始まる、終わりまでの1ヶ月

歴史的瞬間だと、私の耳に聞こえてくるのはニュースのアナウンスだった。

2019.4.1、周囲が「平成最後の」と言うフレーズを口にするたびに「おい、平成はまだあと1ヶ月あるぞ」と心で呟いてみる。

いつだかの、平成おじさんと呼ばれたあの人が世間に伝えたフレーズと同じように
「新しい元号は、『令和』であります」と
液晶越しに、言葉を微かに震わせながら
官房長官は文字を掲げた。


今日はいつもよりそわそわしていた。
意味もなく早起きを頑張り、朝を迎えてLINEを開く、外は晴れ、桜が満ちている。
同じようでいつもと違う感覚に覆われていた、
月初めの月曜日。

「令和」であると耳にした瞬間。
万葉集から引用してきたと伝う由来。

これが果たして歴史的な瞬間だったのだろうか。
変に、作られすぎた架空の話なのかもしれないと
テレビ越しに勝手に考えた。根拠も何も出てこなかった。

ああ、案外区切りの瞬間はいつもと変わらず呆気なくすぎていくものなのか、と
物事の単純さに違和感を覚えた。

今日はたぶん、特別な日だったのだと思う。
30年前も、同じように特別だったのか。

「平成」という言葉は今や、馴染みすぎて何も思えないが、「令和」きっと同じように数年後、特別な言葉なんてものではなくなっているんだろう。

始まる4月、始まる区切りへの1ヶ月。
誰のためであるかは上手くまとまらないが、
最後の1ヶ月を、少しでも普通から、
ずらす為の記録である。

2019.4.1

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