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観光とは、「行ってあげる」ものではなくて「お邪魔する」もの。

この10月、東海道を250km刻みに移動しながら、浜名湖〜京都〜岡山〜徳島と回ってきました。クルマでの移動だったし、高いホテルに泊まる予定は無かったので”GoToトラベル”とは関係ないのかと思っていたところ、宿泊先で手続きをし直してくれたりして、予期せずキャンペーンの恩恵にあずかることもありました。首都圏で想像しているよりも、このキャンペーンはそれぞれの観光地にとって切実なものであることは確かです。

一方で、京都で乗ったタクシーの運転手さんの言葉も強く印象に残りました。
「たしかに今年の春から夏は苦しい思いをしました。でも、だからと言って、コロナの前の京都には戻って欲しくないんです」
いわゆるオーバーツーリズムの問題。駅前発のバスは、キャスターバッグを転がす外国人観光客で溢れ、地元の人が安心して乗ることができない。とか、駅の構内に車座になって座る、生活習慣の違う外国人観光客の問題とか。

日本人観光客だけで、日本の観光地を立て直せないか。

「インバウンドと言ったところで、ここ数年のことでしょう。なのに今では外国人観光客がいないと観光地は成り立たないと言われている。おかしなことですよ。まず始めに、日本人のお客さんだけで観光業が成り立つようにしておいて、外国人のお客さんを受け入れるのはそれからだと思います。このキャンペーンが、そのきっかけになればいいんですが、国はすぐにでも外国人観光客を受け入れたいんでしょうね」

何かと批判の多い”GoToトラベルキャンペーン”ではあるけれど、これまで行こうと思わなかった観光地に行く機会が増えるのであれば、それなりに意義のあるものになりそうだ。ただし、そのためには観光客も意識を変えておく必要がある。何より気になることは、「おカネを使いに行ってやる」という態度が垣間見えること。それでは決していい旅にはならない。

……などと考えていたところ、ちょうど2年前の今頃、facebookにこのようなことを書いていたのだった。僕が言うのだから”地味な旅”の話になってしまうけれど、もう一度ここで確認しておこうかな、と思います。では、以下に。

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「観光」って何だっけ?

2年前の今頃も、今年と同様にクルマで中国地方を回っていました。運転中はあまり考えることがないので、というよりも、あるひとつのテーマを集中的に考えることができるので、関東への帰り道は、ボケ〜ッと「観光」という言葉の意味について考えていました。
「観光」です。文字の上では光を観る、と書きます。その言葉の通り、僕はずっと秋の斜めの光が山や稲穂に当たるようすを「きれいだな」と思いながら過ごすことができました。それを観光と呼ぶのであれば、観光とは地元に一円も落ちない行為です。

地方に行くと、いや、今では国を挙げて「観光客誘致」が話題になっていますが、果たして観光客とは誘致すべきものなのか。とても疑問に思っています。
たとえば多くの観光客を集める神社仏閣や歴史的建造物は、観光客を誘致するために建てられたものではありません。景観や伝統芸能は、地域に住む人々のためにあります。それを見に行く観光客は、見せてもらいに行くのです。人の家に上げてもらうのと同じです。

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だからこそ、もしも観光客誘致をすべきなのであれば、まずそのような地域のお宝を守り、そこに予算や人の力をつぎ込む方が、よほど「観光」につながるのではないか、なんてことを考えていました。新たに何かを作る必要なんて無いでしょう。

僕には撮り鉄というか、撮り駅という、あまり人に自慢できない趣味があるので、鉄道さえあれば、いわゆる観光資源なんて無いと言われる地域にも行きます。そして同時にその地域の人々の普通の日常を眺めながら、オレも頑張ろう、なんて思いながら帰ってきます。その土地に泊まれる施設があれば、一泊くらいすることもあります。

普通の町の、普通の暮らしにお邪魔する観光だってある。

「この街には何もない」と言う人は多いけれど、その土地ならではの風景や暮らしがあります。観光させてもらう者にとって、それだけで充分なのです。そこにナントカ先生の建築によるナントカ記念館なんてものができたとしても見たいとは思いません。
評判の悪い箱物行政は、さすがに目立たなくなってきたけれど、東京で有名なナントカ先生を起用した箱物や講演は相変わらず増えています。アートフェスのようなものも、二番煎じ三番煎じとなるとちょっと怪しい。そんなもののために、地域の人たちの大切な日常が削られてしまっては元も子もありません。

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そんなことより、それぞれの地域に今あるものと、地域の人が大切にしているものにおカネを使ってほしい。時間はかかるかもしれないけど、それが唯一、その地域を「観光させてもらう」理由なのだから。日本全国、みんなで普通の暮らしを守りましょう。
それが今回、僕が思った「観光」なのでした。地方創生文脈からは少し離れた、あくまでもヨソ者目線の観光の話です。勉強不足は百も承知。でもなぜか、僕がいいと思うものは、すべて普通の日常から消えようとしているものばかりなのです。だから僕は出かけます。そして消えていなかったら、また何度でもお邪魔しようと思います。

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このページの写真は、すべて鳥取県を走る若桜鉄道の隼駅。この駅舎は昭和5年の開業以来、変わらない姿で親しまれています。スズキのオートバイ、『ハヤブサ』のライダーにとっての聖地でもあり、若桜鉄道はスズキとタイアップしたラッピングトレインまで走らせています。古い無人駅が地元の地域おこしに役立っているようすが、とてもうれしい。

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