)
汗を…(汗を…)
拭うのも忘れて
走り続けてゆく

圧倒的百合描写です。
サビの補完ですね。あまりにもエモい。
静寂の中聞こえるのはお互いのことのみ。二人だけの世界。

Cメロ入りのギターソロがコンパクトなのも、素晴らしい歌詞の情感を切らずに高める感じがして良いです。ギターについては爽やかな夏の雰囲気が終始出ていて、湿っぽい歌詞の湿度を吹き飛ばしていて、甘酸っぱい印象にしてくれていると思います。
ちなみにここでステージいっぱいに二人が離れてから急接近する振りは見入ってしまいます。ここがMCで触れていた織姫と彦星のところですね。

「きれいな夜だね」

えぐ。
以上です。

花帆さん

と言いたくなりますが、ここの歌割りは花帆さんなので、実質想いを受け止めての返答だと私は思います。
セリフ前の走り続けていくから音程を下げて落ち着かせてからの、ピアノとボーカルのみの静寂があまりにもこのセリフを引き立たせすぎていて、もう思考を停止せざるを得ません。ありがとうございました。

きっと梢先輩にも他の音が一切聞こえなくなるくらい、花帆さんの言葉だけが明瞭に届いていたんでしょうね。

ラスラビ

ここじゃないどこかへ
まだ誰も知らない場所まで
街中が空を余所見する間に
このまま遠くへ
川沿い下って行けるとこまで
固く繋いだこの手はもう
離さない
怖く…(怖く…)
ないよ…(ないよ…)
暗闇だって
君とならこんなに眩しい
ずっと…
(ずっと…)
忘れないで

歌詞の解釈は前述のとおりなので語りませんが、落ちサビやばすぎます。
停止した思考に叩き込まれる梢先輩の圧倒的歌唱力での1サビのリフレイン。2サビ、Cメロで二人のストーリーを理解した我々にはまるで別物に聴こえます。
ラスサビの「離さない」は気持ちの入り方も違って聞こえるのは私だけでしょうか。
このラスサビの関係性を表現する言葉を私は持ち合わせていません。

ラストはボーカル終わりにピアノを鳴らして切なく締めます。

「眩耀夜行」とは何なのか

結局「眩耀夜行」とはなんなのかと言われると「ひと夏のあまりにも切なすぎる二人の関係を、金沢の行事とも絡めながら情景豊かに描いたストーリー」であると思います。
繰り返しますがこの関係性を表現する言葉を持ち合わせていないので、月並みなまとめになってしまいました。

歌詞についていえば三幕構成が見事です。個人的には歌詞中で「」を使って書かれるセリフが、ストーリー仕立ての曲の良さに拍車をかけていてとても良いです。
この曲のストーリー構成は


発端:「ねえ私たちも」気持ちが高まるきっかけ
中盤:「時間を止めてよ」祭りの中で描かれる葛藤と気持ちの発露
結末:「きれいな夜だね」発露を受けての気持ちの肯定


だと思っています。
1B~Cメロでの中盤の丁寧な情景描写が結末のカタルシスをぶちあげます。そこに曲自体も落ちサビですから、高まらないわけがないです。
「」付きのものについては実際に発された言葉であると考えると、多くを語ることはしなくてもお互いの気持ちは理解しあっている関係であるとも思えます。

「眩耀」とはまばゆいばかりに光り輝くことであるとタイトルの項で書きましたが、こちらの真意は星空でも灯籠でもなく、お互いを強く照らし合う二つの一等星だったというわけです。
時系列に沿ったストーリーの歌詞も、少し和風で爽やかにクライマックスに向けて高まっていく曲調も、舞台の景色を強烈にイメージさせる素晴らしい一曲と感じます。

終わりに

凄まじい文字数で眩耀夜行を語ってしまったわけですが、皆様はどのように思いますでしょうか。
ここまで考えさせる曲が連発される蓮ノ空という作品も、オタクの情緒を破壊しすぎで困ってしまいますね。つい途中から花帆ちゃん表記が花帆さんに
変わってしまいました。

スリブで他に語りたい曲もありますし、ドルケは考察し甲斐があるし、みらぱは元気な曲の裏ではいろいろ考えているし、考えがまとまってきたらまた書いてみようと思います。

なぜかライブの感想を書く前に楽曲考察記事を書き上げてしまいました。
眩耀夜行が好きすぎる。

駄文ながらご覧いただきありがとうございました。

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