傍聴記録19 世界を駆け回るファッションショープロデューサー 液状大麻密輸裁判

東京地裁
2018年11月20日(火) xxx号法廷 13:00-14:00

平成29年特(わ)第xxxx号 新件
大麻取締法違反 関税法違反
裁判官:徳永正章 書記官:伊藤淳二 検察:西田(女性検事) 
弁護:長沼その他2名 通訳:女性


書記官「ご起立ください。」
裁判官「よろしくお願いします。では開廷します。始めに通訳人の宣誓をしていただきます。では宣誓をお願いします。」
通訳人「宣誓。良心に従って、誠実に通訳することを誓います。」
裁判官「はい。では宣誓したことを伝えてください。」
通訳「(フランス語)」
被告人「頷く」
裁判官「被告人は証言台の前に立ってください。名前を述べてください。」
被告人「アンリ・クリス・マルディーニ」
裁判官「生年月日はいつですか?」
被告人「1955年9月7日」
裁判官「国籍はどこですか?」
被告人「イタリア」
裁判官「日本での決まった住所はありますか?」
被告人「はい。」
裁判官「どこですか?」
被告人「南青山」
裁判官「その先は言えますか?」
被告人「ちょっと紙を見ないとわかりません。」
裁判官「保釈されるにあたって住むこととされている住所ということでよろしいですか?」
被告人「南青山2丁目」
裁判官「職業はなんですか?」
被告人「私はクリエーション、プロデュサー、ディレクターです。」
裁判官「会社の経営ということでいいですか?」
被告人「はい。」
裁判官「あなたに対しては10月20日付で起訴がされています。」
被告人「はい。」
裁判官「起訴状は受け取っていますね?」
被告人「はい。」
裁判官「まず検察官が起訴状の内容を朗読しますので、そこで聞いていてください。」
被告人「はい。」
裁判官「まず日本語で朗読されたあと、通訳がされます。」
被告人「はい。」
裁判官「では検察官お願いします。」

検察官「公訴事実。被告人はみだりに平成30年9月18日頃(現地時間)、アメリカ合衆国において大麻草の商品である液体約4.435グラム在中の航空小口郵送貨物1個を、東京都千代田区小手町1丁目7番8号、ホテル ラマンダ東京、被告人宛に発送し、同月20日、同貨物を千葉県成田市所在の成田国際空港に到着させたうえ、同空港関係作業員に、これを航空機の外に搬出させて、日本国内に持ち込み、もって大麻を本邦に輸入するとともに同日、同貨物を東京都江東区古木場13丁目4番1号、BGK株式会社東京ゲートウェイ保税蔵置場に搬入させ、同月25日、同所において、東京税関監視部職員による検査を受けさせ、もって関税法上の輸入してはならない貨物である大麻を輸入しようとしたが、同監視部職員に発見されたため、その目的を遂げなかったものである。罪名および罰条、大麻取締法違反、同法24条1項、関税法違反、同法109条3項1号、69条の11条、第1項1号。以上です。」

裁判官「いま読まれた事実についてこれから審理します。始めに3点注意します。1つめですが、あなたには黙秘権が保証されています。この裁判でも色々な質問がされます。答えたくない質問には答える必要はありません。ずっと黙っていても構いませんし、特定の質問にだけ答えても構いません。そういう権利がありますから、あなたが質問に答えないというだけで不利に扱うことはありません。2つめですけれども、あなたが質問に答えたり、自分の言い分を述べたりすることは自由です。ただ、あなたがこの法廷で述べたことは有利不利を問わず、この裁判での証拠になります。発言をするときにはよく考えて発言をしてください。最後3番目ですが、弁護人がついています。審議の途中でも困ったことがあれば、いつでも相談して構いません。わかりましたね?」

被告人「はい。」
裁判官「それを前提に尋ねますが、いま検察官が読み上げた事実、どこか違うというところはありますか?」
被告人「その通りです。」
裁判官「弁護人のご意見うかがいます。」
弁護人「被告人と同意見です。」
裁判官「はい。弁護人も被告人と同じ意見だと述べました。では元の席に戻って聞いていてください。」

裁判官「では検察官、冒頭陳述と証拠請求をお願いします。」

検察官「はい。検察官が証拠による証明しようとする事実は以下の通りです。まず被告人らの身上経歴等ですが、被告人はベルギー王国で出生し、国籍はイタリア共和国であります。被告人はフランスの専門学校を卒業し、ファッションショーのプロデュースなどを業務とする会社を経営しておりました。被告人は本邦では住居不定でした。被告人は本邦における前科前歴はありません。第二に犯行に至る経緯および犯行状況等です。被告人は平成 30年9月15日頃、米国ロサンゼルス市内で、交際相手や知人らと食事をした際、知人が被告人の交際相手に対し、大麻製品などと説明をしたうえでスプレーボトルを渡しました。被告人は同月16日頃、自身の荷物をロサンゼルスから日本に郵送することにしました。その際に被告人は大麻製品を日本に持ち込むことが違法であることを認識しておりましたが、スプレーボトルに入った大麻製品を日本で使おうと考え、それを日本に発送するボストンバッグに入れて、アシスタントに発送手続きを指示し、公訴事実記載の犯行におよびました。本件は同月25日、東京税関監視部職員による検査により発覚したものであります。第三にその他情状等です。以上の事実を立証するため、証拠等関係カード記載の関係各証拠の取り調べの請求いたします。」

ここから先は

8,403字

¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?