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少女と旅したある男の手記(夏)

雪人形3/5

忘れていた。夏の前に梅雨があった。
私は雨が降ると膝が痛むので、そんなに進むことが出来ない。
昔旦那様を助けた時に出来た傷だ。名誉な事だから今までは気にしなかったが、こうなると不便だ。

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乗り物に乗るのは半年ぶり、だろうか。
今は船で南に向かっている。
私が言うのもなんだが、もう少しちゃんと手荷物検査をした方がいいんじゃないか?
子供の頃から憧れていた船に乗れて、少し、浮かれている。

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ずっと客室に篭っていると船員が話しかけてくるようだ。
これではどこで見られているか分からない。
つまり、『彼女』も出してあげられない。
退屈だが、仕方ない。他の客と話したり、女性を口説いたり、周りに合わせて過ごす。

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船は失敗だったな。
昼間、砂浜に立った時、海に何の感動も無かった。
当たり前だ。何日も海の上にいたのだから。
だがせっかくだ、人のいない場所を見つけて『彼女』にも海を見せてあげなくては。

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ホテルのプライベートビーチに期待したが、無理だな。
砂浜は必ずと言っていいほど人がいる。
どこか岩場にしようか。
洞窟にしてみようか。
夏もまだ始まったばかり、旅も終わる気配がない。
時間はあるのだからゆっくり探そう。

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私は何をやっているんだ

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ついに見つかってしまった。幼い少年だからまだいいのだろうが、見つかったのには変わりない。
丁度いい岩場を見つけたと周りを確認するのを怠ってしまった。
しかし、少年の悲鳴で目が覚めた。
何が『彼女』だ。気持ちの悪い。
もっと遠くへ逃げなくては。

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ただ彷徨っている。この手帳を開いたのも2週間ぶりだろうか?
暑さに参って最近は夜に活動していた。
そのおかげか、今日は流星群を見た。
流れ星の正体を知ったのはいつだったか。ゴミが摩擦で燃えているだけだと簡潔に書いてしまえば、毎週のゴミ出しを思い出し、それから私は空を見上げることもなかった。
こんなにも、私を責める程に綺麗なのだと、忘れていたのだ。
無意識に私は『彼女』を出していた。
『彼女』の大きな瞳に流れ星がひかる。
諦めよう。私は『彼女』が好きだ。

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