2023聴いた音楽100〜51位
昨年はこんな音楽を聴いていました。
100位:アイル・スティル・ラブ・ユー(キング・ジェイムス・ヴァージョン)
人間発電所のサンプリング元の歌。英語の歌詞なんて聴いてても分からないのに、あなたというものを愛する気持ちが強いと分かる歌だとなんでか分かる。聴くと、勇気に満ち満ちてくる。そんな歌が好き。
50年後も変わらず、この歌を好きでいれるような人間でいたい。
99位:星占いと朝(カネコアヤノ)
「小学生の時、初めて好きになったのが星占いでね」
と、所沢にある僕の家に向かう道中に母が言った。
母は、占いが好きだ。僕にとっての小説が、彼女にとっては占いなのだと思う。僕も母も、相手の事が知りたい。どんな人かを知りたい。人をどうやって見つめるかという時に、文学や占いを通して近づこうとする。
「おばあちゃん(父の母)に初めて姓名判断をして貰った時、今まで苦しかったでしょうって言われてね。結婚前は自分で自分を苦しめちゃう名前だったんだってね。それが、お父さんと結婚して苗字が変わったら、すぅーっと肩の荷が下りてね。すごく楽になった」
「結婚してよかったね」
そう言ったら、母と父が笑った。家まで送り届けて貰ってひとりになってから、そういえば星占いと題名に入った歌で好きなものがあったと思い、この歌を聴いた。
98位:FXXKED UP(feat.week dudus,Tade Dust&Bonbero)(Gucci Prince)
Gucci Princeが死んだんだってと浅利と話し合った覚えがある。元々HIPHOPが好きな浅利と、それよりは後に好きになった僕は時折そんな話をする。他愛のない話のひとつだ。そして、最近ゾニーがHIPHOPを好きになり始めている。この間西荻窪駅近くの高架下で小さなサイファーをした。楽しかったな。
97位:アーケード(カネコアヤノ)
すべてのことに理由がほしいと、これからも思い続けるだろう。
カネコアヤノのライブに行かなくちゃね。
96位:白いパラソル(松田聖子)
YouTubeで中森明菜がトーク番組で真似しながら歌っている動画を観て、わあいいなあと思った。
家族で車に乗ってどこかへ行く時に音楽を流すのが、僕の役目だ。運転してくれる父が楽しくなれるような歌を選んで流すようにしている。白いパラソルを流した時、歌と一緒に口ずさみ始めた。そんな時、口には決して出さないけれど、やったと心のうちでガッツポーズをする。
涙を糸でつなげば
真珠の首飾り
と歌うところが特に好き。
95位:潮騒ちゃん(スピッツ)
聴くとすごく元気が出る。潮騒に、ちゃんを付けて歌にしようと思ったの、やっぱり草野マサムネはとんでもなく可愛らしく、そうして天才だ。
あんとき泣いてた幽霊も
ビートに合わせて手を叩く
2023年にスピッツの新しいアルバムが出た。その中ではオバケのロックバンドという歌が特に好きだ。(だって、メンバー全員で歌うのだもの)
草野がお化けとか幽霊をメタファーにして歌詞にする事が、最近になるにつれて増えたように思うのは気のせいだろうか。ありがとさんとかもきっとそうだよね。
初期の頃は死のイメージを纏って、怖いくらいに生々しく語られていた草野の内面の核が、時間をかけて丸くなってゆき、オバケや幽霊などになったのではないかと想像する。
年齢を重ねた時に今とは違う景色が見える事を、草野のおかげで楽しみに思えるようになった。
94位:ぼくら花束みたいに寄り添って(カネコアヤノ)
感動している些細な事で
と、好きなワンフレーズだからよく口ずさむ。
この歌はカネコの中でも特に好きだ。
燦々のアルバムで全体を通して楽曲の底のほうで流れている音の、その良いところが全部この歌には集結していると思う。
感動している君の眼の奥に
今日も宇宙がある
カネコの歌詞は最近のものになるにつれて、とてもひとつひとつの言葉や事象に対して繊細になっていると思う。抱擁を、鈴の音を、予感を、どうして歌の中に落とし込んだかという事を、僕はずっと考えたくなる。
「ぼくら花束みたいに寄り添って」が収録されている「燦々」のこの頃は、繊細でありながら、同時に宇宙を宇宙とそのまま言うような大胆さもあり、そんなところも好きだなと思う。
93位:俺のすべて(スピッツ)
情熱にあふれたスピッツの歌が大好き。
