いいものが常に認められるとは限らない(都知事選雑感)
都知事選が終わりました。
現職の小池氏が安定した強さを発揮するのは予想通りでしたが、蓮舫氏が3位に沈み、2位に石丸氏が入ってきたのはかなり衝撃的でした。
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リベラル勢力結集という感じで連日Twitterでは #蓮舫流行ってる とか #蓮舫一択 とかそういうハッシュタグが流れてきて、なんとなく勢いもありそうでしたけど、蓋を開けてみればよもやの展開で3位転落。
敗因は何かというと、まあ色々とあるんでしょうけど、端的に一言で表すなら、
蓮舫氏推しのJ・リベラルの皆さんが有権者を見下してたから
だと思うんですよね。
選挙とは正しいものが勝つのではなく、票を集めた人が勝ちます……当たり前ですけど。
そういう意味では選挙は
自分を推してくれる応援者を増やすゲーム
と言ってもいいと思います。
この点でスポーツに近いんですよね。応援の輪を広げるのが勝ち筋。
ただスポーツは不人気でもチームが強ければ勝てますが、選挙はそうはいかない。応援団の数がそのまま戦力になる。
では、応援してもらうためにはどうするか?
これは色んな方法があって、人間的な魅力をアピールしたり、能力の高さをアピールという曖昧なものもありますし、自分を選んでくれた暁にはこういうメリットがあります、という実利をアピールするの良い。
どれを選択しても構いませんが、自分の「良さ」をアピールして応援してもらうという点では変わりません。
応援とは支持と言い換えてもいいでしょう。
そして逆はありません。
分かってもらう、応援してもらう
必要があります。
いいものは黙っていても認められるはずだ、認められて当然、なんていう姿勢ではお話にならない。
途轍もないカリスマか、だれもが認めるくらいに恐るべき有能の士ならそれもあり得るかもしれません。
でも普通はそんな人いませんので、現実的には後者はありえない。
天文学的な年棒を得て、現役にして既に伝説となっているオータニさーんだってファンサービスするでしょ。
応援してもらうということはそういうことです。
ちなみに、この理解してもらうというプロセスをすっ飛ばして勝てたのが、民主党政権への政権交代です。
ただ、あれは自民党がグダグダだったとか、民主党というかリベラルのポンコツぶりが周知されてなかったとか、マスメディアが今よりはるかに強かったとか、そう言う要素が噛み合ったたった一度の大波です。
あの時から時代は流れ、いろんなものが変わりました。
支持率80%というあの波はもう来ないでしょう。
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話を戻します。
応援団を増やすうえで一番やってはいけないこと。
それは上でも書いた通り、他者を見下すことです。
……と書き出そうと思ったら、蓮舫氏推し陣営から愚民とかいうワードが出てきてひっくり返った。
……え?マジなの、このtweet?
(https://x.com/YadaMakiko/status/1809921341841170526より引用)
勝手に実証が転がってくる暗黒SNS。
J・リベラルのインテリの皆さんは基本的には大衆を愚民だと見下している。
でも、あいにくと大衆はJ・リベラルの皆さんが思うほど愚かではないので、こいつ僕のことを見下してるな、というくらいは察します。
そして、
自分を見下している人に好意を持つ人はいません。
選挙は票を集めた人が勝つルールのゲームなので、こうなった時点で敗着への道なんですよ。
対立陣営の支持者に、お前らは騙されてる!愚民だ!肉屋を支持する豚!と見下したり罵ったりするのはスカッとして気持ちいいでしょう。
でも選挙と言うゲームでは何の得もありません。
(https://twitter.com/yoshilog/status/1808175918222876867より引用
騙されている人がいたら、騙されていることをあざけるのではなく、丁寧に騙されていることを話して、そうだったのかと納得してもらい自陣営に引き込まなくてはいけない。
それが選挙に勝つ道です。
はっきり言いまして、市井の泥を撥ねながら日々を過ごす人からすればLGBTも神宮外苑も夫婦同姓もどうでもいいんですよ。
