かわいい私の彼は佐久間くんって言います ☆4☆
穏やかな寝息が聞こえてきたので、ソファから起き上がり静かに帰り支度をしていると
「ねぇ、やっぱりまた帰っちゃうの?」
と薄暗い部屋の向こうから彼の声がした。
「起こしちゃった?ごめんね。お泊まりはしないって約束だから。帰るね」
「朝、目が覚めた時、ここには居ないってわかっていても、もしかしてって思っちゃうんだよね。もしかしたらどこかに隠れてるんじゃないかって」
「クッションにタオルケット掛けて帰ったことあったじゃん。俺、あれ見てやっとおはようが言えると思って、すげえ嬉しかった。けど近づいたらクッションでさ…」
想像したら胸がぎゅっとなった。
甘えたい、甘やかしたい心を押さえつけた。
「寂しいよ。寂しかったよ」
暗い部屋に目が慣れてくると、体育座りでおでこを膝に付けてすっかり拗ねているシルエットがぼんやり見える。
近づいて彼のまあるい頭をそっと手で梳くと、ぷいっと顔を逸らす。
「またね」
できるだけそっけなくさよならを告げる。
返事はない。
「今度のお休み、ちょっと遠出しよう?どこがいいか考えておいて。じゃあね」
立ち上がりかけた私のTシャツの裾を掴むと「約束だからね。きっとだよ」
寂しがり屋で甘えん坊の、かわいい私の彼は佐久間くんって言います。