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久しぶりが+
2025年1月6日(月)朝6:30
玄関を開け、目に入ってきた景色は、音は、ロートーンで、吐く息は白く、空気はキンと張り詰めていた。
ダウンコートの内側はひんやり。
年明け一発目、決意の ”いってきます” を心に、背筋をシャンと伸ばし家を出たのも束の間、5分先のバス停に着く前頃には寒さから無意識に首がすぼんでいた。
年明け…というか、3ヶ月の育休明け初日の出社日。
そういえば、こんなに早い時間に、身支度して外に出るのも久しぶりだ。
久しぶりのワイシャツ
久しぶりの朝のシャンプーからのワックス
久しぶりのAerのデカめの黒いリュック
久しぶりのワッパに詰めたお弁当
久しぶりの忘れ物したかもという、うっすらとした緊張感
(結局、メガネと折り畳み傘を忘れた)
久しぶりのバスを乗り継いだ通勤
・・・
そして、久しぶりのオフィス。
8階建ての年季が入ったビルの5階にあったオフィスは、育休で休んでいる間に2階に引っ越していた。
入り口の認証を解除し、フロアに入る。
5階のオフィスの頃はフロアの端と端の席の人の表情がなんとかお互い認識できるくらいでそんな広くなく、さらに自分の席は窓際だったこともあり、愛着があった。
でも、
引越し後の2階は面積が倍くらいに大きくなり、知らない顔ぶれも増えた。さらに、自分の席はフロアの真ん中の列一番奥、キャビネット前になっていた。
ちょっとした、いやそこそこの窮屈感を感じた。
ほんの少しだけ立ち尽くし、そのあと、気持ちが落ちていることを自覚した。
この感じ、懐かしかった。
…久しぶりの席替え。
※**※**※**
ふと、5階のブラインドの隙間からの、上から眺める高速道路を思い出した。
高速道路に流れる車を見るのは好きだった。
旅行かな、仕事かな、トラックは何時間かけてきたのかなとか、乗っている人の状況と気持ちを想像してワクワクできたから好きだった。
さらに、2015年頃はこのビルの7階に一時期いた事を思い出した。
そこには3畳ほどの喫煙ルームがあった。
(このオフィスには、かれこれ2014年頃からお世話になっている。)
wotaが社会人2年目。
徹夜も休出(休日出勤)も身体に馴染み出した頃、最寄りのコンビニの弁当もおにぎりもサンドイッチ…
とりあえずほとんどの主食もお菓子も食べ飽きた頃のある日の朝方。
いつものように喫煙所で、同じプロジェクトで別会社の20くらい歳が上の "パソコンプロフェッショナルおじ" の
”スターウォーズのボトルキャップに変わる、売れそうなコーラのオマケについて”
の議論を鈍くなった頭で、
ソレイイッスネ!、ウレソッス!、ナルホド〜
なんて、相槌を打ちながら、ふと外に目をやると目に映ってきたあの景色
朝焼けの濃い寒色から淡い暖色のグラデーションと、高速道路の向こうの丘の上の教会のシルエット。
・・・
疲れた身体に染み入り心が溶かされていく気分になった。
移りゆくグラデーションに目が離せず、明るくなりきった頃、ほんの少しだけ背筋がシャンとしていた。
あのひと時のことを思い出して、懐かしくなった。
※**※**※**
始業時間が近づき、課長が来た。
一瞬目が合ったか合わなかったかのタイミングで少しはにかみながら「おざす(おはようございます)」を交わす、いつもの挨拶をした。
フロアは変わっても、課長が向かいに座っていることと「おざす」だけは変わらなかった。
さっきまでの感傷的になった気持ちもおさまり、久しぶりの仕事が始まった。
wota + 久しぶりのオフィス = タバコ部屋と朝焼けの感傷的な光景