初カレと初カノ③
中学校1年4月 逆告白
中学校の制服採寸事件があってから、気がつくと真那斗を目で追っている自分に気がつく。
そして、真那斗も私を見てくれているんだってことが解る。だって目が合うんだもん。
そういえば、制服の採寸をしてもらっているとき、それなりに仲の良い友達の紗弥加(さやか)が舞台で騒いでいる男の子の中で、真那斗を見て「カッコイイね!」って言っていたっけ。
もしかして、真那斗って女の子にモテるとか??
うちの学校だって去年からカップルが増えてきた。
今時は小学生だって、彼氏と彼女になったりするんだよね。
付き合うって、正直よく分からないけれど、真那斗が誰かに告白とかされていたら、やっぱり嫌かも。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら、卒業まであと少しだったある日、お母さんに驚く話を聞かされた。
「そういえばさ、この前の真那斗くんなんだけれど、面白いことが判ったんだよね。」
なんてニタニタしたお母さん。
「何が?」
「いやさ〜、なんか聞き覚えのある名字と名前だと思ったのよ、真那斗くんのお母さん。で、本人に確認したの。お母さんが知っている人かどうかって。」
「ふーん。それで?」
「あなた達さ、赤ちゃんの時に実は会ってるわ(笑)。」
ハッ?お母さん、今何言ってた??
「えっ?どゆこと??」
「だから、お母さんむかし真那斗くんのお母さんと近場のママ友が欲しくてSNSサイトで出会って一度だけランチしたことがあるのよ。もちろん、心と真那斗くん連れて(笑)。世の中狭いわねぇ。まさかあの時の子が今同じ選手として同じプールで頑張っているなんて。」
と、楽しそうに話すお母さん。
いや、お母様。私、今ちょっとパニックです。
「なんかさ、運命感じちゃわない??(笑)」
なんて、ケラケラ笑うお母さんを笑えないと思いつつも
「へぇ〜凄い偶然だね!」
なんて笑ってみる。
いや、お母様。私、その人から去年告白されていて、なんなら今は私が好きって自覚したところなんだけれど…。
ヤバい。お母さんが運命とか言っちゃうから、余計に気になる。
それからは、本当にまだ真那斗が私を好きでいてくれているのかの自信なんて全くなくて。
それでも確実に、私は真那斗が好きだと日々確信しながらも無事、小学校を卒業した。
お母さん同士は、いつの間にか私達の知らないところでどんどん仲良くなって、練習終わりに駐車場へ行くと、二人で楽しそうに立ち話をしているのを見かけるようになった。
う〜ん。お母さんたちが仲良くしてくれているのは嬉しいんだけれど、ちょっと複雑(笑)。
私も家でプールの話をよくするけれど、こころなしか真那斗の話をすることが増えていっていたことに、まだ気がついていなかった。
そして、いよいよ明日が入学式って夜に、お母さんからの奇襲を受ける。
「明日は入学式ね。クラス発表が楽しみよね?」
「楽しみっていうか、不安しかないよ。だってうちの小学校から行く女子、たったの5人だよ?男子の数も少ないしさ〜。私、やっていけるのかな??友達作れるかが不安だよ。」
「そうね、それは不安よね。でも、とりあえず片っ端から同じクラスになった女の子に声をかけないとね!あとは、真那斗が同じクラスだったらいいわね〜(笑)。」
えっ?なんでそこで、真那斗の、名前が出てくるのよ、お母さん。。
「えっ?真那斗?どうでも良くない??」
平静を装いながら、返事をしてみると
「いや、だってあなた真那斗くん好きでしょ?(笑)」
って楽しそうに爆弾投下するお母様。
「いや、いや。私好きなんて言ってないし。」
「あら、でもいつも好きな子が出来ると、その子の話ばかり増えるじゃない。」
えっ、マジか。お母さん鋭い!
