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もしも、世の中全員フェミニストになったら(赤いきつね論争を踏まえ)

「赤いきつね」CMが、燃えている。
それこそ、真っ赤っかに炎上している。
萌え描写に対して燃えている。


言葉遊びは良いとして。


10年前であれば、これくらいの描写は放置されていたであろうなあ、と、私はチョコチップス片手に騒ぎを見る。
要は、赤いきつねCMの女性がいささか非現実的で、男性のフェチズムを具現化しているのではないか?と、主に女性から批判を浴びている。
緑のたぬきCMの男性が割と写実的に描かれており、それと比較をされていたのも、より怒りの種に火をつけた要因だろう。
そして、案の定主に男性から「こんなCM騒ぐほどか?」という反論が出て、ここ数日Xで論争があった。


こういう議題でよく耳にするのは、「フェミ」という言葉である。
献血ポスターやら、有名人の発言やら、「女性が軽視している」「性的に消費されている」と声をあげた女性に対して「またフェミが騒いでいる」と批判する、というのが、一連の構図である。


この「フェミ」という言葉が厄介だな、と思う。


そもそも、フェミニズムとは、女性優遇を意図しているものではない。
「性差別をなくし、性差別による不当な扱いや不利益をなくそう」とする思想や運動のことである。
たまたま、歴史上女性がモノとして消費されやすかったため、女性の「人として」の権利を取り戻そうとする活動が目立っている。
だが、例えば家父長制による、男性の生きづらさに対しても焦点が当てられるべき、それが包含されるべき思想なのだ。

つまり、フェミニズムとは、全ての人類が平等に生きやすくするためのものであり、男性対女性の構図ができること自体がおかしい話なのである。


だが、私自身は声高に「フェミニスト」と名乗りたくないな、と思ってしまう。
というのも、現代では「女性中心主義」としての捉えられ方があまりにも蔓延りすぎている。


Xで「フェミニスト」ではなく「フェミ」という言葉が使われるのが正にそうだ。「フェミ」には、自分たちを優遇しろと騒ぎ立てる女性を嘲笑うようなニュアンスが込められているように思う。
それに、女性側にも、確かに都合の良いように「フェミニズム」を使っている人がいるように思える。

私はもちろん、そういう自己中心的な主義で生きていない。
だからこそ割と不本意ではあるが、現在は「私はフェミという訳ではないのですが」というまくら言葉をつけて物事を主張せざるを得なくなる。


更に、だが。
私は女性性を「上手く」利用している部分もあるので、尚更フェミニストを名乗りづらい。

例えば、男性のお客様に対して、意図的にニコニコ笑顔を振る舞う「女の子」を演じることがある。
以前社内のプレゼンテーショントレーニングの時に、部長クラス(女性)から、「若林さんの笑顔は遠くまで届く、印象に残る」と言われたことがあり、何となく自分は笑顔でいた方が魅力が高まるんだろうなあと自覚的になっていた。
だから、そういう魅力は上手く活用したし、これからもきっとする。

勿論、だからと言って、ZOOMでカメラに顔を近づけた時に、お客様から「近づくとより可愛いね」と言われた瞬間心のシャッターはおりるし、不用意に媚びることはしない。
それに、「若い女の子だと思って馬鹿にされそうだな」と思ったら切り替えて、頭の回転が早い知的なコンサルタントになる。
だから、いつも女性性を強調し演じている訳では無いし、不用意な性的消費なんて絶対されたくない。
ただ、まあ、場面によっては、自覚的に「女性らしさ」を出す、という話である。


そういう後ろめたさもあるからか、私は自分のことを一度も「フェミニスト」と称したことは無い。


でも悲しいな。
再掲するが、フェミニズムとは男女関係なく「性差別による不当な扱いや不利益を解消する」ためにあるもので。
誰もが「フェミニスト」であるべきなのに。


悲しいな。

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