見出し画像

地球に落ちた、エイリアンだった君へ


volcanoが公開されて、初めて聴いた時から、結構ずっとこの曲について考えているんですけど、本当に、もしかしたら私は、とんでもないものを受け取ってしまったのかもしれない…と感じています。

この曲が大好きな気持ちを、少しだけここに書き残します。

1.当事者の「you」

私は、この曲を聴いてまず最初に、「痛い」と思ってその後に、「近い」と思いました。

この二つの感情のうちの、「痛さ」の方は、SKZ-RECORD/PLAYER特有のものだと思います。

前提に、SKZ-RECORD/PLAYERにアップされる作品の特徴として、その生々しさが普段より強く滲み出やすいコンテンツだと感じています。

カムバックなどで収録される曲と比べて、本人がやりたい、と思った時期と実際に世の中にアップされる時期が近いことが多く、鮮度が高いです。(今回のvolcanoも、2022年12/14に作り、公開されたのが2023年2/13と、公開まで2カ月ほど)

その上、本人がその時、「やりたいこと」が優先される場合が多いので、フィルターを通さずに感じる彼らの生の感情の、密度も高いと思います。

だからこの、「表現した人の心臓に素手で直接触る」みたいな、ドクドクと熱いのに、生々しくて、ヒヤッとする、そんな痛々しさは、慣れてはいないですが、覚悟はしていました。


でも、こんなに近いとは思っていなかったです。

volcanoの「you」は、ジソンくんがソロで歌う二人称で、多分1番ジソンくんの近くにいるんじゃないかな、と思ったんです。


これはストレイキッズの曲の特徴であり、ストレイキッズの曲を作っている一員である、ジソンくんの曲にも言えると思うのですが、彼らの曲の特徴のひとつに、「当事者の心」がある気がします。

自分で曲を作っているから、という簡単な事実以上に、彼らの歌は、狭くて、小さくて、彼らにしかわからない心情を表現していることが多いです。 

彼らの曲はあまりにも、彼ら自身が当事者です。

ストレイキッズの歌を聴いていたら、「歌手」という言葉が何度も出てきます。

歌手という職業を諦めろ


あの頃なりたかった歌手に今ではなった。


他にも、

ポップガードの前枯らすこの声

scars

ありきたりの曲や歌詞が前と何も変わらない

SLUMP

歌手、歌詞、夢、練習室、作業室…etc…

歌詞だけじゃなくて、一曲丸ごと、彼らにしかわからないような過去の話を題材にしている曲もいくつもあるし、多分、上げ出したらキリがないほどに、特定の心情を表現しているものが多い気がします。

こういう時、いつも私は、「いや、分からないよ。」と思うんです。

「本当の意味」で、この歌詞を理解し、共感できる人はものすごく少ないのではないかと。

それでも私たちは、その歌詞に自分の経験の中で近しい物を当てはめたり、または彼らの生活を想像したりして曲を聴きますよね。

そういう狭い範囲の彼らの感情の中から、自分に少し似ている経験を見つけ出すから、私にしかわからないこの気持ち、彼らがわかってくれたの…!と

「ストレイキッズの曲が、私たちに寄り添ってくれている」ような気がする。そんな感覚があります。

実際、寄り添っているのは自分自身なのに。

前置きが長いんですが、ジソンくんの作る曲ソロ曲にも、その個性が、当たり前だけどあると思います。


彼が、「自分(I)」について歌った時、正直私は、「君の気持ちになって、この曲を完璧に理解するのは、難しいよ」と思います。

誰も気にしてなくても僕はくたびれて
倒れたりしないという僕の誓いで
(中略)
そう 誰かは僕を良くは思ってなくて
みんなから好感を得るには僕はあまりに幼かった

https://youtu.be/meQvDHBSxbQ

お父さんもお母さんも言ってた。
つらかったらいつでも辞めていいって。
その言葉を聞いてプライドを持ってすぐ答えた。
It’s so hard,so God what shoud I do?
(すごくつらいよ。神様、どうしたらいいですか?)
もう少しで辿り着くのに、ここで辞めたら弱虫になりますか? 

