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プロスペクトランキング2023(ファイターズ編)11〜20位

はじめに

 前回プロスペクトランキングの1位〜10位を公開したところ、少なからず反響があり、非常に嬉しかったです。色々なコメントをいただいたのですが、「(ファイターズの将来に)ワクワクできた」というものが一番印象的でした。普段Twitterでツイートするのも、ノートで記事を書くのも、すべては好きなチームを応援する手段のひとつですので、これからも一緒にワクワクできればと心から願っています。
 さて、今回のプロスペクトランキングは11位〜20位となっております。前回と比べると知名度の少ない選手が多くなりますが、ダイヤの原石のような選手がいるので、ぜひご覧になってください。また、順位に関しても様々なご意見があると思いますが、あくまで一個人の意見ということで、優しく見守っていただければ幸いです。
※前回の記事から時間が経ったこともあり、一部スタッツやランキング等に齟齬のある箇所があります。ご了承ください。
※最後に気づいたのですが、齊藤伸治投手は25歳で対象外でした。申し訳ございません。ここまで書いてしまったので、このまま投稿しますが、この点だけご了承ください。

対象となる選手

 対象となる選手は以下のとおり。DELTA社の条件に準拠する。

対象となる基準

選考基準

 様々な選出基準があるだろうが、今回は”キャリアを通してどれだけ勝利に貢献できるか”を選定基準とする。つまり、どれだけ多くのWARを稼げる可能性があるかである。投手で言えばリリーフよりイニングを稼げる先発の方が評価は高くなり、野手で言えばセンターラインの選手の方が評価が高くなる。参考とする数値は一軍/二軍のスタッツであり、選手自身の素材としての評価とスタッツ等の定量的な評価を合計して判断する。
 また、上記選定基準(どれだけWARを稼げるか)は「スケール」「実現可能性」の二軸を掛け合わせて検討しており、それぞれ現状のスタッツ身体スペック年齢メカニクスをベースに総合的な判断としている。例えば、スタッツがイマイチでも190cmで155㌔を投げるならスケールは高評価とされ、同等のスタッツでも年齢の高い方が低評価となる。

プロスペクトランキング 11位〜20位


11位以降は投手が多い

11位 畔柳亨丞

 11位は畔柳亨丞。惜しくもトップ10入りを逃した。中京大中京高校出身で高橋宏斗(中日)の一学年後輩。早くから頭角を現し、多くのスカウトが上位指名とコメントしていたが、スリップして5位指名。高校時代は177,8cmであり、”180cm未満のオーソドックスな右投手”という点がスリップの要因と言われていたが、ドラフト直後から180cmと登録されており、一部で話題となった。
 選手としては躍動感のある瞬発系のフォームで、弾丸のような150㌔のフォーシームでガンガン押すファイティングスタイル。変化球もマネーピッチのチェンジアップをはじめ、スライダーやカーブなど一定のクオリティで投げ込む。コマンドは破綻しているわけではないが、突如ストレートの四球を出すなど乱れる傾向にあり、スタッツが安定しない要因となっている。
 今季は昨年より登板ペース、消化イニングを増やしており、他の同期のプロスペクトと一緒に順調に成長している。ただ、スタッツは全体的に悪化しており、同期のなかでは畔柳が最初に壁にぶつかった形となった。まず大きなポイントとして、三振奪取力が落ちておりK/9 9.60→6.38)、追い込んでも決めきれない投球が続いている。また、元々良くなかったBB/9も悪化しており、制球に苦しむと同時に奪三振も減った。二軍戦を見ていた印象ではフォーシームの威力がやや落ちており、昨年150㌔を連発(MAX153㌔)していた姿を思い出すとやや物足りない。ただ、落ちたと言っても150㌔前後は記録しており、平均147㌔には到達しているので、年齢を考えるとあまり気にすることではないかもしれない。投げているボール自体が悪いわけではないので、コマンドが安定すると全体的に改善されるのではないか。高校時代は捕れる捕手がいないため封印していた無回転フォーク(稲葉が絶賛)や、途中少し試していた140㌔のカットボールなど、随所に光る変化球を持っているので、試行錯誤しながら来年以降の大きな飛躍に期待したい。
 将来像として、ノルマは一軍リリーフ投手、天井は一軍ローテーション上位投手。現状リリーフ中心の育成であり、本人のフォームからもリリーフ適正があると思われる。また、フォーシームの出力や空振りを奪える変化球など、リリーフで成功する要素を沢山備えているので、数年後にリリーフとして活躍している姿は容易に想像できる。しかし、個人的にはどこかでスターターとしての育成にもチャレンジしてほしいと考えており、山本由伸(オリックス)千賀(ソフトバンク→NYM)のようにリリーフで制圧する形を覚えてからスターターに転向するのも良いのではないだろうか。今季のスタッツ低下現状リリーフを想定した起用という点でランキングでは11位となったが、本来のポテンシャルは非常に高いので、来年のランキングでは上位に食い込んでいても不思議ではない。これからの飛躍を祈る。

