UXリサーチのスキルの磨き方-ユーザビリティ評価編-
✍️私は事業会社で品質改善の部署に所属しており、3年ほど前からUXリサーチ(中でも検証的な調査や評価)を業務としています。
今となっては、業務でユーザビリティ評価からの改善提案をやったり、コンセプト評価をやっているわたくしですが、初めはメインの業務である開発をしつつ、その傍らで時間を無理やり捻出し、書籍を読んでユーザビリティ評価をやってみて、というとこからのスタートでした。
職場には、同じようなことをやっている同僚も上司もおらず、頼れるのは自分だけ。とにかくやってみるだけの気持ちで進んできたここ数年ですが、その数年前の私が、今、目の前にいたら、こんなアドバイスをするだろうな、ということをメモしてみました。(なので、UXリサーチの一部であるユーザビリティ評価についてピックアップしています)
UXリサーチのやり方などの方法については、書籍やブログにもノウハウがあると思いますので、あえて書いていません。
私もまだまだ半人前ですが、『ユーザビリティテストをやってみてるけど、これからどうしたらスキルを伸ばせるんだろう?』と数年前の私と同じような状況になっている人への応援メッセージになったら良いなと思います。というか、気持ち的には、私の屍を越えて行くが良い!といった感じです。
1.ユーザビリティテストをやりたい!と思ったら、この本がおすすめ
樽本さんの『ユーザビリティエンジニアリング』もしくは『UXリサーチの道具箱』がオススメ。とにかくオススメ。2-3時間で読めるからとにかく一通り読んでほしい。
サービスを使いやすくしたいんだという方には、サービス開発に関する内容がメインに書かれている『ユーザビリティエンジニアリング』がおすすめ、仮説を立てるところからサービスを使いやすくするところまで全般的に知りたい方には『UXリサーチの道具箱』をおすすめします。
書籍だけを読んでとりあえずユーザビリティテストやってみるのもいいけど、できれば、この書籍の著者の樽本さんがたまにやってるユーザビリティ系の実践ワークショップに参加できるといいと思う。ユーザビリティテストやUXリサーチのワークショップは、他の方もいろいろ開催していると思うけど、私が参加した中だと、樽本さんの半日くらいかけてやってるワークショップがオススメです。
そのあとは、ひたすら実践していくことをおすすめします!
2.ユーザビリティ評価をするときは、レポートにまとめるまでやろう
評価をするときは、専門知識に基づく評価(エキスパートレビューなど)とユーザーが関与する方法(ユーザビリティテストなど)をセットにしてやって行うこと。そして『エキスパートレビューやる→ユーザビリティテストやる→結果をレポートでまとめる』の一連をやっていくのがオススメです。
なぜなら、エキスパートレビュー→ユーザビリティテストの順番でやることで、『自分はこうレビューしたけど、実際のユーザーはそうじゃないんだ』『あれ〜!これ、レビューで気づけた内容だよね〜』と、自分のバイアスや考え方の癖(気づいやすいところ、気づきにくいところなど)に気づけるんです。
そして、ユーザビリティ評価をやった内容を自分なりにレポートにまとめることで、『あ〜しまった!絶対覚えてると思ってたけど忘れちゃった〜』と何をどうメモっておかないといけないかとか、『あれ?知りたいことが全然解決されてない!』と目的のためにどういう評価をしないといけないかわかるようになり、つきましては、どういう調査計画を立てないといけないかわかるようになるからなのです。
そして、気がすむまで何度も評価してみたらいいと思います!