それよりも自分たちの仕事とか景気の方が10000倍重要です。
……意識がお高いJ・リベラルのセンセイからすれば、ゲスで世俗的で短絡的に映るでしょう。
でも、そういう人がいることも認めたうえで取り込まなければ選挙には勝てない。
そもそもですね、愚民でも一票持ってるんですよ。
愚民の票も、知性高きリベラル様の票も、インフルエンサーの芸能人も同じ価値です。
一人一票とは一人につき一票ということなんですよ(小泉進次郎風構文)
(https://twitter.com/moriizumii/status/1811656610076590149より引用)
「群れないと何もできない」人たちを思いっきり見下してますけど、群れないと何もできない人10人の票と、街角に独り立つ孤高の革命者の1票は、前者の方が10倍強い。
一人一票であるかぎり、見下しきっている愚民をも取り込まないと選挙では勝てない。
それが残酷な現実です。
「革命家」の一票を革命家補正で10倍カウントしたり、愚鈍なネトウヨから選挙権を取り上げるにしても、その法律を作るためには、まずは一人一票にルールで選挙に勝たないといけない。
都議選とかで下位に滑り込むことを目標にするなら外へのアピールは不要かもしれません。
でも首長選のような一位以外は敗着のルールならそんなことはそれでは勝てません。
選民意識はJ・リベラルの宿痾なので快癒はしないと思います。
でも、せめて隠したほうがいい。
繰り返しになりますが、そういう層にアピールして自分の方を向いてもらわなくては勝てないのですから。
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上で選挙をスポーツに例えましたが、応援する人も二つの層に分かれます。
一つは移り気でライトなファン。
もう一つはガチの応援団です。
ガチの応援団の振舞はライトファンに大きな影響を与えます。
応援団がライトファンに老害風吹かせていてはライトファンが逃げます、
そういう意味では本人と同じくらい……むしろ本人以上に応援団の態度も大事なんですよね。
今回の蓮舫氏について言うと、本人より応援団が足を引っ張ったな、と言う感はあります。
見下しオーラ出しまくりなのって、本人より応援団側ですよね。
2位に対してこんなこと言ったら絶対ダメでしょ。
次の選挙で自分達に投票してくれるかもしれない浮動票に向けてこんなことを言うのは、百害あって一利なし。
身内の飲み会で愚痴るくらいにしておきなさいよ。
それにこれ。
(https://twitter.com/miroku_cat/status/1804736411284676729より引用)
(https://x.com/bakanihakaten35/status/1810196479153418551より引用)
これもですけど、少し考えてみてください。
某候補が、これは俺の青春時代の曲です!とかいって、
トーキョーの未来は!シンジ!シンジ!世界がうらやむ!シンジ!シンジ!
とか皆で歌ってたらどう思いますか?
普通にドン引きですよ。
こんな踊りでライトファン層の支持者が増えると思うなら、見下しの態度も合わせて色々と絶望的だと思います。
ていうか、勝つ気あるのか?
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ただ、J・リベラルのセンセイ方が、なんでこんな見下した言い方をするのか。
投票してください、この人はいい人なんですよ、と良さを分かってもらうように丁寧に説かないんだろう、というのは推測できます。
彼らからすれば
自分たちは正しい
のが絶対不動の真理なので
正しい話を理解しない相手が悪い
となるんですよね。
極端な話、1+1は1だよ、ということを分かってもらうために頭を下げる人は多分いませんし、1+1=2を理解してくれてありがとうと言う人はいません。
彼らの内面は恐らくこれに近いのでしょう。
自分達が正しいのは、1+1=2とか、太陽が東から昇る、くらいに当然なので、その当然すぎることを理解してもらおうとする、というのは彼ら的にはありえないわけです。
多分マジで、
俺達はこんなに正義なのに、なんであいつらにはそれが分からないんだろう?