山のようなジャンクフーズ
石の部屋で眠る
残りもの探る
これが俺のすべて
今年、詩を書くことを志す人達と交流を深めた。その一人に、わんちゅという後輩の男の子がいる。
上に挙げた歌詞の部分を聴いていると、僕は彼の事を必ず思い出す。仲良くなり始めた頃に読ませて貰った詩とすごく重なるのだ。
まだこの歌を紹介していないから、この文章を読んでくれたらいいな。
92位:Believe In Me(トッド・ラングレン)
Eyes feat.IO&RYKEY(SIMON)のサンプリング元の歌。
That I didn't believe you knew
というワンフレーズがリフレインされる。
トッド・ラングレンは昨年知れてよかったアーティストのひとり。いい洋楽のクラシックだと感じる。
ひとつの歌をきっかけに遡ってゆき、やがてそのルーツに辿りつく。そういう事をこれからも誠実に、繰り返しやっていくことを続けてゆく。
好きなものを好きと言えるまでに人よりも時間がかかるし、好きな気持ちを忘れっぽい性分だから、大切だと思ったものは大切だと言い聞かせてしがみついていたい。
91位:波のり(スピッツ)
カラオケで歌いやすいスピッツの歌。
2月頃、浅利と松川とたっちゃんと江古田駅南口前のカラオケに行った。公園で終電を逃して、それから皆で近くのカラオケに行くことになった。
変な日だった。けれどもとても、楽しかった。
その時に5曲目くらいで歌ったかな。浅利は、松川さんが「もっと」を歌って以降の記憶がなかったらしい。朝、カラオケの前で解散した後に、気づいたら家の近くの公園のベンチで寝ていたという。通りかかった警官に起こされたんだって。
90位:僕の天使マリ(スピッツ)
天使の事をたまに考えるようになった。詩を書くようになってからだ。
天使の目が燃えるのをみた
眩しくて痛かった
と春頃書いた。
松川とふたりで煙草を吸っていた帰り道の最中に着想を得たものである。夏に病気をしてから、煙草はやめた。もう、以前みたいに吸うことはないけれど、1年に1日だけ、桃と煙草の会がある時だけは吸おうと思う。キャスターがとても合う。
放浪隼純情双六のLIVEDVDでこの歌の時、最前列で気持ちよさそうに乗っているお姉さんの仕草が本当に最高だ。
89位:ザ・クリスマス・ソング(ナット・キング・コール)
今年のクリスマスは、恋人と表参道で買い物をして、プレゼントを買った。dantonの真っ赤なセーターだ。あげる事ができて嬉しかった。
夜は、新宿御苑の近くにあるポトフ専門店に行った。店は暗い路地にひっそりと建っていて、そこの入り口あたりだけがあたたかみのある橙色に灯っていた。
お店を入ると、すでに他のお客さんたちがポトフの鍋を前にして、時間を過ごしているところだった。僕たちが入ったのは、そのお店の予約できる最後の時間。つまり最後の客なのだと気づいた。
ポトフを頼んで待っている間、一度お手洗いに向かった。出ようと思って手を洗っている時に店内の音楽が変わるのが分かった。
あ、あの歌だ。扉を開いて座っていた席に近づく。丁度流れている音楽の事を口にしようと思ったら、恋人は目を輝かせて、話題にしてくれた。
「ザ・クリスマス・ソング」を知ったのは、ウォンカーウェイの映画「2046」がきっかけだ。恋人と一緒に観に行った。
劇中の終盤、トニー・レオンとフェイ・ウォンがクリスマスの夜のひとときを過ごす場面があり、その時に「ザ・クリスマス・ソング」が流れている。忘れられない場面だ。映画を観てから、よく聴くようになった。
クリスマスにこの歌を聴きながら過ごすのがちょっとした夢だった。「恋する惑星」では結ばれる結末を辿った、トニー・レオンとフェイ・ウォンのように。ポトフが出来上がるほんの少し前。恋人はとても楽しみな顔で、鍋が出てくるのを待っていた。
88位:月の丘(青葉市子)
夏のいちばん暑い頃に癌だと診断され、10月から治療が始まった。毎日川越の病院に通った。お昼過ぎに本川越駅に着いて、それから病院行きのバスに乗ってゆく。
気分が、どうしようもなく落ち込んでしまった。その時はできるだけ意識しないようにしていたけれど、それはぼんやりとした不安の形を取って、ずっと心のうちにうずくまっていた。1ヶ月間の治療中、何日間かほとんどの音楽が聴けなくなった。そんな事は今までなかった。辛い時は、ひとりでいるとおかしくなりそうなのに、体はほとんどのものを受け付けなくなる。バスの車窓の向こうに視線を寄せて何もしないでいても、誰もこちらに手を伸ばしてくれない。道路脇のずっと向こうまで広がる田んぼに鷺がいる。数えると、7羽いた。
