講演会:高橋俊介氏『人的資本経営と学び方改革』
SMBCグループ経営者交流会の概要
2023年11月28日 札幌グランドホテル
1部:講演
高橋俊介先生 慶應義塾大学SFC研究所
『人的資本経営と学び方改革』
2部:懇親会
高橋俊介先生プロフィール
なんとも輝かしいご経歴です。生年月日を見てビックリ。プロフィールの年齢が信じられないエネルギーを感じるお話、私は50代くらいに見えました。
講演『人的資本経営と学び方改革』
講演は90分ちょっとオーバー。90分があっという間に感じた、とても興味深く新しい視点もいただけるお話でした。共感できてわかりやすい!パワポの内容を紙に印刷してご提供くださいました。全部は公開はできませんので、講演の小見出しと特に印象に残った部分を記録します。
人的資本経営の基本はキャリア自律
この項目の中で、変化の激しい今の時代に、バックキャスティングでキャリアを考えるのはあまり意味がないとお話されました。
先のわからない時代に10年先からバックキャスティングして計画しても・・と。確かにその通りだとまず大きく頷く。
キャリアは自分でコントロールできる部分は少なく、計画できるものでもない。偶然の要素も大きいとのこと。これは成功した方(以下、成功という意味は自身が望むような、あるいは想像はしていなかったけれど自身が満足して対外的にも認められているようなキャリアを得た方だと思います)のインタビュー調査などで社会学的にエビデンスのある事実だそうです。
成功する人の3つの具体的な行動として
①主体的学び
②主体的ジョブデザイン
③チャンスを呼び込む布石行動
をあげられました。③のチャンスを呼び込む布石行動というのは、コスパ、タイパとは逆の視点。人と会い人間関係をつくる、自分のやりたいことを人に話す、損得より人を助けるという視点を持つというようなことです。
「義理」と「互酬性」という言葉を使って説明されていました。(ゴシュウセイという言葉を私は知りませんでしたが)義理は一対一の人と人の関係、互酬性は言ってみれば「人情」のようなもの。困っている人がいたら助ける、そのような行動をしている人が自分が困った時誰かにサポートしてもらえるというような説明でした。けれどそれは自分がサポートしてもらいたい人にしてもらえるとは限らない。本当に助けてもらえるかもわからない。そこがコスパ、タイパとは逆の考え方という所以です。
保証はないけれどこの布石行動をしていないと何も起こらないのは確か。結果オーライになる確率を上げていくことが大切とのこと。
このお話はとても共感。よく聞く「利他の心」みたいなものとも共通すると思いましたが、こういうことを自然にできる人って一定数いる。そういう方に出会うと感動します。自分に何かしてくれたわけでもなくても見ていて感動して「次はあの方に仕事を頼もう」って思ったりするのです。まさに何か提供した相手から戻ってくるのではなく、他のところから戻ってくるということだと思うのです。
遠回りのようでいて人間性とか人格を磨くということが大切だと納得。ドラッカー博士の「真摯さ」にもつながるように思えた。
日本の学びの何が問題なのか
この項目では「正解主義」をまずあげられていました。例えば学校の数学の証明問題のテストで独自の証明の仕方をすると不正解になる。テストが教えたことの確かめにしかなっていない。
そのような教育だと「自論形成」ができない。自論は習慣であり、知識とは関係がない。ただし知識がないと薄っぺらい自論になる。
正解がないことを考えられる教育が必要。
「あなたはどう思う?」という問いが人材育成の主体。
組織で言えばタテ型は改善やイノベーションができない。ヨコが大切とのこと。
ここはCAのサービスの達人の学び方を例にあげてお話されました。それによると多くのサービスの達人は上司に習ったことより同僚との体験共有が最も役にたったと答えたそうです。
専門性の3段階
この項目では専門性について
・経験的専門性
・体系的専門性
・先端的専門性
にわけて説明されました。ある程度同じ仕事を続けていれば経験的専門性を持った人になります。けれどこれだけだと変革は起こらない。体系的・理論的な専門性が必ず必要になると私も感じています。
