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兵書『孫子』ー君は戦争を知っているか?⑤
もし、軍団を起こした後に、戦いが長引けば、どうなるか、を孫子は説いていきます。
『孫子』第二 作戦編 (3)
【本文書き下し】
夫れ、兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈し貨を殫せば、則ち、諸侯、その弊に乗じて、起こる。智者有りと雖も、其の後を善くする能はず。
故に兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるをみ(目へん+者)ざるなり。
夫れ、兵久しくして国の利する者は、未だ之あらざるなり。
故に用兵の害を知り尽くさざる者は、則ち、用兵の利を知り尽くす能はざるなり。
【現代語訳】
そもそも、兵団を疲弊させ鋭さを無くし、力を減退させ財貨を無くせば、そこで諸侯がその弊害に乗じて、反乱を起こす。智恵のある者がいても、その後をうまく収めることはできない。
このため、戦争はまずくても速くきりあげるのは聞くが、これまで上手く長い戦いは見たことがないのである。
そもそも、戦争が長く続いて国に利益になることは、これまでないことなのである。
したがって、兵団を動かす害を知り尽くさない者は、兵団を動かす利益を知り尽くすことが出来ないのである。
☆評釈☆
戦争が長引いた場合、どうなるかを述べている。今の時代、「諸侯」に相当するのは誰だろうか。軍部であろうか。政治的な反対勢力であろうか。それとも財界であろうか。何にせよ、反乱が起こり始めれば、誰もそれを上手く収束できない、とする。実際、もし反乱を収めたとしても、禍根は残るだろう。
そして、戦争が長引けば、国の利益にならない。戦争の仕方でどういう害が起こるかわからないのなら、戦争で得る利益を知ることはできない、と説く。
つまり戦争による弊害を知らずに、戦争で得られるはずの利益を延々と追っても、無駄であり、むしろ有害となる、つまり王の政権が倒れる恐れがあることになる。
しかし、王に対して、自分の策を入れるように説いていく場面なので、ハッキリ王権が危うくなるなどとは言わず、長引く戦争は国に利益をもたらさない、と婉曲に述べている。
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