「いや、そんな事ないよ〜(笑)。」
誤魔化してみたけれど、誤魔化しきれたのか。
「ま〜いいけど。紗弥加ちゃん、この前カッコイイって言ってたわよね?どうするの?明日、彼女のほうが同じクラスになっちゃって、真那斗くんをホントに好きになっちゃったら。とられちゃうわよ(笑)。」
なんて言われたから、お母さんにはもうバレているんだろう。
でも、お母さんの言うことにも一利ある。
どうしよう、本当にそうなったら。
友達と同じ人を好きになるのも嫌だけれど、真那斗が誰かと付き合うのも嫌だ。
そして、翌日。
お母さんの予感は見事に的中。
まさかの、紗弥加が真那斗と同じクラスで、私は隣のクラスだった。
えっ。どうしよう。お母さんの言ってたとおりになったら。
入学式が終わって、校門のところでみんなが写真を撮る中、私も小学校の友達、男子も女子も含めて何人かと写真を撮っていた。
「心!ほら、真那斗くんとも写真撮ろうよ!」
ふと、お母さんに呼ばれたほうに視線を移すと真那斗とお母さん達が私を呼んでいた。
えっ!写真!?
困惑している私をよそに、お母さんってば真那斗に
「記念だから、写真撮らせて〜!」
とかお願いしている。
迷惑じゃないのかな??
そう思って真那斗を見ると、ちょっと照れくさそうに、でも何となく顔が赤くて。
思わずこっちまで、照れくさくなっちゃった。
「はい、チーズ!」
お母さん達は、楽しそうである(笑)。
「ごめんね!また後でね!」
って真那斗に声をかけてお母さんと家に帰りながら、私は決心していた。
そして、その日の練習後。
今度は私が真那斗の肩を叩いて、
「あのね、ちょっと話がしたいから、自販機で待ってて欲しいの。」
「ん?分かった。じゃ、後でね!」
ドキドキしながら、ロッカーに戻って、うまくみんなを先に帰して、お母さんに見つからないように、自販機へと急いだ。
お母さん、今日は真那斗のお母さんと話をなんてしていませんように!!
そう思いながら、自販機へ向かうと既に真那斗が待ってくれていた。
「待たせてごめん!」
「いや、そんなに待ってないよ。どうした?」
真那斗が困惑した顔で私を見てる。
ヤバい、心臓が飛び出そうだ。
息を大きく吸って、自分を落ち着かせながら真っ直ぐ真那斗を見て言った。
「今日は写真をありがとう。それでね、クラス離れちゃって、今言わないと後悔すると思って。」
「うん。」
真那斗が静かに私の話を聞いてくれている。
「私、真那斗のことが好きです。もし、良かったら付き合って下さい。」
もう真那斗の反応が怖くて、付き合って下さいは目をギュっとつぶってしまった。
真那斗の顔を見ることが出来ないよ
って思った瞬間。
「俺でよければ、お願いします。」
秒で真那斗は返事をしてくれた。
少し照れくさそうにしながら。
「えっ?ホントに??いいの?」
嬉しさと、戸惑いとでもう何を言っているのか分からない自分がいた(笑)。
「うん。とりあえず親たち待ってるじゃん?怪しまれてもアレだから、帰ってからLINEするよ!」
「うん、そだね。ありがとう!待ってるね。」
そう言って、それぞれ自分ちの車に乗り込んだ。
「今日遅かったね!」
またお母さんに突っ込まれる。
「あっ、うん。またコーチの話が長くてさ。」
心の中で、コーチごめん!と謝りつつ頭の中はさっきの真那斗とでいっぱいだった。
どうしよう、オッケーだって!
嬉しい!どうしよう!
嬉しい、嬉しいんだけれど。。。
その夜は、お互いちょっと遅くなっちゃったのもあり、また明日沢山LINEしようということになった。
嬉しい反面、何か心がザワつく自分に不安を感じた夜だった。
続く