何なら聴けるだろうか。そう考え、青葉市子のqpのジャケットをみて、これならもしかしたらと直感的に聴こうと思った。
再生すると、流れる音楽にはこんな暗い心をそっと包みこんでくれるような、もっと深い淋しさがあった。それは、暗い自分にとって何よりも救いになるような響きに変った。
僕は、プレイリストに「月の丘」と「みなしごの雨」の2曲を追加した。入っているのはその2曲のみ。それをずっと、聴き続けた。そうすると何日か経って、気のせいかもしれないけれど、日の昇る兆しみたいなものを心のうちに感じた。まだ状況は何も変わっていなかったし、この先のことなんて何も見えないけれど、いちばん良くない時期は越えたのかもしれないと思った。
87位:夢の外へ(星野源)
自分の一部だと確信できるほどに聴き続けているし、時には歌う事もある。
夢の外へのイントロが始まると、いつも人生がここから始まってゆくような、強い予感を感じる事ができる。思えば、僕は何かの始まりによくこの歌を聴き、時には歌う。MVのダンスがとても好きだ。
86位:抱擁(カネコアヤノ)
今年もこんなに聴いているなんて、恥ずかしいくらい好きなんだなまったく。
抱擁という言葉が、数年をかけて自分の言葉になった。すぐには自分のものにならない。興味本位で言葉を使うと、僕は不器用だから失敗する。
カネコから僕は、幾つも言葉を教わった。元々知っている言葉をカネコの歌を通すことで、大切な意味づけがされるようになる。出勤する時の電車の中、お昼休みの時など、聴き続けているとあるひとときの後に気づく時がある。
自分のうちに言葉がひとつ増えるとそれだけ、豊かになる。心がどんどん広がってゆくとでも言えばいいだろうか。本を読む意味や歌を聴く意味を何か1つ定義するとしたら、僕にとってはそれに他ならぬ。
85位:ペニーレインでバーボンを(よしだたくろう)
ペニーレインと言ったら、ゾニーを思い浮かべる。原宿のバーだからかな。彼の地元に程近いところである。
彼の幼少期の思い出には、東京の土地やお店が根を下ろしている。小説やエッセイを読むと、彼が生粋の東京生まれ東京育ちなのだなと、なんだかその事が羨ましくもなる。でも、それは隣の芝が青く見えているのにちがいない。いつだって、自分にないものが欲しくなる。
彼が東京を地元として描くように、僕は僕で前橋という故郷がある。昔は自分の住んでいた街の事が嫌だったけれど、小説を書いたり読んだりするうちに考えが変わった。自分は自分の生まれ育った土地から根を断ち切らないように、地元の事をもっと知ろう、思い出そうと考えるようになった。あと、帰れる時には帰ろうとね。
それにしても、格好いい歌だ。
84位:薫る(労働と学業)
自分とは何だろうと考える時に、予感や兆しという言葉に生来、自分が惹かれている事に気づく。そうしてこの歌のタイトルにとあるように、薫り(香り)や匂いといったものは、何かその物が目の前に現れるよりも前に、それを感じる事ができるという期待やワクワク感を表すものだと考えるようになった。
薫る(労働と学業)も、何かにワクワクし、期待する気持ちを表した歌だと思っている。そういう歌は目指す方角が明かるい。だから好きなのだ。
83位:あまり行かない喫茶店で(never young beach)
これも、ゾニーが好きな歌。僕も好き。
吉田拓郎「結婚しようよ」に
二人で買った緑のシャツを
僕のおうちに並べて干そう
という歌詞がある。「あまり行かない喫茶店で」の
部屋にはピンクのペンキを塗って
庭には犬を走らせよう
もやはり、これからの生活に対しての希望がたっぷりと溢れていていいなあと思う。
こう在りたいぜ。
82位:Happy Together(タートルズ)
ウォン・カーウェイの映画「ブエノスアイレス」の主題歌。
シネマテーク高崎であの映画を見た時の衝撃がいつまでも忘れられない。いい映画を観た後の帰り道は、普通に歩いていてもスキップみたいになる。その日ももう夜だった。地元の街のすべてがきらきらした色に輝いて見えた。僕は、高崎駅を目指して歩いた。地元でいちばん好きな映画館だ。