I see - J.ONE

ここで歌われているような感情に「近い」経験はあるかもしれませんが、「そのもの」にはなれません。

ジソンくんの経験がそのまま歌になっているから、もし、自分の経験したことしか共感ができないというのなら、私はこの曲に本当の意味で共感して聴くこともできないと思います。

対して、ジソンくんが「相手(you)」を歌った歌、「close 」「wish you back 」「HaPpY」などは、明確に物語を題材にしたり、そこから派生させて作っているので、ここに出てくる登場人物のことは、作品を見たりしたら、ある程度経験できるし「理解できる」物にはなりますよね。

「物語」で感情を疑似体験する人が多くいる上に、仮に誰も作品を見なかったとしても、物語の作者がいる時点で、ジソンくん「だけ」にしかわからない気持ちではないです。

ジソンくんの作る「I」の歌は、ジソンくん自身のことを、当事者の臨場感と、生々しさを持って描いていました。

でも、ジソンくんが作る「you」の歌は、ジソンくんの世界にはいない、別の世界の人でしたよね。相手のことを、おとぎ話のように綺麗に描いている。個人的にはそんなイメージがありました。
だからこそ、それを聴く私たちもある程度の共感を持って聴くことができます。

ジソンくんが、「you」というものを、映画館のスクリーンを通して観ていて、そして、それを私たちもまたみている。
そんな感じだったと思うんです。今までは。

でも、volcanoの「you」はI seeや、alienやRUNなど、自分のことを歌った「I」と同じ、当事者の「you」じゃないかと。

今までずっと、ひとりぼっちの映画館で、ジソンくんが見つめるスクリーンの先の「You」を彼の目を通して見ていたのに、いつの間にか、ジソンくんの席の隣に、一緒に座ってる人がいたんです。

それが、私がこの曲を大好きだと思うと同時に、苦しく感じる理由のひとつじゃないかな、と思っています。

彼しかいなかった、彼だけがわかる世界に、初めて現れた、「you」


今まで1番、ジソンくんの近くにいる気がします。


2.volcanoの在処

volcanoを辞書で調べると、
火山とか噴火口って出ます。

だからやっぱり「volcano」という単語だけで聞いたら、大きい山がバーン!って爆発するような、激しい遠景を思い浮かべると思うんですよ。

そういうものを想像した上で、初めて聴くとき、まずイントロの音にびっくりします。
ものすごく優しい音だから。

最初、火山とは真逆の、水の中を揺蕩うような印象を受けました。

このイントロから始まって、ずっと裏で鳴っているの音の繰り返しが、自分の中でpart of your worldを彷彿とさせたせいもあると思うんですが、これは、私に音楽の知識が全くなく、知っている曲も少ないから、そう感じただけかもしれません…。

とにかく、単語だけから連想する、「スケールが大きい」「爆発」「激しい」などとは、逆の印象を初めに受けました。

サビの部分の歌詞を見ても、

Like a volcano
手が触れると溶けそうな温度のlove
僕を地底の果て 君の元へ連れて行って
全て焼けてしまっても良い
数百回巻き戻しても僕の選択はいつも

君に溶け込めるように
僕の体を抱きしめて 痛くても僕は It’s ok
冷たい荒波の中には熱い君が必要
Your my volcano

https://youtu.be/SB6VJXA5cYw

スケールは小さく「手が触れる」ほどの近さ
爆発して空中に散ってるのではなく、行く先は「地底の果て」
激しく動くというより、「溶け込めるように」

私の想像したvolcanoとは反対でした。
こういう部分に、彼自身の独特の感性があるのかな、と想像します。

それで、爆発もしないし、地底の果てにある火山なんてないじゃん…全部逆じゃん…ナニコレ…って思っていろいろ考えていた時に、気が付いたんですけど…あるじゃん…

海底火山が…

(皆さん既に語り尽くした考えだったりするかも…公開当時みなさんの感想をあまり見ていなかったのもあり、もしそうであればすみません。)