というのも、最初からちょうどいい具合がわかるはずもなく、やり過ぎるからこそ「ここまではやらなくても良さそう」「このあたりがちょうど良さそう」がわかるんじゃないかなと思うんですね。感覚的なことは、言語化された状態では理解しにくい。ただ単に私が要領悪いだけかもしれませんが。
とりあえず、とことんユーザビリティ評価やってみて、振り返りしておくのがオススメです。やってみたけどよくわからないところ、しっくりきてないところを、メモしておくこと。ただ闇雲にユーザビリティ評価するのは、オススメしないです。
(余談)
私の場合は、幸いにも業務にユーザビリティ評価を組み込めたので『やってみる』体験が豊富にできました。3ヶ月連続、毎週ユーザビリティテストとそれに伴うサービスの改善をする計画をたてて実践しました。水曜日にテストをやり、木曜に改善案を考え、金曜と月曜に開発、火曜日はテストの準備と、今考えると鬼かと思いますね。。。
そのおかげで、『まだユーザビリティ原則の理解が浅い』『最初はとりあえずこういう話して場を和ませよう』『こういう態度で接したらいいんだ』『聞き方間違えた』『ここはエキスパートレビューでも気づけた』『1人やったら次の人まで30分くらい感覚ないとつらい』『連続してできて3人までか。。。』『毎週やるのはつらい』とか、感覚でしか獲得できないところが結構溜まったと思います。
業務としてユーザビリティ評価ができない場合には、担当しているサービスでもいい、自分が普段使っているサービスでもいい、月に1回はユーザビリティ評価して軽くレポートをまとめるくらいしてみるのが良いと思います。(私は業務としてできないときでも、こっそりやってました)
担当してるサービスだと、思いもしなかったところで操作に躓いているところが見つかることもかなり多いだろうし、サービスの概念として説明が足りないところを知るきっかけにもなります。
また、自分が担当していないサービスの場合だと、評価をする前に明確にしておかないといけないポイントがわかったりします。業務として実践できる場合でも、担当してないサービスの評価はやってみるといいと思います。サービスの評価や評価からの改善提案は、ドメイン知識がないとできないことも多いです。そういうことを実感できると思います。
3.『ユーザビリティ』のヒントを知っておこう
実践だけでは知識はついてこないんですよね〜〜〜。
なので、感覚的なところは実践で、知識は書籍でつけるのが吉!Webの記事より、書籍をオススメします。
ひたすら実践していく中で、このあたりとか読んでいくと、観察したり評価していくときのヒントになります。ユーザビリティ評価してくと、UIはどうしてもついてくるとこなので、知っていると気づけることも多くなるんじゃないでしょうか。
私は開発出身で、こういったおすすめ書籍もどうしても開発系に偏ってしまうので、ほどほどに参考にしてくださいませ。
<ユーザビリティ系>
上記の本は、『ウェブユーザビリティの法則―ストレスを感じさせないナビゲーション作法とは』と同じ書籍を翻訳したもの。
ユーザビリティテストの実践に関することを詳しくし知りたかったら『ウェブユーザビリティの法則―ストレスを感じさせないナビゲーション作法とは』の方が記載箇所が多い。
BADUIの本は、ユーザインタフェースとタイトルにあるけど、ユーザビリティ系とカウントしたい。例として出てくるのが日本のものなので、身近な使いにくさをどう表現したらいいか、とても参考になる。
ユーザビリティ系の気軽な感じだと、こんな感じになるかなー。
<UI+心理学系>
『続・インタフェースデザインの心理学』もオススメ。シリーズでいくつか出ています。
などなど。
UI+心理学系の本はたくさん出ているので、内容をみて、自分の好みのものを読み込むだけでも良いかもです。
他にもユーザビリティ評価だけなくくりではないけど、『誰のためのデザイン?』だったり『融けるデザイン』だったりも読んでおくとユーザビリティやUIだけでなく、インタラクションデザインやインタフェースの知識にも触れることができます。
とにかく、実践だけでは知識はついてこないので、ユーザビリティのヒントを得るための知識をつけることは、実践とは別にやりましょう〜〜。
4.もっと専門的なスキルが欲しくなったら、この書籍!
