ポッドキャストを愛するように、エッセイを愛する。
小説が読めなくなって久しい。物語に没入する、ということができなくなってしまった。その代わり、ビジネス書やルポルタージュといったノンフィクションを好むようになった。なかでも好きなのは、エッセイ本だ。語り口や文体、日常を切り取る視点に著者の個性が表われる。だから特定の1編が好きになるというよりは、何編も読み進めていくうちに著者自身を好きになっていることのほうが多い。
そういう意味では、ポッドキャストのハマり方に近い。ポッドキャストもいくつもエピソードを聞いているうちにパーソナリティを身近な存在に感じて、いつのまにか好きになっている。いちばんよく聞いているポッドキャスト『ドングリFM』はまさにそうだ。narumiさんとなつめぐさんの不思議な魅力に取りつかれてから、もう何年も経つ。エッセイもポッドキャストも、コンテンツを通じて発信者に強く惹かれていく。
今年はドングリFMの有料コミュニティ限定コンテンツのなかで、コラムのようなものを何本か書かせてもらった。そんな縁もあった2021年なので、このnoteでは、ポッドキャストと同じように私が愛してやまないエッセイを紹介したい。(ほんのりドングリFMを絡めながら)
益田ミリ 『今日の人生』シリーズ 【書籍】
日常のふとした気づきや、心の動きを数コマで描いたコミックエッセイ。何か特別なことが起きるわけではないけれど、じんわり心にしみる。”今日の人生”というタグラインがあることで、作品全体がぐっと引き締まる。シンプルな線だけで感情の機微を表現しているのも魅力。Web連載中で、最新話は下記リンクから読める。
木皿泉 「木皿食堂」シリーズ 【書籍】
『すいか』や『野ブタ。をプロデュース』『Q10』など、テレビドラマの脚本を多く手がける著者のエッセイシリーズ。時事や日々の出来事を自分の体験に引き寄せて一度咀嚼し、そして昇華させていく。研ぎ澄まされた文章は読んでいて気持ちがいい。現在までに第4集まで刊行されている。
佐藤雅彦 『考え方の整頓』『ベンチの足』 【書籍】
「バザールでござーる」や「ポリンキー」「ドンタコス」などなど誰もが一度は耳にしたことのあるCMに加えて、「ピタゴラスイッチ」や「だんご3兄弟」といったNHK教育番組も手がけた有名クリエイターのエッセイ集。天才の頭の中を覗き見できるという意味でも貴重。毎回、読後に"思考の快感"があり、読み終えるのがもったいないと思ってしまうほど1編1編に読み応えがある。
yu koseki 『 #頼りない話 』 【Web】
ドングリFMにゲスト出演したこともある小関悠さんによるニュースレター。世の中に対して一定の距離を保ちつつも、ウィットに富んだ文体がいい。ちなみに「ニュースレター」とは、メールアドレスを登録しておくと週に1〜2度、メルマガのようにエッセイが届く。アーカイブはされず、登録以降のエピソードのみ閲覧できる。
カツセマサヒコ 『それでもモテたいのだ』 【Web】
ドングリFM narumiさんの元ボクシングジム仲間であり、なつめぐさんとは公園でサシ飲みする仲である、ライター/小説家のカツセマサヒコさんによるエッセイ。氏は10代〜20代女性に人気があるイメージだが、この連載では同世代男性に身に覚えるのあるエピソードが出てきて、なんだか同志のように感じてしまう。都度、わかりみが深い。
ヒコ 『テレビにはまだワクワクがある!』 【Web】
ドラマやお笑い、映画、舞台などポップカルチャーのレビューを執筆しているブロガー・ヒコさんによる連載。毎回ひとつのテレビ番組が取り上げられるが、連載第1回目ではドングリFMとも縁深い、ポッドキャストをテーマにしたドラマ『お耳に合いましたら。』。ヒコさんならではの深い考察とともに、愛に満ちた眼差しが心地よい。
以上、6作品。
結びに:思考のリフレッシュに、エッセイを読もう。
エッセイは適度な文章量かつ1話完結のため、数分で読めるわりには満足感があるし、不思議と思考もクリアになる。だから気分転換にちょうど良く、仕事の合間とかTwitterの毒気に疲れたときの解毒にも使える。また、連続再生しがちなポッドキャストの"耳休め"にも最適なので、この年末は音声コンテンツとともに、ぜひエッセイも楽しんでみてほしい。
このエントリーは、ドングリFMリスナーの「Advent Calendar 2021」という企画の20日目の記事です。