朝井リョウ『生殖記』②
出張の最終日。
会食を終えて、路面電車に揺られると空しさに襲われた。車窓に映る疲れ切った顔。後から乗ってきた男の大きなため息の連続。大声で話す外国人。冷えた足がつらい。重い荷物のせいで肩が痛い。
今回の出張も悪くなかった。仕事はきちんとこなしたし、新しい情報も入手した。ハプニングにもそれなりに対応した。最終日だって最後の最後まで頑張ったのに、どうしてこんなに空しいのだろう。今日自分は何ができた?とか、この出張で何が残せた?とか。素晴らしい結果なんて、別に望まれていないのに。私