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日記一懺悔一
あなたとのセックスの内容が少しずつ薄れてきた頃。
久しぶりに話すと心地よくって楽しくって、どうしても隣にいたくなった。未練が残っていてごめんなんて言われたら、やっぱりわたしのモノにしたいと思ってしまった。枯れかけの恋心に再燃の火種を放り込まれると、すぐに燃え広がる。自分の決心の脆さに笑ってしまう。
記憶は毎日を積み重ねることで遠ざかる。けれども、その記憶にまつわるさまざまのこと(人、もの、歌、香り、景色、等)に触れると蘇り、たちまちわたしを「その時のわたし」に引き戻してしまう。それがわかっているから、怖かった。どうしたってわたしは、あなたが好きで泣いていた、叶わぬ恋に縋って生きていたあの頃に戻ってしまう。いくら夜を越えても、いくら朝を睨んでも。
心に刻まれた傷は毎日を積み重ねても埋まらない。減らない。増えていくだけ。
「お互い強く生きようね」
ってどういうことだろう。
強く生きるってなんだろう。一切合切全てのことに鈍感になって、己の人生における悲しみや痛みや淋しさから目をそらして、諦めて妥協して何も考えないことを良しとして生きていくことを指すのであれば、わたしは一生、強く生きることなんてできない。弱くていい、ぼろぼろでいい。なぁなぁで生き長らえるよりも、ずっといい。
あなたが言う、強く生きるの意味はわかりたくなかった。無理矢理冷やした頭で考える。いつまで経ってもわたしだけ幸せになれないのは癪だから。
俺が彼女では埋められないところを、お前が1人では満たせないところを、お互いの身体で補填し合うのはやめよう。
クリーンな、ただの友達になろう。
俺はお前とは恋愛しないから。
多分、きっとそう。お互いに寄りかかっていた。居心地が良いって危険だ。
ああ、もう少し出逢うのが早ければ、もう少しわたしに耐え性があって綿密に事を進めていたら、或いはわたしがもっともっと自分勝手に強引に心と身体を繋ぎ止める手段をとっていたら。2人が好きと言い合える人生があったかもしれない。今はそう思ってしまう。
わたしたちは終わった。
わたしはもう、あなたへの執着を棄てなければならない。
これが当面の生きる指針。