
冬の謎歩き。
周りをキョロキョロしながら歩く。
歩きなれたはずの場所をガイドブックを持ちながら。
「ねぇ、あれかな?」
「んー、いや。あんな分かりにくくないだろう。」
話しながらもくとくと歩く。
秋と冬の季節限定の街歩き。ちょっと気温が高くてもマフラーと手袋をして、背中と足裏にはホッカイロ。相乗効果からか、いい感じに身体はあたたく、冷たい風がふいていても歩くのが苦ではない。だんだんこういった対策も万全になってきた。
***
彼の家にいったとき、思わず声をあげてびっくりした。本棚にあった謎解きゲームブックをみつけたからだ。本の中に謎解きが隠されている分厚い本。あたらしい2人の共通点が見つかった瞬間。
毎年、秋の終わりから地下鉄と謎解きがコラボするイベントがある。
地下謎への招待状
地下謎のキットを購入し、その中のものを頼りに謎をといていく。もちろん、地下謎というからには地下鉄にも乗る。街を歩き、ヒントも探していくイベントだ。
ときには、ひとりで。ときには、友達と参加した。今年は彼と。
もちろん、一緒に解くといっても解くペースが違う。謎解きキットをひとりひとつ買うこともある。
わたしは答えをギリギリまで考える。そんなわたしを彼は待っていてくれる。気づいていても。
「あったー!」
次の謎を解くヒントを見つける。
わたしは嬉々として、ガイドブックに答えを書いていく。
「じゃあさ、解くのはあのお店なんてどう?」
視線の先には、美味しそうな餃子やさん。笑って彼の顔をみれば、わたしの返事を待たなくてももう決まりだ。
このキットには、地下鉄の乗り放題の券が1日分ついてる。だから、たいていの場合は短期決戦。
だけど、わたしたちは1日で解こうとはしてない。途中下車したその場所での時間をもつ。ちょっとずつちょっとずつ楽しみを重ねていく。そんな2人の謎解きの週末がまた過ごせていることが嬉しくてならない。
見なれた街なのに、知らない場所があるのなら。きっと人でもおんなじ事が言えるはずだ。2人で歩きながら、知らないとこをもっと知れたらいいなと思う。そして、来年も過ごせますようにって思うんだ。
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