好きな人たちは、サンタクロース。
いつもより早くベッドの上にいた。いつも以上の人混みにながされて早く帰ってきた。あたたかいスープを飲んで、休んでからお風呂へ。もっとゆるりとした時間を過ごしてよかったのだけど、心のざわめきを眠ることでなくしたかった。
今年は、チキンもケーキも買わずにいた。いたって普通の日と変わらない。ほんの少し周りがにぎやかで、ほんの少し周りの人たちが浮かれているだけ。クリスマスイブもクリスマスも日本には関係ないのにな。なんて、冷めた目で周りを見ていた。
明日に備えて眠ろうとしたのだけど、スマホに手を伸ばす。見ようと思ったのは、大好きなひとばかりをフォローしているSNSアカウント。元気のないときにいつもチカラをもらっている。
ふいに出てきたケンタッキーの写真に笑う。1番好きなシンガーソングライターさんの投稿だ。タイムラインが更新されたと思ったら、ライブ配信の開始のお知らせだった。
いつも時間が合わなくて見られなかったのに。恐る恐るボタンを押すと出てくる配信画面。イヤホンをとりだして、スマホにさして耳をすませる。音量調整したりしていたら、シンガーソングライターさんの声が聞こえた。
「あと少しでイブと本番の境目ですね。もう歌っちゃおうかな。歌っちゃいます。」
ギターでリズムをとり、歌を歌い始めた。
聖しこの夜。
彼の歌声に耳をすましながら想う。
なんて素敵な日なんだろうと。
歌の配信は途中で聞こえなくなってしまったのだけど、心のざわめきはすっかりなくなっていた。
***
クリスマスは、幸せな気持ちをもらえる日だった。ごちそうもプレゼントも待ち遠しくて大好きだった。
でももう、待っていてもこない。
いつまでも待っている側でいたかったのに。
そう思っていた自分に気づいた。
反対に、好きな人たちはクリスマスに幸せな気持ちをプレゼントしようとする人たちだった。
改めてタイムラインをみれば、クリスマスにちなんだ曲や漫画やイラストを次々にアップしていた。
どれも幸せそうに笑う、ほのぼのとした気持ちにさせてくれるような作品たちを。
わたしは、きっとこの気持ちを求めてSNSを見ようと思ったんだ。
あぁ、そっか。
だから、この人たちが大好きなんだ。
サンタさんのようなひとたちなんだ。
ずっとサンタさんは、ふっくらとしたし体格のフワッフワの白いひげに赤い服のおじいさんだと思っていた。
本当の姿は知らないサンタさん。
でも、今は。
正体のバレてるサンタさんがたくさんいてくれる。こんなにも温かな気持ちを贈ってくれる人たちがいる。
大好きな人たちは、憧れている人たちでもある。だからかな。
来年は、わたしがサンタさんになってみてもいいじゃないかなんて考えてしまった。
正体のバレてるサンタさんからの贈り物だって、居てもいいはずだから。
そう思ったら、来年が楽しみになってきた。
来年はチキンにケーキまた買ってもいいな。イルミネーションやプロジェクトマッピングもみてまたい。クリスマスは1ヶ月くらいあるんだもの。もっと楽しんだっていい。そして、そこで得たものを今度は誰かに贈れたらいいな。
来年の前にも。明日会う人たちにもちょっとした贈り物をしたくなっている。
クリスマスに奇跡は起こる。
本当かもしれない。
やっぱり嫌いになれないな。クリスマス。