有価証券報告書の虚偽記載の罰則について
日産のゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで逮捕というニュースが出ました。具体的には、有価証券報告書における役員の報酬金額の虚偽記載ということです。
有価証券報告書に虚偽記載を行うとどのような罰則があるのでしょうか。
金融商品取引法
刑事罰
刑事事件として扱われます。具体的には、会社は、証券等取引委員会に報告をする、または検察庁に告訴・告発をすることで事件化します。証券等取引監視委員会は告発を行い、検察が操作・起訴し、裁判所が判決を下します。処罰は以下の通りとなっています。
まず、行為者についてですが、重要な事項につき虚偽の表示があるものを提出した場合、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとのことです。(金融証券取引法197 条1項1号)
また、法人にも罰則(両罰規定)があって、その法人に対して7億円以下の罰金刑を科すとのことです。(金融商品取引法207 条)
課徴金
金融商品取引法は刑事罰の他に課徴金制度についても記載があります。
内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、第一号に掲げる額(第二号に掲げる額が第一号に掲げる額を超えるときは、第二号に掲げる額)に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
(金融証券取引法第172条の4 一部抜粋)
具体的には、証券取引等監視委員会の勧告に基づいて審判手続を行い、金融庁が判断するようです。
金額は第一号と第二号のうち大きい金額となります。
具体的には、6百万円と発行する算定基準有価証券(=株式など)の市場総額の総額に10万分の6(6/100,000)を乗じて得た金額のうち大きい金額です。(金融商品取引法172 条の4)
損害賠償
金融証券取引法では、発行会社と取締役等と双方に対しての損害賠償請求が可能なようです。
発行会社と役員等は有価証券(=株式など)を取得または処分した者に対し過失責任を負います。
この責任が生じるのは、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときとされています。また、金額は、虚偽記載等により生じた損害となっています。(金融商品取引法21条の2)
なお、監査法人は経理の状況より後ろが監査対象であるため、そこの部分に虚偽表示等がある場合に責任を負います。これは、有価証券報告書の虚偽記載等について故意または過失がなかった場合(=適切に監査が行われていた場合)免責されます。
金融商品取引法以外の規定
会社法
取締役は会社に対し善管注意義務を負っています。虚偽記載等は、善管注意義務違反に当たると思われます。そのため、423条1項の任務懈怠責任の追求を受ける可能性があります。また、株主代表訴訟(847条)の対象ともなりえます。
上場規定
有価証券報告書に虚偽記載があり、かつ、その影響が重大であると証券取引所が判断する場合、上場廃止となることもあります。
具体的には、まず監理銘柄となり、審査を経て、上場廃止となる場合には整理銘柄となるそうです。