「不格好経営」で分かる南場会長の面白さと鉄人ぶり
突然だが、私は自他ともに認める「本読まない人間」だ。
とにかく本を読むことが少ない。読むようになったのも社会人になってからで、高校~大学時代に至ってはひたすらゲームと課題に明け暮れていた。
おかげで、この間トータルで1,2冊くらいしか読んでいないという有様である。
そんな訳か、理系科目は良いのに国語のテストではいつも点数が悪く、特にセンター試験の現代文・小説は散々であった。まさに典型的な理系少年だった。
そんな私でも一時期、無性に本を読みたくなる時期が奇跡的に来たことがある。
その時は1~2週間に1冊のペースで本をどんどん読み進めていったが、読んだうちの約半数が創業記にあたる。言わば、今ある大企業の社長が起業してから今までの軌跡を語るというものだ。
この創業記ブームに火をつけた本がこれ。
怪盗ロワイヤルなどがヒットし、人気を博したDeNAの創業者 南場智子会長が書く「不格好経営」だ。
なぜ、これを購入したかというと完全にタイトルで判断。まさにタイトル買いである。
「タイトル的に面白そうだな~、あれ、これDeNAのやつじゃん!買ったろ!」
くらいの軽い気持ちで、アマゾンでポチった記憶がある。
ここからしばらくの間創業記にハマり、ココ壱番屋・ヤマト運輸・サイゼリヤ・フレッシュネスバーガー・ニトリなど色んな本をアマゾンで買っては読み漁ることとなった。
(その後はバドミントン活動を本格化させたため、この熱はほどなくして治まった)
最近のコロナショックによりStay Homeが続きスマホやらPCを開く機会が多かったので、夜くらいは読書しようと決意。そこで、過去に読んだ本をもう一度読もうと引っ張り出してきたところ、この本を見つけた。
久しぶりに読みこの本の面白さを再認識し、この本の魅力と南場さんすごいよ!と思いこの記事を書くこととした。
いつ読んでもこの本は普通に面白いし、読みやすい。そして、如何にしてDeNAが大企業へ成長したかが直ぐに分かる。この本を読んだおかげで、すっかり南場会長のファンにもなってしまった程だ。
ここで、この本の魅力と南場さんが如何に鉄人だったかを語っていきたい。
1.表現が面白い
この人は表現が面白い。いちいち、面白い。面白くてつい読んでしまう。
ここまで表現が面白い創業記はなかなか珍しいように思う。
マッキンゼー時代にクライアントの次長の方から飲みに誘われて行った際、途中で貧血を起こしてしまいトイレに行こうと立ち上がった時の描写。
「トイレに行きます」と立ち上がって2,3歩歩いた途端、後ろにバタンと倒れてしまった。
ビシッとスーツを着た20代女性経営コンサルタントが床の上に大の字になった。
「どうしたんですか、南場さん!」というクライアントの声が意識の遠くに聞こえた。すぐに意識は戻ったが、床が冷たくて背中がなんだか気持ちいい。
(不格好経営 第2章 生い立ち P61)
不覚にも、この描写には声を上げてあげて笑ってしまった。
他にも、マッキンゼーの最初の仕事の話で
呆れたアメリカ人の上司は「証券化って、だから、こう、権利をchop upすることですよ」。
……。切り刻むのか?住宅ローンの契約書を切り刻む?それはまずいでしょ、切り刻んじゃまずいでしょ……。
(不格好経営 第2章 生い立ち P58-59)
こんな感じで面白表現が随所にあり、ユーモアに溢れている本だ。創業記はだいたい、会社の歴史をつらつらと真面目に語るものが多いがこの本は違う。ユーモアにあふれている。
そして、南場さんの表現力の豊かさに気づくのにそう時間はかからないだろう。
2.リアリティがある
2-1.時刻の描写
時刻が本の中に散りばめられており、リアリティがある。創業記を色々読んだ私でもここまで精密な描写があるものは少ないように思う。
このような精度の極めてあやしいテストも終わり、やっとこさで漕ぎ着いた。トラブル発覚から5週間後の1999年11月29日、午前5時17分、ネットオークションのビッターズ(注4)が誕生した。
(不格好経営 第1章 立ち上げ P44)
やっとできたーーーー!という歓喜の声が聞こえてきそうだ。
とても苦しみ苦しんだ後に新規ソフトを完成させた経験は私自身も多くあるので、この喜びは共感できる所が大いにある。
2-2.家族の描写
生い立ちがこの本では書かれているが、とにかく細かく書いてあり南場家がどんな雰囲気が想像しやすい。文章中にはお父さんがよく出現する。
身長182センチ、体重100キロ以上という父の体躯もまた威圧感を増していた。一度何を間違ってか、酔っぱらいのチンピラがわが家に侵入してきた事がある。
居間で夜更かしをして遊んでいた女3人が震え上がっていると、奥の寝室から父がノシッ、ノシッと出てきてチンピラを玄関まで下がらせ、「名乗れ」と一言いい、それから勤務先と社長の名前を言わせた。
(不格好経営 第2章 生い立ち P50)
こんな感じでお父さんめっちゃ怖いけど、家族をいざという時に守ってくれるものすごいいいお父さんというのがひじょーーーーによくわかる。
3.スーパーマン疑惑
3-1.いつ寝てるの?
