花束みたいな恋をした
やっとやっとやっと!!花束みたいな恋をした 見に行くことができました😭やっぱりこのご時世、なんとなく映画を見る事に抵抗があって、でもどうしても見たい!そんな衝動に突き動かされて昼間ならいいだろとか思って見てきました。率直にいうと、久々に見てよかったぁと思える一本で、お腹が空いた時にふと食べたくなるちょっと高めのクッキーみたいな感覚でまた見たい気もする。でもね、どこか心に影を落とすというか、うーんうーんも悩むところも多くあって、だからそれなりの覚悟は必要なのかもしれない。だって、隣で見てた友人は涙腺が崩壊してたもの。 ただひとつ思いっきり素人目線でも言えるのは映画館ならではの音楽技巧の絶妙さと、画面の暗転が悔しいくらいに上手くて、2時間弱が秒だったこと。
麦と絹。うん、好き。2人とも好き。好きなものは好きだと言える感性、演じてる2人の持つ力もあるんだろうけど、なんとなく淡々とした話口調、そしてくどくはないけどなぜか印象に残る話の仕方。特に絹ちゃんのふーん、とかでね、あと時折入ってくるぐさっと突き刺すような言葉遣いは個人的にはすごくタイプだった。ネタバレにはなっちゃうんだけど、このストーリー構成、憎いよね。初っ端で現在の2人を描いて見せて、伏線を張る。そして過去を視聴者をもれなく掬い上げつつ見せてからまた現在に戻る。典型的ではあるけどやっぱり起承転結しっかりしたい日本人にとってみたらしっくりくる。あと何がずるいって、去り際のバイバイだよ。話すんじゃなくて、ただ歩きながら前を見つめたまま手だけを振るの。お互い振り返ることはないから見ることはないけど見てるこっちにだけわかる感じ、そしてわかり合ってるぞという2人の空気感。いや、ずるいよ。いつ恋にどハマりしてた筆者にとっては、もう恋人でもない2人の空気感がどこか懐かしくて、でも2人はちゃんと前に進んでるんだなとわかってしまって、坂元さんめ、と思ってしまったよ。またあのドラマを見たくなってしまった。
話がずれたから戻すけど、2人を見てると、別れるのが正解であるように見えるし、いやいや待てよと言いたくもなる。ただこんな恋愛してみたいなと思うし、したくないとも思う。要は、矛盾が生まれては消えていく、そんな映画だった。
お笑いが好き、好きな小説作家さんが同じ、じゃんけんでパーがグーに勝てるわけがない、映画の半券は栞にするタイプ、似てるの一言で片付けていいとは思えないレベルで波長があった2人。ふと自分の昔を振り返った時に、確かにじゃんけんの謎は謎だったけどいつからかそれが当たり前だと思ってたし、それを大学生まで考え続けられる2人のセンサーが素敵だと思ったし、当たり前を当たり前としない2人だからこその空気感が確かにそこにあった。だからこそ、変わっていく2人の中で受け入れられないことが多くあって、あの結末になって、それでも後悔はしない恋であったのが救いだよとか思った。
ネタバレになるから結末は濁すけど、(濁せてるのかは甚だ疑問だが)でも2人の会話で好きだなぁと思ったとこらを少し。麦が電車に揺られる時間が好きみたいなことを言った時、絹は電車に乗るという表現を使わない彼が好きとあった。確かにそう。電車に揺られると表現できる人は、本当に勝手なイメージだけど日常に忙殺されてない人、電車の時間さえも楽しめる人。そんな麦もいいなぁと思ったし、そこに気づける絹ちゃんの感性も好き。あともうひとつだけ。2人の喧嘩のシーンで、絹ちゃんが「じゃあの数が多い」って伝えるシーンがあった。じゃあ行くよ、じゃあやめるよ、普段何気なく聞くことの多い言葉。ついつい使ってしまう言葉。でも、その裏には絹ちゃんが言う通り、絶対的にマイナスの意味が含まれてて、しかも相手のことを勝手にこうだと決めつけた上でシャットダウンしてる意味も含んでて、なんて恐ろしい言葉なのかと気づいてしまった。「じゃあ」の一言で片付けていいことも世の中にはきっとある。だけど、絹ちゃんにとったら、愛する人から理解することを放棄されているのに、上っ面だけの同意を得ても何も嬉しくない。
やはり、坂元裕二さんは偉大だ。
あとね、どうしても頭に残っていること。 あのカップルは音楽が嫌いだ、なぜかって、それはイヤホンを共有してるから。え?って思うよね普通。だって、一時期イヤホンを2人で聴くのはやってたし、なんなら有村架純さんの主演映画でしたよと。だけど、それを今回取り上げること、そしてそれは決して皮肉ではなく、音楽関係者の方ならきっと思うこと、ミキサーさんの仕事を生かしてあげてと言うメッセージにも取れる。確かに右と左、同じ音が聞こえるようで実際は違うし、近頃流行りのロックバンドなら尚更なんだろう。うん、ちゃんと音楽は自分の五感全てで聴こう。でも、きっとカップルが音楽を2人で聴いていたとしてもそれは音楽が嫌いなんじゃなくて、2人で何かを味わってみたいだけ。私はイヤホンを2人で分けてるむぎきぬが好きだった。それぞれが持ったイヤホンをそれはそれで愛しいプレゼントだけど、そのイヤホンが存在をノイズキャンセルみたいに遮る存在になるくらいなら、音楽嫌いに見えるカップルがいい。
花束みたいな恋をした
見てない方には是非見てほしい。麦と絹のような恋ができたらそれはきっと幸せなことで、多分良くも悪くも忘れられない恋になる。麦と絹が幸せな世界線でありますように。
*画像はaocinemaさんのものをお借りしました。