81位:雨にぬれても(B.J.トーマス)
「明日に向って走れ」という映画の中で、男女が一緒に馬に乗って走るというとても好きな場面で流れる。この時の陽の光がとてつもなく綺麗なんだ。
この映画は、前橋シネマハウスで観た。両親が営む焼き鳥屋から歩いて1分くらいのところにある。いつからか帰郷した時に一人で映画を観に行くのが恒例になった。
また、友人のさつきが荻窪の家に住んでいた時、夜、この歌を弾き語りしてくれた事がある。久しぶりに会ってなんだか力が入って彼女に余計な事を言った覚えがある。申し訳ない。
ちょっと気まずくなってしまった。もう部屋を暗くしてそろそろ寝ようかという時に、さつきがギターを持って歌ってくれて、「好きな歌だよ」と再び会話をする事ができた。その時の事を、ありがとうと思っている。
80位:誰にも見つけられない星になれたら(andymori)
星の歌が好き。小山田壮平の書く歌詞はすごく格好いいな。なれないのに憧れちゃうね。
聴いていると、星を見上げる時に胸の底を流れる潤いとそれから何か理由も分からずに襲われる淋しい気持ちの事を思い出せる。
79位:手鞠(スピッツ)
オバケのロックバンドの次に入っている歌。
手鞠で歌を作るってなんなんだ。すごいぞ草野。このあたりの歌を解読できると、今のスピッツに対しての気持ちや解釈がもっとはっきりとする気がしている。
78位:地獄でなぜ悪い(星野源)
この時の星野源が感じていたもどかしさに、とても近づいた年だった。病気が治って、ほんとうにほんとうによかった。
77位:世捨人唄(よしだたくろう)
ペニーレインでバーボンを、人生を語らず、ときて、3曲目にこの歌が流れる。
何十年も前の価値観や光景を、この人の歌を通じることでとても美しいものだと感じられる。だから、吉田拓郎を聴く時間が欲しいと時々思う。
76位:しかたなく踊る(星野源)
治療のために病院へ通っていた時期にLIGHT HOUSEをすべて観た。電車やバスの中で。源ちゃんと若林の話を聞いている時は、他の事を忘れて没頭する事ができた。
観る前から、好きな2人が話すのだから面白いとは思っていたけれど、回の最後に毎回、その回のトークテーマを反映させた歌を作ってきて歌う源ちゃんのミニライブがとても良かった。
100年後も
意外!まだ生きてるんだ
悩み合った
この星の中で
のところを聴いて、毎度生きてみようと思うのだ。まだしばらくは生きられそうだ。ありがとう。
75位:甘い生活(Sho Goto)
年上の大好きな友達、花ちゃん。大学に編入した仲間。浅利も武隈もね。2018年に知り合った人たちと今でもこうして仲良くできているのが嬉しい。年々仲良くなる。
彼女の聴く音楽を素敵だと思っているから、Apple Musicに聴いているマークが付いている曲は必ずチェックするようにしている。一緒のアルバムを聴いている時はやったと嬉しくなる。
この歌は、そのうちの一曲。
花ちゃんとは、出会って6年目でようやく仲良くなれた。色んな話ができたね。ありがとう。
74位:からたち日記(島倉千代子)
永井龍男の「コチャバンバ行き」という作品集を読んでいる時に、からまつ林という言葉がでてきて、気になって調べている時に島倉千代子の「哀愁のからまつ林」という曲に出会った。
それから、同じアルバムに入っているこの歌をよく聴くようになった。
歌の途中に台詞パートが入っており、それがすごく良い。
このまま 別れてしまってもいいの
でもあの人は さみしそうに目をふせて
それから 思いきるように
霧の中へ消えてゆきました
さよなら初恋
からたちの花が散る夜でした
73位:Luv(sic)pt2(Shing02)
今回出てくる1〜100位までの曲でいちばん好きかもね。
歌詞なんてまるで分からないのに、どうしてこんなに悲しく、淋しくさせるのだろう。明らかにかつて在って今はもうない何かについて歌っている歌だからその切実さがいやでも伝わってくる。
72位:LOVE(C.O.S.A×KID FRESINO)
今夜俺は歩いて帰れるだけの酒を飲み
そして潰れたフレンズをまたいで振り返る
片側だけライトが灯るクラブの
朝方のノリを遠くから眺める
