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初カレと初カノ④

告白した翌日なのに

告白をして、オッケーを貰った日の夜は
嬉しいのと本当に自分で良かったのかって
よく分からない不安な感情とが入り混じって
正直、よく寝られないまま朝がきた。

明日、もし学校であったらどうしたらいいのかな?
えっ?自分から声をかけにいっちゃう??
いや、待てよ。確か真那斗は周りに騒がれるのとか嫌いだったよな?

色々と悩むうちに、登校時間がきた。

「いってきま~す。」

そう言って、玄関を出ると紗弥加が信号で待っているのが見えた。
家が近いから、登校を一緒にすることにしたのを忘れていた。

「おはよー。」

「おはよ。なんかさ、中学生になったとかまだ実感がわかないね。クラスの男子もさ、イケメンいないんだよね。心ちゃんの知ってるあの男の子ぐらいかな〜?」

ちょっと眠そうにした、紗弥加がこんなことを言ってきた。

ヤバい、紗弥加には私が真那斗を好きだってこと言っておかないと。

「あのさ…。紗弥加が言ってるの、影山君のことだと思うんだけれどさ…。」

「そうそう!影山くん!背も高いし顔も結構いいよね?」

「うん、そうなんだけれど。あのさ、実はその…。」

「何?なに?もしかして、心ちゃん。好きなの???影山くんのこと♡」

す、スルドイ。

「えっ、あの、うん。実は小6の時から気になってて。好きなんだ。うん。」

「へぇ~。顔赤いよ?(笑)」

言われて見れば、ちょっと顔が熱い。

「ん?それを私に言うってことは、もしかして私が好きになったらどうしよう?とか思っているってことかな??」

「えっ!あー、えっと。うん。まーちょっと嫌だなって。何かゴメン。」

すると、紗弥加が声をあげて笑い出した。

な、何だ?

「謝ることないよ〜。心ちゃん可愛いね(笑)。大丈夫、安心して!教えてくれたお礼に教えてあげる。私ね、好きな人がいるんだ。しかも心ちゃんと同じクラスだよ。」

「えっ?そうなの??私と同じクラス?昨日入学したばかりなのに早くない??」

紗弥加がまた笑う。

「心ちゃん、よく考えて!心ちゃんのクラスにも同小の男子いるよね??」 

ん?そっか。いる、何人かいる。

「ってことは…。えっ?あの中の誰かだよね。えっ、誰だろ。」

「当ててみて、ヒントは背が高い人だよ!」

ちょっと恥ずかしそうに紗弥加が微笑む。
可愛いな、紗弥加(笑)。

「背が高いって、2人に絞れるけど。えっ?まさか和人(かずと)?」

「ハズレ、それは心ちゃんが多分前に好きだった相手でしょ?」

??!!!

絶句していると笑いながら紗弥加が、

「心ちゃんて、分かりやすいよね?(笑)」

「な、何で知ってるの?えっ?まさかみんな知ってたのかな…。」

いや、それはそれで恥なんですが…。

「う〜ん。みんなが知っていた訳じゃないと思うよ。でも、気がつく子はいたと思う。話をしているときとか、凄く嬉しそうだったしね(笑)。」

ま、マジですか…。き、気をつけよう。

「じゃあ紗弥加の好きな人って、昴(すばる)ってこと?」

「うん、そういうこと!誰にも言っちゃダメだよ。秘密ね。」

そうこうしているうちに、下駄箱について、上履きに履き替えた私たちは、自分たちの教室に向かった。

「コレでいつでも、お互いの好きな人を見に教室に行けるね!(笑)」

嬉しそうに、紗弥加が小さい声で言うと、その後ろから教室を出てきた真那斗に出くわした。

「あっ、おはよ〜。」

声をかけたけれど、聞こえなかったのか真那斗はこっちを見ないで私とは反対の方向へ歩いて行った。

「聞こえなかったんだよ。ドンマイ!」

紗弥加にフォローされたけれど、昨日から感じていた不安が大きくなった私は、その日ずっと学活とか頭に入らずに過ごしていた。

真那斗にオッケー貰ったけれど、もしかして、本当は嫌だったのかな??
あれ、私、彼女になってないのかな??
昨日の返事は私の妄想??

