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手段が信じられないのに、結果を信じろというんですか (インボイス雑感)
仕事が税金関連でそれとは別に副業(この手の話題の中心になってる印税を貰う文筆業)なので少し真面目に考えてみましょうか。
どうもインボイス反対派もそれを批判する側もかなり感情的になってる印象ですので。
①今までは「脱税」だったか?「益税」は無かったか?
免税点制度というのは、要するに売上(細かい話をするキリがないので売上と称します)が一定以下の事業者は小規模だし事務負担とか大変だろうから消費税を納めなくてもいいよ、というシステムです。
時々、免税業者は脱税をしていた、などと言う批判を見かけますが、これは全く違います。
システム的に免除されてただけなので、脱税ではないです。
もし、売上が1000万超えているのに、超えてない様に売り上げを調整していたら脱税ですけど。
一方で、これはあくまで政策的に小規模事業者の納税義務を免除しているだけなので、原則論に沿うなら全員が納付すべきとも言えます。
なので、今まで益税、というか、消費税を免税にされていた利はあります。なので、得はしています。
ただし、繰り返しますが
それは悪ではないですし、脱税でもありません。
小規模事業者は脱税をしていた、というのは適切ではないですが、制度によって益を得ていたという面は間違いなくあります。
免税点制度が無ければ納税額はあったわけですからね。免税店にしても1000万という基準は謎ですし。
なので、この論点についての結論は、
脱税ではないが、政策的配慮による利益は受けていた。
というのが適切でしょうね。消費税は預かり分ではないから益税はない、という主張は的外れというかごまかしだと僕は思います。
つーか、免税って読んで字の通り、「税金の免除」なんだから、その分得はしてるでしょ。其処は認めましょうよ。
②事務負担が増える?
これはさほど増えないと僕は思います。
仮に年間で印税を550万円(消費税50万円)を貰っていた人が居るとしましょうか。
その人の税金の計算方法は、簡易課税だとこう。
550万円×100/110(税抜きに戻す)×10%(消費税率)=50万円
50万円×50%(簡易課税割合)=納税額25万円。
これで計算終了です。
簡易課税は特殊な業態を除いて、小規模の場合ほぼ確実に本則課税(原則的計算)より有利ですから、これで事足ります。
本則にしても、今まで確定申告をしているなら、領収書を集めたり経費の区分とかしてるはずですから、それから比較的簡単に消費税は計算できます。
膨大な事務負担が増える、と言ってる人が居ますが、消費税のために別の集計をやる必要はありません。
なお、私は資料収集なんてしてない!帳簿なんて付けてない!という人は、消費税とは全く別種の問題になります。
どこかの脱税社会学者さんのように、4年間確定申告を怠った挙句税務署に踏み込まれないようにしてください。
個人事業者にとって確定申告は義務です。
ということで、膨大な事務負担が新たに増える、というのは聊か誇張が過ぎるでしょう。
また上記の計算を見て頂くと分かる通り、収入の10%が納税でとられる、というのも誇張表現です。
③すべての小規模事業者、皆に影響がある?
言うほどないと思います。
まず、完全な小売業、たとえば街の八百屋さんとか定食屋とか、そういう個人客のみが相手のところは登録する必要は無いでしょう。
なぜなら、一般家庭の人が八百屋で買ったキャベツを家庭で使う分には消費税を引く必要がないからです。
恐らく一般客相手の小売業者さんとか飲食店でしないところも相当数あると推測します。
接待とか領収書を斬るケースが多い店はするでしょうね。
また、アルバイト、パートタイムにも影響はありません。
彼らは給与所得者だからです。給与所得者はインボイス関係ないですから。
インボイスにより大きな影響を受けるのは、
法人等の事業者相手を主たる顧客とする売上1000万円以下の小規模事業者、
です。
ちなみに僕も影響を受ける立場です。法人から印税貰ってますから。
◆
ここまで、インボイス反対論において話題に上りがちな点について検討してみました。
僕個人はインボイスには賛成しません。これは単に面倒だからです。
今のままでも不都合ないでしょ。消費税が10%&複数税率になって3年強、インボイス無しでやってきましたけど不都合ありました?
この制度、必要なくないですか?
