携帯電話勧誘業務について、つれづれ…。(ぷんちょこの、つれづれ話)
待ち合わせの前に駅前の喫茶店へ。
窓の外の少し向こうを見やれば、携帯電話会社の看板の近く、法被を着用したスタッフさんが通り過ぎる人に声を掛けて勧誘している。
既にすっかり手に馴染んだ相棒の画面を眺めながら、視線を上げず足早に通り過ぎる人。
仕事とはいえ、何度も何時間も繰り返しては、心も徐々に擦り減るだろう。
昔、日払い制の人材派遣会社に登録していて、頻繁に街頭のティッシュ配りとチラシ配りをしていたこ
人間観察が好きなのもあり、基本的には単独で、極力会話せずに済む業務とあり、個人的には性に合っていたと思う。
さらには解離で他の自我状態が出ていても誤魔化しやすかったというのもある。(遁走や物損がなかったのも幸運でした…多分、多分)
ポケットティッシュだと、実用的なのもあり、比較的受け取ってもらいやすい。
チラシは、店名を言いながら勢いよく差し出すと反射的に受け取ってもらえる確率が上がる。
集団だと、一人が受け取ってくれると間髪入れず他の人にも差し出すと受け取ってもらいやすい。
それでも、街頭の片隅に佇み、気分的には、年齢性別関係なく「マッチ売りの少女」である。
それで立場を分かった気になっては決していけないのだけど、様子を見た上で怪しくなさそうなら、街チラシとティッシュを受け取る際に「お疲れ様です」と言うようにしている…見張り役と思われていませんように。
クレジットカードのカウンター勧誘業務にも入ったこともあるのだけど、まったくもって戦力外で、自己嫌悪に陥って泣きながら業務を終えたことを憶えている。
だから、単純に契約業務をこなす方々を尊敬してしまう。
その後入った作業所で、訪問販売の再訪アポは比較的とれていたので、環境によるものが大きいのか、我ながら不思議なものである…。
街頭の配布業務だけ(立派なお仕事ですよ)ならまだしも、街頭での契約業務となると、記入や手続きの時間、金銭と個人情報も絡んでくるし、「契約完了です、はいハッピーエンド」と気持ちに区切りをつけられない問題でもある。
店舗契約はお客様が意思を持って来てくださるけど、街頭での契約となると、言い方は悪いが〝自然の中のハンティング〟さながらである。
「こんにちは!今お時間よろしいですか?
今、キャンペーン実施中でして、我が社のこちらのプランに乗り換えていただきますと、とってもお得にご使用いただけます!
はい、ありがとうございます!こちらへどうぞ。
それでは、こちらの用紙に必要事項とお支払い方法とサインをお願いいたします。はい、はい、はい、結構でございます!
こちらがお礼の品のポケットティッシュでございます。はい、この度はありがとうございました!」
手に馴染んだ相棒。
相棒という名の媒体の中に蓄積されたデータや履歴。
相棒の画面を通して得た、感情か知識か、曖昧模糊とした想い出のようなものたち。
『アミニズム』…という便利な言葉があるのだけど、その一言に無理に凝縮しようとすれば、きっと一言が圧縮熱で破裂してしまいそう。(その一言の最後の使い手になれる?)
乗り換え、乗り換え、乗り換え…あの会社へ、あの機種モデルへ。流行り、利便性、見栄…理由はそれぞれ。
携帯電話をはじめ、機器に不可逆的な何かを感じる温度に個人差はあろう。
真新しい機種、新しくなったプラン、データ上の数字で確認出来る容量。
空気のような量子、相棒の一部。
スタッフさんはスタッフさんで、契約完了後の手続きを済ませ、次の契約者に巡り合うまで、神経を擦り減らすハンティング…じゃなくて、勧誘業務へと戻り繰り返す。
勤務時間が来るまで、今日も、雑踏の風景の一部になりながら。
…待ち合わせ直前の駅前の喫茶店で。
窓の外の少し向こうを見やれば、携帯電話会社の看板の近く、法被を着用したスタッフさんが通り過ぎる人に声を掛けて勧誘していく。
お疲れ様です、ご自愛ください。
ぷんちょこ