実践も積んで、書籍で知識もついてきて、『ユーザビリティ評価の一通りの実践もして、自分なりにアレンジできるようになってきたけど、自分のやり方があってるのかよくわかんない』みたいになってきたら、きっとそれは、もっと専門的なスキルが必要になってきてるタイミングだと思います。
同じような業務をやってる人に『どういうことやってますか?』って情報交換するのも良いと思います。だけど『ユーザビリティテストをやってみよう』的なワークショップとかはもう参加しなくていいタイミングとも言えるんじゃないかと思うんですよね。実践もやった&それなりの知識もついたら、もっと本格的な知識を獲得していくのがオススメです。
私が今更たどり着いたバイブルを紹介します。最初からこの本だとつらいと思うけど、もっと原則が知りたい、これまでに紹介した書籍じゃ物足りないと思ったら、もうこれしかない。発行年月とか関係ない。
ユーザビリティの専門的なスキルが欲しかったら、ほんとにオススメです。
ユーザーエクスペリエンスと書いてあるけど、ユーザビリティのこともめっちゃ書いてあるんです、この本。これどうやって評価すればええんや。。。と途方にくれかけたら、これを開けば解決するのでは?!と思うほどのバイブル。
このあたりを本を読んでピンとこなかったら、もうちょっと実践して悩むのがいいかもしれないです。
他にもバイブル的な本は読みはぐっているのが多そうだなと思ってます。
ユーザビリティ評価やUXリサーチしていくならこの本を読むべし、っていうの、教えてください。(誰となく)
あと、書籍で紹介されている論文に当たるのもオススメです。有名なやつだと、翻訳されているものもあったりします。日本の論文はここで探せばいっぱい出てきます。
もちろん、ユーザビリティに関連する知識も入れていくといいです。認知心理学や認知科学、人間工学あたりは基本になるんですかねぇ。
『基礎から学ぶ認知心理学』『教養としての認知科学』はきっかけとして読みやすいのでオススメです。そこから興味の赴くままに進むといいと思います。
(余談)
私の場合、自分が『専門的なスキルが必要になってきてるタイミング』だということに気づかずに、かなり足踏みをしてしまったな、という気持ちがあります。関連する知識にばかり時間をとってしまって、ユーザビリティ評価に関するところは後回しになってしまっていた印象。
なので、『ユーザーエクスペリエンスの測定』を読んだときに震えました、これ1年くらい悩んでたことが全部解決するじゃないかと。そして『ユーザビリティエンジニアリング原論』読んでも震えました、これ、なんでもっと早く読まんかったん?と。
内容がいかつそうな印象があり、それだけで敬遠してたんですが、内容はそんな難しくなかったです(だけど、決して初学者向けではありません!)
本格的にユーザビリティ評価していこうって思ったタイミングでこの2冊を手元に置いて、読む→わからないところは置いとく→実践して悩む→読む→わからないところがわかるようになってる→悩みが解決する→実践する→悩む→読む、というやり方をすればよかったなーと思ってます。
5.関連する知識
私がUXリサーチとUXデザインの間の子のような業務をやっているので、UXリサーチやユーザビリティ評価には直接関係ないかもですが、関連しそうな知識を書いておきます。
HCD系の知識でいうと、HCD-NetがHCD専門資格コンピタンスマップとして公開しているような内容を全般的に持っていたほうが便利です。『要求への評価』をベースとして、他のコンピタンスも一通りわかるよ、くらいになってると、いろんな提案できます。
これ以外にも、『サービスとして成り立たせる』ことを意識したサービスデザイン系やマーケティングなどの知識、『質的なところを扱う』という意味で質的データ分析やインタビューのノウハウだったり、いろんな分野を『一通り知ってる』と、すごい便利。
アカデミックな内容だと『UXデザインの教科書』、実践的な進め方だと『Running Lean』が役にたちました。
あと、提案でプロトタイプ作ったほうが伝わる時も多いから、XDとかFigmaとかHTMLベースとかぱぱっと触れるように、普段から使い慣れておくと作業が早いですね。ユーザビリティテストのプロトタイプでもよく使います。
ひとまずこんなところでしょうか。これから、ユーザビリティ評価していこう、という人の参考になれば幸いです。
Photo by Sammie Vasquez on Unsplash
サポートをいただけたら、美味しいビールをいただきます