12位 松浦慶斗

 12位は松浦慶斗。名門大阪桐蔭産の大型左腕(186cm)で、21年7位で入団。高校2年時にはドラフト1位候補との呼び声もあった逸材であったが、フォーム修正のため一時戦列を離れ、3年夏に復帰するも2年時の鮮烈なパフォーマンスは出せなかった。また、小学校時代を旭川で過ごし、元日本ハムJrというルーツもあり、ファイターズが指名するか注目されていた。
 選手としての特徴は、何よりもその馬力で、軽々150㌔をマークする。1年目はコンディション不良からしばらく登板がなかったが、8月に二軍デビュー、9月に一軍デビュー。打たれはしたものの、MAX153㌔をマークし、大きなインパクトを残した。サウスポーでこれほどの出力といえば、近年の高卒投手では羽田(西武)くらいしかおらず、球界でもトップクラスのパワーサウスポーとなる可能性を秘める。変化球はスライダー系やフォークを投げるものの、そもそも入団以降あまり登板機会がなく、詳細は不明。コマンド等もこれから磨いていく必要がある。
 今季も、前述の通りほとんど投げておらず、先日復帰。トータルでは5.1回5自責点と苦しい内容だが、正直結果をあまり重視するフェーズではないので、まずは健康に投げることが最重要タスク。高校時代を含めると、ここ数年間で投げていない時期が相当長いので、身体が出来上がるまでは慎重な起用が必要かもしれない。怪我は自身の課題を消化する以前の問題なので、焦らず頑張って欲しい。
 将来像として、ノルマは1軍のリリーフ、天井はエースクラスのスターター。怪我が多いため、思うように活躍できず引退する可能性もあるが、天井の高さはトップクラスで、順調に出力を伸ばしつつ課題を潰せばエースクラスの活躍が見込める。懸念点としては、ファイターズの育成した左腕は変則系が多く、パワーピッチャーのノウハウが少ないので(近年で言えば上原くらい?)、育て切れるか不安である。正直これほど実績の少ない投手を12位とするには勇気が必要であったが、その天井の高さを重視してこの位置とした。0か100か、どうなるか予測のつかない、投手版・万波のような選手である。