くらいに思ってるのではないかと。
ていうかあの人たち、自分が正しいが極まっていて、頭下げたりお願いしたりするのすごい苦手でしょうね。
感謝とかするのも嫌いそうだし。
しかし、「自分は正しい」というのは、思想の左右とか関係なく、程度の差はあれ誰でも持ってる思考ですけど。
正しい思想を皆に分かってもらおう、
と考えるか
これは正しいのだから分かって当然、
と考えるかは極めて重大な分岐点だと思います。
後者になったら、分ってもらうための工夫をしなくなるし、他責思想まっしぐら。
人を愚かにする猛毒だと思います。
選挙に勝つためにはどうすればいいのかを内省し工夫するようなJ・リベラルが現れたら脅威ですね。
とはいえ、そう言う人はいるかもしれないけど、集団としてのJ・リベラルはそう言う存在を表には立たせることはしないだろうとは思います。
異端として内部粛清されそう。
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蓮舫氏についてばかり書いているのもアレなので、他の方についても。
ひまそらあかね氏、約11万票獲得。
メディア露出皆無、かつ街宣とかポスター張りのリアルへの展開一切なし。
ということは、いわゆる風とか勢いとかの気紛れな浮動票がほとんどなしでこれだけの票を集めたという事なんですよね。
これはマジで凄い数だと思います。
個人的には10万票くらいとってほしいけど、実際は2万くらいかな、と思ってました。
しかも言動でいろいろと毀誉褒貶あるにも関わらず、それを踏まえてなお支持する人がこれだけいた。
きわめて強い支持基盤を持っているということが数字で表れた形ですよね。
僕自身はTwitterでブロックされてますが、社会正義で偽装したNPOの会計の杜撰さという面に光を当てたのは巨大な功績であると思います。
それに、現在の一神教ポリコレの最大派閥フェミニズムと正面対峙するならあの強さは必要です。
強くて人格者、なんて理想的な人は残念ながら創作の中にしかいません。
強い勢力に対峙するには強い心が必要で、その強さは時に他にも突き刺さってしまう。
どっちを重視するかって話です。
安野氏、約15万票獲得。
こちらも地盤も組織力もなし。
見た感じ他候補へのディスとかをせず、政策を訴えるのに専念した運動を展開したようで、正攻法で15万票以上を取れたのはこれまた素晴らしい。
個人的には、この方の得票数は東京の有権者のリテラシーの高さを示したと感じます。
街宣とかで余程人を引き付けるものがあったんでしょうね。
ただ、ひまそら氏、安野氏はご両人ともに優秀っぽいですが清濁併せのみ各方面の利益を調整する政治家にはあまり向いてなさそうな印象でもあります。
とある方面から聞いたのですが、鳩山氏は学者としては極めて優秀な人だったそうな。
政治家としては……まあ。
なので優秀であることと政治家としての素養があることは別です。
それこそ小池氏あたりが登用して活躍の場を与えてほしいなとは思いますが……ひまそら氏については無理か……どう見ても不倶戴天だよね。
石丸氏、165万票獲得。
これほど票を集めるとは思いませんでした。
組織力はこちらもなさそうだったし、東京での政治的実績はなし。
首長としての実績も高いとは言えないので、おそらくほぼすべてが浮動票というか無党派層ではないかと思います。
そういう意味ではひまそら氏とは真逆な感じですね。
この石丸氏の得票……特に若い人の投票を馬鹿にしたり揶揄するtweetがちらほら見られましたが。
上で書いたとおり、有権者を見下す行為は選挙では敗着への道なので、各陣営は事実は事実で受け止めて対策を練るべきでしょうし、石丸氏に批判的な人こそ、そう言う発言は控えるべきでしょうね。
それに僕の世代になれば、若かりし頃に旧民主党のウェーブや小泉旋風に踊らされた人もいるはずです。
若気の至りを嗤ってはならない。
そして、もう一つ重要なこと。
組織力なし、実績なし、地盤なしの彼がここまで浮動票をかき集られたという事は、有権者へのアピールのうまさがあったということです。
嫌な言い方をするならば
民主主義の根幹たる選挙には攻略手法がある
という事に他なりません。
同じ手法を例えばひまそら氏が取ったら数十万票上乗せできた可能性もある。
選挙とは正しいものが選ばれる清きものであるべきなどと妄想したり、その事実に幻滅したり嘆いたりするのは無意味です。
YouTubeとかの動画サイトでの選挙運動については他の方が触れてくれているのでここでは語りませんが、各陣営はそのことを踏まえて戦うべきでしょう。