そう考えると、「冷たい荒波には、熱い君が必要」という歌詞の、冷たい荒波=比喩表現だと勝手に思い込んでいましたが、物理的に海を表現してるのかもしれません。

ここまで想像したら、もう純粋に火山ってどんなんだっけ?みたいな好奇心が生まれて、自由研究よろしくいろんなサイトとか見てしまったんですけど…

火山の地下には火山ガスがとけこんだマグマがあります。 このマグマが地下の浅いところまでくると、まわりの圧力が下がり、炭酸ジュースのふたをあけたように、マグマの中の火山ガスが泡になります。 泡を含んだマグマはまわりよりさらに軽くなるので、地上まで上がってきて噴き出します。 これが噴火です。

https://www.jma-net.go.jp/sendai/knowledge/kyouiku/eqvol/a_vol_ws.pdf


https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/egao/taio/volcano/mechanism.html

調べたところ、海底火山と陸上火山に大きな違いはなく、単純に置かれた環境の差が大きいらしいです。

原理を簡単にいうと、マントルが溶けて、マグマとなり、それが噴き出してくるのが噴火ということです。

じゃあ、マントルって何?っていうと、

一言で言ったら、地球の核なんですよね…

ここで、歌詞を振り返ってみたいんですけど…

僕を地底の果て、君のところまで連れていって

ジソンくんが言っている「volcano」の在処を「海底火山」だと仮定すると、地球の核であるマントルが溶けて、マグマとして静かに流れ出している、海底の奥深くまで、僕を連れていって。という意味に感じられませんか…?

地球に落ちた I'm an alien on this earth
僕1人どこにも属していないように思えて
どんなに笑ってみても、I  feel so lonely
地球人と交わろうとする宇宙人
声を出して話してみても誰も聞いていない。

alien


地球からは遠く離れた宇宙からきて、地球に落ちて、傷だらけの、1人っきりのエイリアンだったジソンくんが、かつて自分の居場所ではないと思っていた地球という場所の中心に1番近いところまで行って、そこにいる君の、1番熱い部分に触れたい。そのためだったら、傷ついてもいいよ。

完全に独自の解釈ですが、私には、彼が歌うvolcanoの在処が、地球の中心のように思えてならず、そう考えた途端に、ものすごく胸が苦しくなりました。

ここまできたら、ジソンくんを、ここまでさせる「you」って誰のことなんだろう…みたいな気持ちに、(少なくとも私は)なってしまったのですが…

ここでさらに大変なのが、これ、答え出てるんですよ。本人の口から。

STAYからたくさんの愛と応援をもらって感謝しているのもあって、この曲を作った。

YouTubeライブより

そうです。STAYなんです。私たちなんですよ…

え〜…こんなでっかくて、重たい愛の歌が、ありますか…そんなものを私たちは今、食べさせられていたんですか…?みたいな…本当に…体調悪くなるのもわかるわ…(自分がこの曲聴いた時寝込んだだけ)


ジソンくんが嘘ついてるとか1ミリも思って無いですし、リップサービスとも全く思ってないですが、それでも私は、この「you」が誰であっても、もっと言えば、人でない何か物であったり
状況であったり、概念だったり、この「you」が示しているものは結局何でもいいんです。

大切なのは、宇宙から地球に降り立って、ずっと1人っきりだったジソンくんが、そのためだったら、地球の中心まで行って、傷つくことさえいとわない、そんな「何か」が、もう今はジソンくんの近くにあるってことなんです。それが、何より大切なんです。


3.愛という呪縛

今まで述べてきたような感想に辿り着いた時に、私の頭に浮かんできた映画がひとつあって、それがスピルバーグ監督の「A.I.」という映画です。

(※以下映画のネタバレを含みます。)

人間を愛するようにプログラムされた子供型ロボット。人間の家族に捨てられてしまった彼が、再び愛されたい一心で本物の子供になる方法を求めて旅に出る。

Netflixあらすじより

ストーリーの詳細は省くのですが、終盤のシーンで主人公は、海底に沈んだ遊園地に辿り着きます。そこで彼は、おとぎ話のピノキオに出てくるブルーフェアリーの彫像に向かって「僕を人間にしてください。」と祈ります。
ピノキオを人間に変えてくれた彼女ならば、自分のことも人間に変えてくれるのではないかと思ったからです。

