午後3時の踏んばりごはんと優しき甘さ
クスクスっとした笑い声が耳に入る。
パソコン画面から机のうえの時計をみると3時半をさしていた。
おそらく、休憩室や喫煙スペースでの会話のなごりなのだろう。部屋に戻ってくる人たちは、ふわりとした和やかな雰囲気をまとっている。
開けたままのドアからひんやりとした空気が入ってくる。窓からは柔らかな光がさしこんでいる。こんなに温かそうなのに、まだ外は寒いのだろうか。暖房と集中でほてった身体と頭には心地よかった。
姿勢はそのままに大きく呼吸をする。肩と背中が休憩ギリギリっとする。もう少しするか、休憩にしようか。
「ひと息ついたら?」
小さめのバッグをとんと机に置きながら、となりの席の同期の女性がいう。
「でないと、虫がないちゃうでしょ?」
そう意地悪そうに笑いながらいう。
「もう!それは、言わない約束でしょ。」
周りに聞こえてないかヒヤヒヤしながら、つくっていた資料を保存する。
ごめんごめんと、ひと粒チョコレートの包みをひとつ置いてくれた。
それでも、ぷんとしていたら、もう一つ。
そんな彼女にぷっと笑って、ありがとうを言う。もらったチョコレートと小さな包みと飲み物を持って、休憩室へ向かった。
***
キィーっと少し重たい扉をあける。休憩をずらす形になったからだろう。いつもは賑やかな部屋には、ちらほら人がいるくらい。
窓の近くの温かそうな場所に座り、飲み物とチョコレートと包みを置く。包みを開いて、手づくりのおにぎりをとりだした。鮮やかなシソのおにぎりをぱくんとひとくち。適度にしょっぱいのがたまらない。ゆっくりゆっくりかむ。
お昼にお腹いっぱい食べてしまうと眠くなる。かといって、少ないと夕方にはお腹の虫がないてしまう。
解決策として思いついたのが、おやつ時間の小さなおにぎりと甘いもの。分食というらしい。おかげで、眠気もおさえられているし、集中しやすくなった。
わたしにとってのもう一踏ん張りのおにぎりなのだ。
まぁ、お腹の虫のおかげでとなりの席の同期と仲良くなったのだけどね。
今でも思い出すと、恥ずかしくなる。静まりかえった中で、盛大にお腹が鳴ってしまったことがあった。真っ赤になって肩をすくめていたら、トントンと肩をたたかれた。コップをもって、休憩室いかないってころっと誘ってくれた。休憩室につくやいなや、くすくす笑いながらマドレーヌを渡してくれたのだ。
そんな彼女の優しさにどれだけ救われたことか。
うっかり仕事していることを忘れてしまうくらいの緩やかな午後のひととき。懐かしい記憶に口角があがる。
チョコレートの包みを開けて、口にいれるとなめらかな甘みがひろがった。おそらく、いいチョコレートなのだろうな。
明日はわたしから差し入れしようかな。そんなことを思いながら席をたつ。頼りになる同期の存在はきっと、仕事が楽しいと思えることのひとつだなぁっなんて思いながら。
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