KID FRESINOのバースのこの部分がとても好き。朝方のノリに参加するのでなく、こうして遠くから眺めているのが、何だか自分にとても近しいものを感じる。歩いて帰れるだけの酒を飲むところもすごく共感する。
この一瞬間は、僕の生活の中では起こり得ないけれど、違う時に同じ輝きに満ちた一瞬間があればいいのだと思う。
71位:かけだす男(エレファントカシマシ)
一度聴いて、一気に心を掴まれた。悲しみの果ての次に入っている歌。
僕は宮本みたいにずぶぬれたまま駆け抜けられらないから、エレカシの歌のあまりの力強さに圧倒される事が多いのだけれど、かけだす男みたいに親しくなれる歌を、時間をかけてもっと見つけてゆきたい。
70位:林檎殺人事件(郷ひろみ&樹木希林)
恋人は、阿久悠の作る歌が大好き。
なんておかしみの溢れる素敵な歌なのだろう。
いつかスナックで2人で歌うのを勝手に目標としている。もちろん僕が郷ひろみで、たくさん歌う。
69位:異星人(betcover!!)
betcover!!がとても好きになった。治療期間のとある日曜日に、新宿文化センターの屋内フェスSHIN-ONSAIでたまたま柳瀬二郎の出番を聴いた。目当ては工藤将也とゆうらん船とZAZEN BOYZだったけれど、今考えれば柳瀬二郎と出会うための日でもあったのだ。
SHIN-ONSAIに、行くか迷っていた。治療中に余計な事をしたら、体調を崩すかもしれないという懸念があったからだ。
絶えず心がピリピリしていて、ライブすらも余計なものかもと思ってしまう。そのような嫌な葛藤で堂々巡りになる。
でも行ってよかった。この日、最後の出番のZAZEN BOYZは大学生の一時期、向井秀徳の歌が好きでずっと聴いていたこともあって、どうしても生で観たかった。その気持ちに従って、チケットを買ったのだ。
リハーサルで向井が声を出した瞬間に、会場の雰囲気がどよめいた。なんて人だと思った。それまで騒めいていた人たちも皆んな話を止めて、声出しをする向井の姿に釘付けになる。そうして、ライブが始まった。
まるで爆撃を受けているような、とてつもない音の連なりが襲ってきた。身体の中でそれが、猛烈に幸せだ!という思いに変わる。音楽の力というものはほんとうにあったのだ。
Crazy Days Crazy Feelingになると隣のお姉さんが高く手を挙げて音楽に乗っている。ふと横を見れば、恋人が涙を流しながらライブを観ていた。一生において、なければならない瞬間のひとつだと思った。もしも逃していたら、その後の自分は確実に無い。ライブが終わった後、会場を出ようとする時に「病気、治ったと思う」と恋人へ言っていた。
68位:あの世で罰を受けるほど(KIRINJI)
大好き。確かたまたま聴いた時に、イントロにスピッツの「裸のままで」を感じて、それでもっと聴いてみようと思った覚えがある。
ロックンロール!というフレーズで始まるサビに、
最高に勇気づけられる。
そして最後の、
Darling,darling,darling
Rock me baby,all
through the night
Yeah,all through the night
抜け殻を満たしてくれ
という終わり方もほんとうに格好いい。こういう歌から、言葉を貰うのだと思った。
67位:人生を語らず(よしだたくろう)
この歌を格好よく歌う事ができたら、その時はほんとうに格好いい人になっているのだろうな。今じゃ、小童も小童だ。死ぬまで小童のままかもね。
66位:みなしごの雨(青葉市子)
「月の丘」の次に流れる歌。
この歌で歌われる言葉はとてもうつくしい。
星屑のさざ波が
孤児たちを濡らしてく
で始まる。今後の自分に、大きな影響を与える1曲になると思う。青葉市子の好きな歌があったら、ぜひ教えてください。
65位:乱視(星野源)
松川と、出会う事ができてよかった。この人の事も、皆んな大好きなんだよな。僕は今年、彼女からいくつも好きな歌を貰った。
彼女が1年生の頃に書いた小説を読ませて貰って泣いたことがある。その時から、この人の事を信頼しようと固く決めた。いい人と信じきることにした。そういう書き手と出会えて幸運だ。文学を続ける理由はまず自分のために他ならないけれど、彼女の存在はとても大きい。最後の年まで、そういう出会いのある学生生活だった。ほんとうに転学部してよかった。
64位:バーチャルセックス(betcover!!)