そしてその祈りは、海が凍り、自分の機能が停止するまで2000年間ずっと続くのでした。

というお話なのですが、このお話を「SF冒険譚」としてみる考え方もあれば、「人工知能について考える、感動大作」としてみる考え方もあります。

しかしもう一つこのこの映画の考え方があって、それが、「愛という呪縛を描いた、ホラー/スリラー」という考え方です。

暗い海底で、主人公の「僕を本物の子供にしてください。」という言葉が、切実に痛々しく、永遠に続くかのように繰り返されるシーンは、わたしの心に強い印象を残しています。

そのシーンを見ている私たちは、本当の子供にはなれない。ブルーフェアリーが願いを叶えてくれるわけじゃない。と分かってしまいます。
それなのに、永遠と祈り続ける。

どうしてそこまでして…と思ってしまうほどの執念に、怖さを感じてしまうから、特にこのシーンが私の記憶に残っているような気がします。

自らを宇宙人と表現したジソンくんと、人間になりたいと願うロボットの主人公を重ね合わせたこと、海底で祈り続けるシーンが、私が今まで述べてきたように地底の果てまで連れて行って、と願うvolcanoの世界観と重なったのはもちろんあります。

しかし、それ以上に、このvolcanoの世界で歌われている気持ちが、相手に向けた愛の大きさのように思えてその実、自分が与えただけの愛を返して欲しい、自分への愛の歌のように聞こえたから、そこに大きな執着を感じて、この映画を思い出したのだと思います。

守るよ。痛くても。君が流した傷は、僕が抱きしめるよ。 
(中略)
すぐに君から逃げ出すあの人たちとは違う
君を抱きしめてあげるよ。


「抱きしめてあげるよ」
こう言っていた歌詞が、サビでは、

君に溶け込めるように 
僕の体を抱きしめて
痛くても僕は It’s okay.


「僕の体を抱きしめて」になり、抱きしめてほしいのは、僕に変わっている。

守るよ、あんな奴らとは違うよ、なんでもするよ
だから見返りに抱きしめてよ。

無償の愛とは逆の、見返りを求める愛。

alienで歌っていた時のような、つらくて苦しい時期を超えて、やっと手に入れた。「You」。

もう絶対に離したくないし、無くしたくない、という、少しの身勝手さと、尋常じゃない執着…。

すごく独特だけど、それと同時にすごく「ハンジソン」らしいな、とも思いました。



4.最後に_地球に落ちた、エイリアンだった君へ


ここまでいろいろと書いてきましたが正直、いくら考えても、結論は「わからない」なんですよね。
それはやっぱり、volcanoという曲が、自分のことについて、生々しさを伴って書いた曲だから。
そしてあまりにも自分のことについて歌っている場合、基本的には作者しか、本当の意味で共感はできないから。

ただvolcanoという曲を通して私がひとつだけ前に進むとしたら、「もうあなたは地球に落ちた、たった1人のエイリアン」じゃないんだね。
ということです。

いつ変わったのか。
それとも私たちが気づかないうちにずっと前から変わっていたのか。
君の心の近くにいてくれる、もしくは近くに行きたいと願う、人や物は、一体何なのか。

そういうことは、ひとつとしてわからないけれど、地球に落ちた、宇宙人”だった”君の歌をこれからは、もっと大切に聴きたいなと思います。



本当に最後になりますが、あくまでこの文章は私が感じた、volcanoであり、ハンジソンというアイドルです。

色々な感じ方があり、それぞれの感じ方が、ある意味ではどれも正解であり、しかし本物のジソンくん以外は、どれも不正解である、とも言えると思っています。

どうか考えのひとつとして受け取って、一緒に考えてくれる方がいたら、嬉しいです。

最後まで見て下さった方がいたのなら、ありがとうございました。


以上でした。

2023.06.12
YouTube500万回再生おめでとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?