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スワローズ現地観戦記 雄平選手お疲れ様でした。そして、ありがとう!
仕事を終えると、いつものように急いで更衣室へ向かった。ロッカーを開け、普段使っているバッグの他に、もう一つ持ってきた大きめのトートバッグから衣類を取り出し、上も下もとにかく着込んだ。
昨日は、暖房がきいている室内にいると暑く感じることもあり、外に出ても寒いと思うような気候ではなかった。
でも、冷たいビールを飲んでいたら寒くなるだろうし、何より体が冷えてトイレが近くなるのがどうしても嫌だったので、笑ってしまうくらい大袈裟な量の着るものを持ってきていた。
「ビールを飲まない」という選択肢はないので…、上にはヒートテックのロングTシャツ・スワローズのロゴ入り半袖Tシャツ・ライトダウンベスト・レプリカユニフォーム・そしてスワローズクルーの入会特典でもらったスタジアムジャンパーを着た。
レプリカユニフォームは一番上に着たかったが、さすがに両腕の部分が合皮素材でゴワゴワしているジャンパーの上に着てみると、「無理をしてる感」が出すぎてしまったので諦めざるを得なかった。
首元の冷えも警戒し、クルーのポイントと交換してもらった燕柄のスヌードも持った。
ズボンの下にはヒートテックの極暖タイツをはき、普段あまりはかない長い靴下をタイツの裾の上からかぶせた。
会社を出たのが18時15分。これまたいつものように野球速報アプリをチラチラ見ながら早歩きで駅へ向かった。
某駅から銀座選に乗り込むと、渋谷方面へ向かう(表記はしていないが)「上り列車」に乗った。上りだから空いているのか、普段乗らないから分からないが座ることができた。
東京の端っこの下町で生まれ育った僕からすれば、浅草〜渋谷間を結ぶ銀座線なんていうのは、どちらの方面に向かおうが「上り列車」という感覚なのだが…。
座席について一息つくと、軽く汗ばんでいることに気づき「さすがに着すぎたか…」と苦笑した。
いろいろなグッズが入っているトートバッグの中に、脱いだスタジャンを雑に畳んで詰め込んだ。
外苑前駅で降りると、いつの間にやら僕が知らない内に改装工事が行われたようで、綺麗になっているだけでなく、通りへ出る道が新しく一本できていた。
道が2本あれば混雑を緩和できるだろうし、何より綺麗でいいなと思った。
通りには人はそれほど多くいなかった。その時点で19時近かったというのもあるだろう。
通い慣れた久々のこの通り。今までのように店の前で弁当や飲み物を売る人の姿が見えないのは規制があるからなのか、人通りがピークを過ぎたからなのか…、僕には分からなかったが、いつもより少し寂しかった。
途中のトイレに寄って用をたす。着いたら着いたで落ち着くどころかやることが多いので、混むことがないここを利用するのはいつものことだ。
さらに少し歩くと、夜を照らす真っ白な照明が目に入ってきて、そして、照明とはまた違う淡く温かみのあるライトに照らされた大きな看板が目の前に現れる。
「明治神宮野球場」
ついにやってきた。2019年最終戦以来、約2年ぶりとなる「神宮球場」だ。2020年シーズンは一試合も来ることができなかったが、2021年レギュラーシーズン最終戦にてようやく現地観戦となった。
現地の様子は動画などでよく目にしていたが、やはり自分の目で見るのは訳が違う。単純に久し振りだからだろう、看板を見たときは感動して、立ち止まり眺めてしまった。
球場内から拍手の音が聞こえてくる。試合はとっくに始まっていたことを思い焦る。チケットを取り出し、急いでゲートヘ向かった。
この日の試合の注目ポイントは沢山あった。僕だけではなく、多くのファンの皆さんにとってもそうだったのでは、と思う。
レギュラーシーズン最終戦
優勝を決めての凱旋試合
試合後セレモニー
村上宗隆選手の二冠王争い
雄平選手の引退試合
大きく分けてもこれだけある。優勝記念グッズを買いたい!という人も多かったのではないか。
対戦相手のカープファンからしても、いろいろあったと思う。鈴木誠也選手と坂倉将吾選手・カープの選手同士の首位打者争い、誠也選手のホームラン王争い、そして、去就が注目される誠也選手をただただ観たい!などなど。
スワローズの先発は、優勝を決めた試合で好リリーフをみせた高橋奎二投手
対するカープは高卒一年目、ルーキーの小林樹斗投手
まず驚いたのは、金曜日の試合ではスタメンから外れ代打1打席のみの出場だった鈴木誠也選手が、四番ライトでスタメン出場だったこと。
誠也選手が争っていた首位打者に関しては、打席に立たないことも一つの策と僕個人は考えていたからだ。
正直に言えば、驚きよりビビりのほうが大きかったか…。