13位 安西叶翔

 13位は安西叶翔。常葉大菊川高校から22年にドラフト4位で指名された大型右腕。高校2年時にスリークォーターからサイドハンドへ転向し、球速・コマンドともに大きく伸びた投手で、ドラフト時は上位指名(2〜3位)の噂があるほどの評価であった。高校最後の夏の大会はコロナもあり、早期敗退となったが、スタンドには多くのスカウトが集結した。
 選手としての特徴は独特なフォームと球持ちで、モデルケースとしてスカウトから巨人の大勢戸郷、古くは斎藤雅樹と比較されていた。プロ入り後もややアングルは変わっており、現在も調整中のようだが、長い手足と独特のアングルから投じる150㌔近い速球は大きな武器であり、スケールは非常に大きい。球種はストレート、スライダー、フォークの3球種で、現状ストレートフォーク全体の約90%を占める。
 プロ1年目となる今季は故障の影響で開幕から調整が続き、シーズン途中から練習でマウンドに上がり、8月下旬に公式戦初登板を果たした。MAX151㌔の大型右腕のデビュー戦ということで大きな注目が集まり、結果的には3登板を1失点という成績でシーズンエンド。パワーピッチャーを目指すためにも全体的な出力(平均143㌔)をこれから伸ばしていく必要があるが、故障明けの高卒1年目と考えれば投げられただけでOKだろう。変化球もまだバラつきはあるが、低めに落とすフォークはマネーピッチになりうる素養を感じたので、来季以降に期待したい。
 将来像として、ノルマは先発ローテーション、天井はエースクラスのスターター。現状あまりにも実績が少ないため判断が難しいが、スペックは非常に有望であり、一気に化ける可能性がある。今季は投げていなかったようだが、高校時代から評価の高いチェンジアップもあり、長期的にコマンドで苦しむタイプとも思えないため、全体的な出力を上げつつ、落ちる球の精度が向上すればファイターズの奪三振マシンとなるのではないかと期待している。素材型であり、2〜3年は鎌ケ谷で身体作りをしながら修行の日々だろうが、まずは健康に過ごしてほしい。

14位 阪口樂

 14位は阪口樂。岐阜第一高校から21年のドラフト4位指名で入団したハイシーリングなスラッガー候補。高校2年からエースで4番を務めた逸材で、独自大会の加藤翼(中日)との対決はあまりにも有名。加藤の150㌔近い速球を本塁打にし、悠々とベースランニングする姿には誰しもワクワクしたのではないだろうか。そんな活躍もあり、2年生にして翌年のドラフト1位候補と言われていたが、3年生でややパフォーマンスを落とし、ドラフト4位指名で入団。二刀流ではなく、野手一本でプレーすることとなった。
 選手としての特徴は、大谷翔平(LAA)と柳田悠岐(ソフトバンク)を彷彿とさせる豪快かつ柔らかいスイングで、広角に長打を放つ。まだまだ粗さはあるが、捉えた打球の飛距離は圧巻で、打球速度が速いため角度のない打球でもあっという間に内野を抜けていく。また、高校時代に投手として143㌔をマークした強肩も武器であり、現在は外野手として起用されている。スピードは入団時に50m6.6秒という触れ込みであったが、イースタンでの外野守備を見ているともう少し速いのではないかと感じる(真偽は不明)。
 2年目の今季は96試合で打率.201/2HR/OPS.533と伸び悩んだ。1年目が打率.164/1HR/OPS.411だったことを踏まえると成長しているのだが、ポテンシャルの高さからすると物足りない。依然としてスイングは迫力満点で、ハンド・アイ・コーディネーションや目の使い方に課題があるのかもしれないので、松本剛や万波が師事する外部トレーナーのもとで修行してほしい。一方、守備は多くの経験を積んだ1年間であり、RF(328回)を中心にLF(224回)、CF(160回)とOF中心の起用。元々3Bを有薗と競い合っていたが、球団はアスリート型OFとして育成するつもりなのかもしれない。ただ、OFの守備指標は良くないため、改善が必要。打撃、守備ともに時間がかかりそうだ。
 将来的なノルマは、一軍のLFで二桁本塁打を記録する打者、天井はRFでクリーンナップを打つ打者。素材の良さは言うまでもないのだが、現状の伸び悩み具合ではノルマを下方修正せざるを得ず、現実的なイメージはLFを守りつつ打撃で守備面を補う打者だろうか。現状のスタッツだけを見るならば、ランキングはもう少し下の位置となるだろうが、素材と年齢を買って14位とした。打撃は何かのきっかけ一つで一気に大化けする可能性があり、秋広(巨人)のような成長曲線を描けるか。これほどのロマンの塊を育成できないのはチームの損失なので、是が非でもモノにし、将来ファイターズのクリーンナップとしてタイトル争いをするような選手になってほしい。