この本を読んでいると創業当時の南場さんが心配になるほど寝ていないように思える。いつ寝てるの???ってまず思う。
アドレナリンが24時間フルでドバドバ出ているの?ってくらい寝てない。そのくらい仕事に打ち込んでいる姿に正直こちらが驚くと同時に、やる気に満ちた姿が伝わってくる。
マッキンゼーの最初の頃はこんな記述がある。見ているこっちが心配になってしまうくらいだ。
結局、朝9時の指示の意味を理解するのは夜中の1時。一事が万事その体たらくで朝4時、5時の帰宅は当たり前。新米は9時にはデスクについている必要があり、平日の睡眠時間は2,3時間。寝不足で日中は抜けがら状態になってしまい、頭が冴えはじめるのは夜中1時。結局朝帰りのパターンが続き、毎日出勤前に「こんな会社辞めてやる」と言いながらシャワーを浴びるようになった。
(不格好経営 第2章 生い立ち P59)
なんでこんな生活続けられるのか・・・・すごいの一言。
(こんな生活ずっとしてたら絶対倒れる自信ある)
更にすごいのがDeNA立上げ当時だ(ビッターズ作成時の事)。
決めたその日の午後6時から共同作業が始まった。午後6時から朝6時までの12時間、銀座のリクルート本社でサービス仕様の議論を行い、その後急ぎ渋谷に戻って朝6時から午後6時までの12時間以内に、前夜の議論で決めたことをなんとか仕様書にまとめあげる。そしてまた銀座へ向かうというパターンを続けた。
睡眠時間は銀座・渋谷間の移動時間30分、往路と復路の2回のみだ。仕様書ができるとシステムベンダーのNさんに送る。
(不格好経営 第1章 立ち上げ P25)
相当ハイになっているのは間違いない。私も、経営者やフリーランスの方で何人も知っている人がいるが、彼らは例外なくタフだ。体力の底が見えない。
ただ、ここまでタフな人はそうそういないだろうと思わせる内容だ。
3-2.周りの人もハイスペックで鉄人
個人的な意見をバシッと言ってしまうと、新潟高校もそうだが更にマッキンゼーなんてそうそう入れるような会社ではない。
南場さん本人も実はスーパーハイスペックGirlな訳である。
そんな人の周りに集まる人たちもやっぱりハイスペックだなぁと感じる。類友は真理だなぁと実感させられる。
焦りと疲労で悲観的になった私は、ロンドンにいるナベに電話し、文字通り泣きついた。
ナベは小説家への夢を(いったん?)諦め、DeNAに戻っていたが、その後退社し、2010年にイギリスで起業していた。医者か医学部生でプロジェクトチームを組成したいが尋ねる私に、「ぼくがやります」と、立ち上げたばかりの会社をおいて東京に飛んできてくれた。
(不格好経営 第6章 退任 P175)
イギリスで起業??医学プロジェクトチームやります??ほえ??となる。少なくてもこんな大人は周りに存在しない。
住んでいる世界が違いすぎた。
条件はたったひとつ。自分より優秀なヤツ。川田は、大学の研究室の後輩だった茂岩を日本IBMから連れてきた。自称超優秀で自分よりすごいヤツが見つからないナベは、困ったあげく同じ遺伝子だからと兄貴をアクセンチュアから連れてきた。
(不格好経営 第1章 立ち上げ P20)
揃いも揃ってハイパーマン。
私の周りもハイスペックな方たちばかりだが、さてこの私はというとハイスペック男にはほど遠い人間である。
だけど、この人達に届かなくとも同じようにバイタリティをもってバリバリ仕事ができたらなぁと強く思う。
ということで、「不格好経営」の本を紹介してみた。皆もこの本を読んでみてほしいし、後半以降に書いてあるDeNAの経営方針や育成の仕方はとてもタメになる。
特に、人材採用については本当に素晴らしい考え方を持っていると思う。新人の育成方法も大胆だが、その分しっかり希望や配置の優遇などで評価してもらっているのは正直羨ましい限りだ。
若い人が育つシステムとして成熟されているように思うし、会社が嫌だ・仕事が嫌だという理由で辞めるような人は少ないように思える。
私自身もこうやって程よく評価してもらえたら、もっと気持ちよく働けるんだけどなぁと思ってしまう。まだまだ評価できるレベルになってないだけかもしれないが。
その育成方針について、詳しくは本を実際にとって読んでみてくださいな。
気になる方はAmazonのリンクからどうぞ。私とリアルで知り合いの方には貸出もOKですよ。
今回はちょっと変わった話題をお届けしました。
それでは!