なぜなら、誠也選手が一本ホームランを打ち、村上選手が打てなければ、ホームラン39本でジャイアンツの岡本和真選手とこの二人が並ぶことになる。
そして誠也選手なら一試合で二本とか普通にあり得るので、もしそうなったら村上選手次第では誠也選手が単独でホームラン王となることが考えられたからだ。
他力本願より村上選手が打てばいいだけ、と分かってはいるのだが、誠也選手とは相手ファンからしたらそれほど驚異的で偉大なバッターということだ。
試合は点の取り合いとなる。1回表、カープ打線は高橋投手の立ち上がりをとらえ、坂倉選手のタイムリーヒットと石原選手の3ランホームランで4点をあげると、2回表には小園選手の犠牲フライで1点を追加する。
対するスワローズは3回裏、古賀優大選手と宮本丈選手のタイムリーヒットで2点を返すと、4回裏には西浦直亨選手のタイムリーヒット、塩見泰隆選手が押し出しのフォアボールを選び、さらに相手エラーにより 6―5 と逆転に成功する。
5回表、高橋投手に代わり吉田大喜投手がマウンドに上がるも、西川選手に3ランホームランを打たれカープが逆転。
吉田投手は6回表にも坂倉選手にタイムリーツーベースを打たれ追加点をあげられ、スコアは「ヤ6―9広」となる。
なお、この試合が引退試合となった雄平選手は、6回表からライトの守備につくと、7回裏にまわってきた第1打席でレフトへヒットを放ち、通算安打を881本から882本とした。
最終回、スワローズはカープの絶対的守護神・栗林投手から、宮本選手がライトスタンドへ今シーズン初ホームランをたたき込み1点を返すも、代打青木宣親選手が三振に倒れ試合終了となる。
7―9 でホームのスワローズが敗戦した
敗戦投手は吉田大喜投手で1勝1敗
シーズン最終戦、雄平選手の引退試合を勝利で飾ることはできなかった。また、村上選手は5打数無安打4三振という結果で終わったが、ジャイアンツの岡本選手と並び最多本塁打のタイトル受賞となった。
今日のありがとう まとめ
6回表に雄平選手が守備につくとき、同時にマウンドに立ったのが石川雅規投手だった。
石川投手がリリーフとして登板するということは、自身が2009年から続けてきていて、プロ野球記録の更新も目前に迫っていた連続先発記録が途切れてしまうことを意味していた。
一つ一つの積み重ねを大事にしているという石川投手にとって、これは簡単な決断ではなかったと思う。
だからこそ、雄平選手のためにリリーフとして登板したことはファンから「友情救援」と呼ばれ大きな感動を生んだ。
全ては雄平選手の人柄と、19年という長い間プロ野球選手として戦い抜いてこられた姿勢を見てきたからだろう。
青木選手も言っていた。「練習をやりすぎるのが雄平だと思うんですけど いつも打撃マシンの前にいるような ここまでやりすぎなければまだ現役やってるんじゃないですか?(笑)」と。
とにかく、いつでも全力だったという。
試合時間も4時間6分と長かったが、試合後セレモニーが終わっても感動してしまいなかなか立ち上がることができず、神宮球場を出るときには時刻は23時をまわっていた。それでも多くのファンが駅までの道を歩いていて、赤いユニフォーム姿の人も多く見かけた。
家に着くと、興奮冷めやらぬままシャワーを浴びベッドに入った。
目を閉じると頭の中でずっと、Mr.Childrenの「終わりなき旅」が流れていた。
「高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな」
投手から野手に転向し、フルスイングは代名詞となったが、そういう形で活躍できたことは並大抵の努力ではなし得なかったと思う。
引退会見で「野球とは?」と問われ、「楽しいもの」と答えた雄平選手。
石川投手に「野球少年」と言われたいつでも全力のプロ野球選手。
印象的な本当にいい笑顔でプレーしていた昨日の姿を、2015年優勝を決めたあの一打・一振りを僕たちは忘れない。
個人的な思い出を一つ。2015年優勝を決めた数日後、サヨナラヒットを打ったので雄平選手の記念Tシャツが発売されていたのだが、本人がオフィシャルショップにいきなりユニフォーム姿で現れ「雄平Tシャツありますか?」とスタッフに訊いていたときは驚きのあまり、心の中で「わざわざ買いにこなくても、いくらでもくれるだろ」と思ってしまった…。(笑)
その時、握手をお願いすると快く応えてくれたのだが、しばらく時間が経ってから「左手でしてもらえばよかった!」と後悔したことをよく覚えている。
雄平選手のこれからも続く終わりなき旅を、そして、またいつか会える日を楽しみにしている。
通算成績 18勝19敗 防御率4.96
打率 .291 882安打 66HR 386打点
雄平選手 19年間本当にお疲れ様でした。感動を、ありがとうございました。