もう不安でしかないのに、結局帰りまで真那斗と会うことはなく、その気持ちのまま練習に行くしかなかった。

もうさ、昨日の告白無しにしちゃう?そのほうが真那斗の為になるんじゃ…。

そんな風に思い詰めた練習終わり、真那斗を再び自販機の前に呼びだした。

今日も、先に着替えて真那斗は待っていてくれた。

「どした?」

そう言ってくれる真那斗がどんな顔をしているのかを見る勇気がない。

下を向いたまま、こう言うしかなかった。

「ごめん、真那斗。昨日の告白、やっぱり無しにして。」

「えっ?何??えっ?何で?どした?」

真那斗の驚いた声と、何か言ってる声は聞こえていたけれど、やっぱり顔を見る勇気も話を聞く勇気もなくて、

「ごめん、とりあえずそういう事だから。」

そう言い捨てるように、自分の家の車に逃げてしまった。

真那斗の顔を見る勇気がない。だって、きっと呆れてる。もしかしたら、ホッとした顔をしているかもしれない。そんなの、耐えられない。

車ではお母さんが、楽しそうに何か話していたけれど、適当に返事をしながら聞き流していた。

次の日は土曜日で、朝も夜も練習一緒だけれど、顔を合わせる勇気がなくて、真那斗を避けるように過ごした。

真那斗からしてみれば、告白された翌日に無かった事にされるという、訳のわからない状態でしかないハズ。ごめん、真那斗。

やっぱり私···

そして休み明けの月曜日の昼休み、紗弥加が私の教室に遊びにきた。

「やっほ~。早速遊びにきた!(笑)」

ちょっとキョロキョロしながら、お目当ての昴を探してるらしい。

「昴ならトイレに行ってるだけで、私の斜め前に座っているよ!」

そう教えると、ちょっとガッカリしたような紗弥加だったけれど、すぐに気を取り直して真那斗情報を教えてくれた。

「そういえばさ、今日同じクラスの田中さんって子が、影山くんに物凄い話かけててちょっと影山くん、迷惑そうだったな〜。」

「へ〜そうなんだ。」

「うん、アレはきっと彼女に狙われているね(笑)。」

悟ったように、紗弥加が頷いていた。

「えっ?狙ってるって、真那斗のこと好きそうってこと??」

「そうだよ、もっとアピールしないと取られちゃうかもよ?(笑)」

紗弥加がニタニタしながら、私を突っついてくる。

紗弥加には言ってないもんな。告白したことも、オッケーされたのに無かった事にしたことも…。

「そ、そうなんだ。ははっ、ホントだ。」

チャイムが鳴って、紗弥加は自分の教室に帰っていった。

どうしよう。この前走って逃げちゃったし。
このままじゃマズいよね。
私、いったいどうしたいんだろう。

それからの時間は、自分の気持ちを整理する時間に使った。

真那斗のことは好き。
真那斗は今は私の事を好き?なのかな。
付き合って欲しいとは思う。
だって、他の女の子と真那斗が付き合って誰かの彼氏になっちゃうなんて、絶対に嫌だ。

そうだ。そうだよ。
せっかく告白をオッケーしてもらえたのに、私、何を不安に思ったんだろう?
真那斗が他の誰かの彼氏になっちゃうなんて、そんなの我慢できないじゃん。

やっぱり私、真那斗ともう1度話さないと。
この前のことを謝らないと。
それでダメなら、仕方ないよね。
だって、訳のわらないことをしたのは私のだもん。
とりあえず、謝らなくちゃ。

その日の練習終わり、私はまた真那斗を自販機の前に呼び出した。

今日は来てくれるか分からない。
だから、真那斗よりも先に自販機の前で待っていた。

私が自販機の前についてから、ほんの僅かな時間で真那斗が来た。

「おつかれ。」

ちょっとお互いに、気まずい空気が流れる。

「呼び出してごめん。それと、この前言い逃げみたいにして帰ってゴメンナサイ。」

緊張で声が震えるのを抑えながら、今日は真那斗の顔をちゃんと見て話をした。

真那斗は、気まずそうなどうしたらいいのか分からないというような顔をしている。

「うん。分かった。それだけ?」

「あの、ちゃんと言わないといけない事があって。」

「なに?」

ちょっと戸惑う真那斗の反応が怖いけれど、今ちゃんと伝えないと!

そう思った私は、少し早口で言った。

「あの、この前は告白したの私なのに、次の日に告白無しにして欲しいなんて、訳の分からない事を言っちゃってゴメンナサイ。」

頭を深く下げる。

「物凄く勝手な事を言っているって解ってる。解ってるいるんだけれど、やっぱり私真那斗と付き合いたい。真那斗が好きなの。もう遅い…かな。」

真那斗を恐るおそる見ると、凄く考えているような顔をしていた。

どつしよう。やっぱりダメか。

「あのさ。ちょっと考えさせて。」

「えっ、うん。それはモチロン。悪いのは私だし、勝手な事を言ってるって解ってるから。返事いつまでも待ちます。」

「いつまでもって(笑)。んじゃ、とりあえず今日は解散な。」

そうちょっと笑って、真那斗は自分の車に向かって走っていった。

ほ、保留された??
もしかして、少しは可能性あるってことかな??
いや、いや。
これでダメなパターンもあるし。
とりあえず待つしかないよね?

最後にちょっと笑ってくれた真那斗の笑顔が忘れられなくて、振られるかもしれないのに何だか胸がキュンとした夜だった。

続く



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