ママになるための準備
マタニティマークを鞄につけ、通勤するのは慣れないものだし、周りの目がとても気になっていた。
妊娠初期は当たり前だけどお腹は目立っていないので「こいつほんまに妊娠してるんか?」と疑いの目が向けられてるんじゃないか。駅のホームで歩いていたら、人からぶつかられるんじゃないか。
考えれば考えるほど、ネガティブなことばかり。
時には、マタニティマークを見て席を譲ってくださる方がいた。ネガティブ思考全開の時に優しくされると涙が出そうになる程、嬉しかった。黙って下を向いて涙を流したこともある。
お腹は大きくないけど、妊娠初期は本当に体がだるくて座りたいというのが妊婦の本音。そんなこと通勤ラッシュ時の人からしたら知ったことじゃないし、みんなスマホを見ているのでマタニティマークに気づく人なんてほとんどいない。
よし、頑張ろう。と思いながら電車に揺られ、体がふらついても大丈夫な扉の近くに寄りかかったり、吊り革を握りしめて立っていた。
少子高齢化時代の妊婦さんたち、本当にお疲れ様ですと頑張りましょう(泣)と思った。
街中でマタニティマークをつけている人をみると心の中で頑張りましょうね!と何度思ったことか。
共に頑張っている仲間のように思え、気づけばマタニティマークを見るとよく目でおい、今何ヶ月なんだろう?と考えていた。
ベビーカーを押しているママさんを見るとあの人も乗り越えたんだな、自分も頑張ろう!と励みにもなった。
しんどいながら通勤していたけれど、外に出れなくなるほどつわりはひどくなっていった。
微熱が数日続き、家でぐったりだるくて横になっているのが精一杯な日。
空腹になると気持ち悪くて何か口に入れていないと落ち着かない日。
かと思えば、食べたものが気持ち悪くなって突然吐いたり、昨日食べれていたものが今日食べれなくなったり。
吐き気でトイレから出れず、壁にもたれかかって半日終わる日。
匂いも敏感になり、鼻にティッシュを詰めながら料理をした。
1番辛かったのはご飯の炊ける匂いと冷蔵庫の匂いがダメになり、毎日辛かった。
吐いてしまうかも。と考えると怖くなり、吐いても楽なものを食べるようになった。体重も妊娠前よりも減った。
貧血で人生初の点滴をしてもらうこともあった。
そんなつわりがひどい中、役所に取りに行った母子手帳を受け取った時は本当に嬉しかった。
これからお腹の子の成長がこの手帳に記録されるのかと思うとワクワクが止まらなく、しばらくページをめくって読んだ。
嬉しすぎて何度も何度も中身を見てはウキウキした!
お腹の子のためにもちゃんと食べなきゃ!栄養取らなきゃ!この子がちゃんと成長してるかな。今日の夜もつわりに襲われるのかな。
考えすぎて、不安と恐怖で眠れない。
考え出したら、ポタポタ涙は止まらなくなる。
鼻水をすする音で起こしてしまったのか、旦那が静かに体をさすってくれた。
涙ぐしょぐしょで怖くて旦那にぎゅっと抱きついた。
弱虫だなあ、ママ強くならなきゃだよね。とお腹の子に話しかけた。
吐きづわり中に【つわりが落ち着いたら食べたいものリスト】を作り、いつか終わる!今だけ今だけ!と自分に言い聞かせる日々。
1日振り返ると、お!今日吐いてない!吐くのが当たり前になっていたので寝る前に気づく。
もうすぐ終わるかな。かと思えば次の日に吐くこともあった。
まだ終わらないか…
日に日に吐く回数も減り、少しづつ食べれるようになっていった。
食べたら吐いてしまうという恐怖から解放され、全部食べれた!美味しく何も考えずに食べれた!あとから気持ち悪くなることもない!
本当に嬉しかった。
それ以降はうがいをしている時に嗚咽がきて、うっとなることもあったが、吐き気は減った。
嗚咽で終わる日が来て安心し、気づけば嗚咽も終わっていた。
本当に長かった。
人生で考えたらほんの一瞬だが、初めての妊娠、初めてのつわりで終わらないんじゃないかと不安に思ったり。
【つわり いつ終わる】【つわり 楽になる方法】など毎日毎日つわり関連を調べ倒しては、ブルーライトの光にしんどくなることもあったり。
数ヶ月つわりが続く人、食べづわりだけの人、出産直前まで吐きづわりが続く人もいるとインターネットで調べて、絶望したこともあった。
本当に人それぞれ。
インターネットの情報が全てではないけど、この期間は検索履歴やSNSのおすすめ一覧にはつわりのことばかりだった。
振り返れば1ヶ月半だけか。と思うけど、その期間は本当に長く感じ、光が見えない洞窟の中にいるように感じ、辛くて、しんどくて、たくさん泣いた。
でもその分強くなれた気がする。
一つママになるための準備ができた。
初めての我が子からの試練。
ママ乗り越えたよ。次はどんな試練が待ち構えているのだろう。