馬鹿野郎!という一言から始まり、その疾走感のまま駆け抜ける。
聴いている時に、自分は無敵だと思わせてくれる歌が幾つかあるけれど、この歌はそんな歌だ。
63位:日々の手触り(Bialystocks)
僕には前に紹介した花ちゃんの他にもう1人、花ちゃんという友達がいる。いつもあたたかくて、最高な友達。
春頃、彼女に教えて貰った「ひらやすみ」と「A子さんの恋人」という漫画の聖地を巡る旅をした。阿佐ヶ谷と日暮里と上野。巡っている最中、花ちゃんは漫画を開いて、ここだよ!と嬉しそうに何度も声を上げた。フィルムカメラで何枚も写真を撮った。美味しいジェラートを食べた。
夕方頃になって辺りが暗くなってきた頃、上野公園の中にあるスタバで飲み物を買って、空いていたテラスの席で学生時代の事を振り返ったり、最近よく聴いている音楽の事を話した。
Bialystocksの「灯台」を教えて貰った。「日々の手触り」はその次に流れる歌だ。
星がこぼれる
月がみちてゆく夜は
という冒頭の歌詞を聴けば、あのテラス席での肌寒い夜を思い出す。今となっては遠くきらきらとした思い出になってよみがえり、ああ楽しかったなと考える。
62位:感謝(驚)(Fishmans)
Fishmansの中で、今いちばん好きな歌だ。確かスピッツの「謝々」を聴こうと思ってApple Musicで調べた時に、謝と打ち込んだらこの歌が出てきてそれが聴くきっかけになったような気がする。
深くは言わないけれど、もうめちゃくちゃいい歌なんだから!
61位:うちのお父さん(かぐや姫)
2023年、嫌なことがたくさんあった。けれども庄野潤三の家族や島田さんに出会えた嬉しい1年でもあった。
初めて島田さんや龍也さんの姿を拝見した石神井ふるさと文化館での講演会にて、龍也さんがこの歌を歌ってくれた。何だかその突拍子もなさに、衝撃を受けて忘れられずにいた。小説で描かれている庄野家はほんとうにあるのだと感動した。島田さんによれば、龍也さんはいつも父の庄野潤三にリクエストされて、歌っていたのだという。そんな2人と文章教室を通して関わり合った。
ゴールデンウィークに帰郷した時に、両親によく連れて行ってもらったスナックでこの歌を歌った。父の前でだ。父は、
「持ち歌にした方がいい。完璧だったから」
と褒めてくれた。
縁があって、庄野家で開催される文章教室に参加することになった。島田さんを中心に、庄野の小説にも出てくる書斎で机を囲む。
僕はこの教室で、浅利のことを、交友を深めた詩の仲間達のことを、癌になったことを、さつきそれからさわこのことを、先生のことを書いた。文章教室の仲間と島田さんへ伝えたいと思ったことを毎回題材にした。龍也さんと敦子さんが、僕たちの姿をいつも見守ってくれた。
文章教室が終わったら、日が沈むまで近くの公園でフットサルをする。それが楽しい。龍也さんは誰よりも年上だけれど、いちばん元気にサッカーボールを蹴り、走り回る。みんな元気が足りないぞ、と叱咤する。はい、と僕たちは答える。そんな姿を見ながら、隊長!と親しみを込めて呼ぶ人もいれば、龍也さんの可笑しな姿に笑ってしまう人もいた。2ヶ月に1度の土曜日、僕にとっては夢のような日々だった。
60位:Hello,goodbye(ゆうらん船)
今年の初めの頃、ゆうらん船をよく聴いていた。夏頃から色々とあって今振り返ると、その頃の自分とは確実に何かが変ってしまったのだなと思う。ゆうらん船をいいと思っていた自分は、未だにまっさらな春のにおいの中にいる。でもちょっと過去のことだ。それはもう戻ってくることはないけれど、歌だけはその頃の時間を閉じ込めるようにして、あの頃に感じていた感触を守っていてくれる。歌を聴くと、それを好きだった頃の気持ちや空気のことを不思議と思い出せる。
59位:あの娘はあぶないよ(小島麻由美)