先端的専門性を持った方というのは新しい価値を生み出す人のことです。ta確か「突破的人材」と表現されていました。社内に教えてくれる人がいないようなことを自分で学ぶ人。学び方はまずその分野の本を30冊から50冊くらい読む。そして最先端をいっている方がわかったらその方に話を聞きに行くことから始める、そして同時に人間関係をも構築していく。それを維持・継続する。今は専門性が高い学びが必要だとも。
私はこの専門性は上から下に向けて深くなっていくと感じましたが、どこから入っても良いとのことになるほど!と思った。経験的専門性ばかり重視していると体系的専門性が軽視されがち。体系的専門性ばかり強くなると理屈倒れになりかねないとのこと。バランスも大切だしいろんな人材の多様な意見がやはり必要だと感じた。
経営人材にとって基盤的知見を広げるリベラルアーツ
この部分もとても面白かったのと大切なポイントだと思ったのですが、私がリベラルアーツという言葉がよく意味がわからなくてあまり理解が進みませんでした。けれどご紹介された本「サピエンス全史」からのお話もとても面白かった。この本で合っているのかしら。
自給自足の狩猟採取社会では長期的な計画には限界があり、矛盾するようだけれどそのおかげで多くの心配事から免れたとのこと。自分ではコントロールできないことを悩んでも仕方がないからだそうです。
けれど農業革命以降は農耕はある程度手が打てるので逆に心配ごとが増えたと。本当にその通りだと感じたお話でした。
でもこのお話がなぜリベラルアーツと結びつくのか私が無知なため良く理解できませんでした。
けれど普遍的で基盤的なリベラルアーツが必要とのこと、本質的に思考する力をつけなくてはならないというお話はとても共感。
自論系の学びのポイント
「自論」が語れない私に興味深かった項目。
お話の前段で、知識がなくても自論を語ることはできるとお話されていましたが、先生のお話を聞いて、私が「自論」を語れないのはやはり知識がないからだと感じた。「知識がないとロクな自論は出ない」先生のおっしゃる通りに私も思っていて、私は語るほどの自論はないと思うので語らないんですよね・・・。自信がないのです。でも恐れず語り、ヨコの議論でヌケや選択肢の広がりなどの気づきを得ることが大切とお聞きし、その通りだと感じた。
ファクトに対して謙虚であること、インプットをベースにして自論形成することというポイントもまさに!と感じた。本を2.3冊読んだくらいではたいした自論はできない。専門性の話でも出たような行動が必要。耳が痛い。
そして「普遍性の高い学びのポイント」の項目でお話された、深い理解をするためにはチャンクアップとチャンクダウンを行き来することが大切とのお話も非常に共感しました。
講演を聞いて
最初にも書きましたがとても面白く勉強になるお話でした。「人的資本経営と学び方改革」というタイトルと参加していたのは主に経営者と考えると、人材育成に生かしていくべきお話なのだとも思ったが、私は個人としての学び方にとても刺激を受けました。
OJTの在り方についても、講師がお話されたように上から下へというようなものだけではなくヨコのつながりをより大切にすることがより効果的であり必要だと感じた。
講演の中で『トム・ソーヤの冒険』で有名なマーク・トゥエインの名言も引用されていたところが、絵本と児童文学に興味がある私にさらに共感を与えてくれました。マーク・トゥエインの名言は検索したらたくさん出てきますがどれも素晴らしいとあらためて感じました。
懇親会
会場を変えて懇親会へ。立食ですが最初のテーブルは指定されていました。
三井住友銀行の頭取もいらっしゃっていました。200人近くはいらしたのでは。錚々たるお方がお揃いでした。名簿も配られましたので、早速「布石行動」として積極的に名刺交換や自分の夢やミッションを語りあったりされた方も多かったのでは。
私はお食事をいただき早々に退散する成功しない人でした(笑)
それでも知っている方に何人かお会いできて嬉しかったです。
講演もお食事も豪華、司会はプロ、講演会場、お食事会場どちらもお花も豪華。けれど会費なし、ご招待でした。すごいですね。SMBCグループのみなさまありがとうございました。