とはいえ、インボイス反対派の言説はいかにも雑です。
益税なんてものはない!不当な小規模事業者への負担押付けだ!事務作業が増える!パートやアルバイト、あらゆる小規模が影響を受ける。
上記の通り、いずれも正しいとは言えません。
インボイス反対の漫画を描きました。
— tii (@winter5515) June 10, 2022
アニメや漫画やゲームや舞台や小説や、推しに生かされてる全オタク読んでください!(1/4)#私の未来にインボイス制度はいらない pic.twitter.com/A7M89ZNzDE
(https://twitter.com/winter5515/status/1535160860884480000より引用)
私達は無垢な被害者!悪い国が我々を搾取しようとしている、という自分を被害者に置いた二元論は、残念ながら筋悪です。
だって「被害者」ではないですから。
身内に流布する分にはいいでしょうけど、外部からの広範な支持は得られない。
世論を動かそうとするなら、必要なのは身内の共感ではなく、広く世間に支持される理論です。
インボイスについて「免税で得してたくせに」「免税事業者なんか趣味に毛が生えたようなもんだろ、さっさと商売畳めよ」的な意見も見た。線引きして対立軸を作って分断するやり方って思った以上にみんな乗っちゃうんだね。なぜか強者の側につく同じ小売の個人事業主も。次のステップは消費税率UPなのに
— 札幌の古書店ビーバーズブックス 月水定休 古本レコード買取中 (@beaversbooks) June 11, 2022
(https://twitter.com/beaversbooks/status/1535627818184212480より引用)
これって多分、自分より下だと思うやつが少しでも得をすることが許せないみたいな意識があるんだろうな。生活保護へのヘイト感情みたいなものも一緒かね。不正受給はもちろんダメだけど、あれ年間170億円とかだった気がする。一方で予備費の使途不明11兆円は見ぬふりなのかという。桁違いなのにね。
— 札幌の古書店ビーバーズブックス 月水定休 古本レコード買取中 (@beaversbooks) June 11, 2022
(https://twitter.com/beaversbooks/status/1535644103563563008より引用)
こういう意見も見ますが、強者の側につくとか、下に見てるとか関係ないんですよね。
そもそも現時点で納税義務者である人からすれば、インボイス導入は殆ど負担にはなりません。登録番号とって、請求書に番号を入れるだけですから。
インボイスって、すで課税事業者の人からすると、あまり関係ない論点なんですよ。
なぜインボイスに反対しない!強者の側につくのか!と言われても、消費税を廃止しようというなら兎も角、インボイス導入をやめよう、というのは彼らにとっては大して影響がない。
それに、例えば年収1500万円の飲食店とかできちんと帳面付けて消費税を納税している人からすれば、我々は「被害者」だ!不当に消費税を課せられようとしている、とか言われたら、何言ってんだコイツってなりますよ。
自分より下の相手を叩いているんじゃなくて、不当に被害者ぶってるから嫌悪されているわけです。
それに、まるで来年から即全員納税義務者になるように言われてますが、10年間は移行期間がありますから、それも正しくはない。
納税義務者にならなかったら、取引相手から即切られるというケースは恐らく稀でしょう。
日本人の国民性において、賛同を得るために必要なのは
— akoustam (@akoustam) June 13, 2022
スジを通す
こと。クリエイター保護だの、益税は逆進性緩和の為だの言ったところで、元が「消費者が国に払ったと思っている消費税を、国に納めず自分の収入にしていい制度を継続して欲しい」というスジ悪の主張では賛同されるわけがない。
(https://twitter.com/akoustam/status/1536188885176582144より引用)
もし僕がインボイスに反対するなら、複数税率の方に文句言って論陣を張ります。
インボイスの導入はあれが直接的な原因ですが、計算や確認が面倒極まりない。本当に止めてほしいです。
総額表示になって益々軽減税率の恩恵は感じられなくなりました。
とはいえ、これを進めると恐らく食品販売業、スーパーとかの業種の大幅増税になるので、絶対に通らないんですが。
◆
確かに、今までなかった負担が課されるのは「被害」に感じるのは理解できます。
しかし、それは「被害」ではないんですよ。今まで免除されていただけです。それはズルではないし脱税でもない。
脱税ではないが、免除は受けていた、利益はあった。だって免税点制度が無かったら納税負担はあったわけですから。
それを無かったことにして、自分たちは搾取される被害者、という言い草は流石に支持を得られるとは思えません。
それを認めて理を説かないと、多くの人の支持は得られない。ひいては世論を動かすことも出来ません。
堂々とそこは認めるべきでしょう。
免税点制度は益税の側面はあった。しかし、これは逆進性の高さを鑑みた小規模事業者への保護であり、その要請は変わっていない。
インボイス導入による事務作業及び納税負担は我が国に多くいる小規模事業者にとって新たな負担になり、小規模事業者のみならず国民生活に影響する。
一般企業にとってもインボイスの事業者登録、適格請求書作成のための事務負担やコストは膨大である。
また、適格請求書は会社ごとにかなり多様な形態となるため、運用開始後にも確認する側にもかなりの負担を強い続ける可能性が高い。
これらの側面に加え、インボイス導入による従来の課税事業者からの徴税額への影響は皆無と思われる。
現状の制度で問題なく、事業者に無意味な負担を強いるのみである。
よってインボイス導入は止めるべきだ。
こう主張すべきではないでしょうか。僕ならそうしますが。
自分の意見が正しい、有意義だと思うなら、フェアに語るべきでしょう。
問題があるところを隠さないといけないと支持が得られないなら、それは正しくはないですよね。ていうか、自覚があるから隠してるのでは?
フェアじゃないのが悪いとは言わないけど、嘘をつきながら被害者ぶるのは如何なものかと思います。
◆
これに限らないのですが、被害者属性、いわゆるかわいそうランキングを押し出して共感を得る手法は、極めて強力です。
しかし、強力すぎるがゆえに理の構築が疎かになる印象です。
SNSでイイネを集める分には、国は小規模事業者から税金をむしり取ろうとしている!私達はかわいそうな被害者(ぴえん みんなそう思うでしょ!という呼びかけでいいんですよ。
でも、本当に制度を動かそうとするなら、共感を集めて支持を拡大するのと同じくらい、世間を説得する理を構築することが必要です。
それを怠れば、理が必要な場面で行き詰る。
共感性でのゴリ押しだけではだめなんですよ。
上記の例で言うなら、収入1500万円で消費税を納税している人を説得しなければいけない。
強者の側につくのか!私達を下に見ている(ぴえん なんてこと言えば状況は悪化するだけです。
かわいそうランキングで共感を集める分には、自分の落ち度とかは隠して自分は無垢の被害者、相手は悪の加害者という構図を作るのがセオリーです。
でも、理の話をするときには、自分の落ち度とかそういうものも認めた上で、なお世の中の支持を集められる言葉を用意しなくてはいけない。
世界を変えると言う事は共感と理論の両輪が必要だと僕は思います。
……というか、インボイス自体は相当前から話があったというのに………なぜ今更大騒ぎするの????
いくらなんでも遅いよ。