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元旅行者の視点から(11)~貨幣価値

何年もの長期間旅行ができた最大の要因は、日本と、旅先の主な国々とで、貨幣価値の差があること。これに尽きます。

為替レートは需要と供給のバランスで決まるので、資源や工業製品やサービス等の価値が高いとされている国の通貨に対してそうでない国の通貨は同じ単位でも価値が低くなり、
結果、現在、先進国と呼ばれる国々とそうでない国々の貨幣価値には差があります。

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その差は理不尽なほどであり、僕が旅行していた90年代当時、
例えば、インドを旅行して1泊ホテルへ宿泊する。100ルピーも払えばかなり快適なシングルルームに泊まれます。大体日本円で300円程度です。

50ルピーでレストランでかなり満足の行く食事ができる。150円。

上記のような宿泊や食事はたまの贅沢程度で、普段は、もっと安いシングルルームやドミトリーで宿泊していたので、大体宿代は1泊30~50ルピー。100円台。食事も10~20ルピー。100円未満。

移動の列車やバスも大体かなりの長距離(車中泊)でも100~200ルピー、つまり数百円。

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日本だとビジネスホテルで5000円、カプセルホテルでも3000円、京都などにあるドミトリー式ゲストハウスでも2000円、日本で外食すると500円で最安レベル、安いと言われる東京ー大阪間夜行バスでも5000円ですから、日本から持って行くお金の価値が倍どころの騒ぎではありません。

インドですと、すごい贅沢はせず、でもそんなにケチケチせず、並みの宿泊・食事・移動手段を取っていると、大体、日本円換算で月3万円ぐらいで旅行できてしまいました。
今は、当時より少し物価も上がっているらしいですが、それでも、当時の倍行くか、行かないか、のようです。

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ネパールやミャンマーは、もっと物価は安かった。
タイへ行くと少し物価は上がり、中国はそれよりもさらに上がり。
それでも、タイで日本円換算月5万、中国で月5~6万といったところが当時の体感的貨幣価値でした。

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中東の国々もだいたいインドの貨幣価値と似たり寄ったり。
トルコがタイと同程度、シリアやエジプトがインド並みに近付き、
イスラエルへ行くと先進国並みにぐっと上がってきますが。

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東欧もおおむねタイ・トルコ程度だったように思います。
西欧へ行くと、日本並み、あるいは、日本よりも高い場合がありました。なので、長期滞在はできませんでした。

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旅行しながら、こんなことを考えました。

今は、この貨幣価値のバランスのおかげで、日本人や欧米人がバックパッカーとしてインドや東南アジアなどへ長期の旅行へ出てこれている。
しかし、いつの日か、将来、この貨幣価値の差が逆転することも全くない話ではない。
その場合、日本にインドやタイなどから旅行者が大挙押し寄せる、そんなことも、全くないとは言えない。
でも今、こんな想像をするだけで、あり得ない感じがするのは、自分がやっている、先進国から発展途上国と呼ばれる国への長期滞在的な旅行という行動が、非常に一方的で、ある意味傲慢な行動であることを表している・・・。

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旅行中、あまり大っぴらな贅沢をする気が起こらなかったのは、そうした引け目をどこかで感じていたこともありました。
旅行中は常に現地の人達からの羨望の眼差しに接しており、それは自分の努力ではなく、自分がただ日本人だということだけで注がれていた視線だったので、せめて、現地の人達の生活レベルには及ばないまでも、できるだけ現地の人達の食生活やその他生活習慣に同化すること、近付くこと、を無意識に心掛けていた気がします。

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2010年代になって、日本に、中国をはじめとしたアジアの国々からの旅行者の姿が目に入るようになりました。

僕自身が旅行していた頃考えていた想像は、僕が生きている間はないだろう、と思っていましたが、その後20年も経たずに、アジアからの旅行者が日本へ来るようになり、驚きました。

当初は富裕層が中心のようでしたが、バックパッカー的旅行を日本でするアジア諸国の人も珍しくなくなり、隔世の感があります。
通貨の格差は90年代頃よりは縮まったとは言え、大体の構造は変わっていないようですが・・・。

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新型コロナウイルスの感染拡大以来、そうした往来は、今のところストップしています。日本へ来る方も、日本から出る方も。

今後、どうなっていくか、見ていきたいと思います。

理想的には、世界の誰もが、行きたいと思えば、どこへでも旅行へ行けるような世界になれば良いと思います。

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https://www.instagram.com/so6.travel90s/

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