松川がカラオケで歌っていた。
小島麻由美、これからどんどん好きになってゆくのだと思う。
歌の後半、ラーララといったリフレインが続き、それがとても好き。言葉にならない歌詞のところで、何かを感じさせてくれる歌は、はーいいなあと思う。andymoriの「楽園」もね。
58位:レイトショー(ザ・おめでたズ)
4月になって恋人の職場に新しく入ってきた女の子は、天真爛漫という言葉がぴったりで、会うといつも明かるい気持ちをくれる。四六時中ふざけていて、ずっと変顔をしている。恋人がその子の表情の1つをよくするようになった。
その子が好きだと言ったアーティストの歌が気になり、こっそりと聴いてみた。
ライトなHIPHOPの歌で、この軽さがとても心地よくて何度も聴いた。
57位:最後の将軍 feat.森の石松さん(レキシ)
元気かなとこの歌を教えてくれた子の事を考える。卒業式の日、大学の近くの珈琲館でばったり会った。「会えてよかった」と、彼女に言った。
松たか子の歌う歌はとってもいい。1番が松たか子で2番がレキシ。思えば彼女からはデュエットの歌をよくおすすめされた。
男女の声が別々になって、重なり合って、その時に心がぎゅうと締めつけられて感動してしまうね。
56位:いつもだれかに(サニーデイ・サービス)
このアルバムのサニーデイ・サービスが大好き。
あっという間に終わってしまうのだけれど、いつも心の中に風を起こしてくれる。飄飄と風香りねむたくなるという感じで。
55位:初恋に捧ぐ(スピッツ)
大好きだ。
初恋がいつかと訊かれたら、もう答えられない。そんなものとしばらく距離を置いてしまったから、もう遥か遠くに往ってしまった。やっぱり忘れっぽい。
「青い心を失くしながら しがみつく日々を選んだ」とこの歌では歌うけれど、自分にもう青い心がないかもしれず、その終わりがいつかも辿ってゆけない事が淋しい。憶えていないのだ。
「闇の深さに怯えながら それでも覗き込むのさ」と歌う2番のはじめにいつも心がひっかかる。この歌の何が好きか。それは確実に失ったり、できなくなってゆく事に対して強い願望を乗っけて力強く歌う。初恋に捧ぐ、とは追えないものを追う覚悟のことだと思っている。だからこの歌はいつだって、力強く感じる。
54位:Tシャツに口紅(ハナレグミ)
みんな夢だよ 今を生きるだけで
ほら息が切れて
明日なんか見えない
というように、この歌の男女はもう限界のところまで来てしまった。そしてそのぎりぎりのところから歌が始まる。2人は海まで来て、夜明けを迎えてしまった。
歌の途中で2人がこれまで過ごしてきた時間が長かったことが淡々と明かされてゆく。そして、
これ以上君を不幸に 俺できないよと
ポツリと呟けば
不幸の意味を知っているの?なんて
ふと顔をあげて
なじるように言ったね
というやり取りののち、2人は浜辺に残される。歌は、行き交う波のようにずっと同じはやさを保ったままで、終わりを迎える。やっぱり好きな歌だ。
53位:雨(Suchmos)
雨の日に聴くには少し格好良すぎるのだけれど、この歌が似合う雨はどこの街だろうと考える。僕は知らない。ただ、コンクリートの広がる都会的な街ではない。もっと似合う街があるはずだ。日本ではないのかもね。
52位:花嫁(はしだのりひことクライマックス)
なんて良い歌なのだろう。結婚する相手のことをただ信じて、汽車に飛び乗りその人のいる街を目指す歌。タブレット純、口ずさんでくれてありがとう。
命かけて燃えた
恋が結ばれる
という歌詞がとても好き。こんなふうに結ばれる男女に、心の底からの喝采を送りたい。
51位:三途のリバーサイド(ザ・おめでたズ)
ザ・おめでたズでいちばん最初に聴くようになった歌。
残機無限 壁透過
あの子のスカートの中
のお茶目な感じが、恋人の同僚を彷彿とさせる。