15位 田中瑛斗

 15位は田中瑛斗。柳ヶ浦高校から17年にドラフト3位で入団した6年目の投手。高校から本格的に投手へ転向し、甲子園経験はないものの素材の良さを買われて指名された。今年24歳のため、本ランキングの有資格者では最年長となる。18年に高卒1年目ながら二軍で10登板・防御率1.64と快調なプロデビューであったが、20年に右肘関節鏡視下手術を受け、翌年育成契約に移行、リハビリを経て22年に支配下に復帰した苦労人。故障のため遠回りとなったが、本来すでにローテーションに定着していても不思議ではない素材。
 選手としての特徴は、”多彩な変化球を均等な割合で投げ込む技巧派的側面””スターターとしてフォーシームの最速153㌔(平均147㌔)の速球派的側面”が同居していること。ただ、現状明確なマネーピッチがないため、多種多様な変化球を散らして避けているという状態に近い。また、本人が師事している上沢にフォームや投球スタイルが似ているが、上沢よりも全体的な精度に課題があるため、被打率が高く奪三振率が低い傾向にある。ただ、高校時代の最速が149㌔であったため、入団以降順調に出力が伸びているファイターズの数少ない出力向上例でもある。
 今季はイースタンで一定の結果を残し、8月31日に初登板。シーズントータルでは8.1回を防御率5.40でフィニッシュ。イースタンでは打ち損じやファールとなっていたボールが一軍ではヒットコースに運ばれ、ランナーを背負ってからは厳しいコースに投げようとするあまり一人相撲というサイクルに陥り、良さがあまり出せなかった。イースタンレベルの話ではあるが、各ボールの指標を見るとくっきり明暗が分かれているので(良:スライダーチェンジアップシュート、悪:カーブ、フォーク)、来年度以降は打者の反応を見ながらピッチセレクトを見直してもいいかもしれない。また、全体的にコマンドの課題があり、一軍の登板ではストライクが取れないか、甘いコースで痛打を浴びるかの二択に陥っていたので、4分割程度のコマンドは必要かもしれない。ただ、大きな故障から復活した大卒2年目と思えばまだこれからなので、来季以降の取り組みで見返してほしい。
 将来的なノルマはロングリリーフも可能な便利屋リリーバー、天井はローテーション上位投手。ドラフト時に原田スカウトから”エース級の逸材”と言われるほどのポテンシャルであり、柔らかな腕の振りや150㌔中盤も目指せる出力など、今でもピースがハマればローテーション上位投手を目指せると考えている。強豪球団ではスターターより便利屋リリーフとしての出場機会が多くなりそうだが、幸い(?)ファイターズの先発陣であればスターターとしてのチャンスが巡ってくると思うので、まずは機会を逃さずアピールしてほしい。来季は鎌ケ谷で圧倒的な成績を残し、ローテの谷間等の昇格を虎視眈々と狙いたい。

16位 田宮裕涼

 16位は田宮裕涼。成田高校から18年にドラフト6位で入団した俊足巧打のキャッチャー。甲子園経験はないものの、1年生からレギュラーを掴み、高校でも千葉県選抜でも主将を務めるリーダーシップ強肩を評価されてプロ入り。また、甘いマスクで女性人気が高く、SNSなどでは田宮に関する投稿が散見される。後述するが、後半戦の最もサプライズとなった選手の一人である。
 選手としての特徴は、捕手ながらスピードがある点で、今季はC以外にも2BやOFでも起用された。また、前述した強肩もアピールポイントのひとつで、二塁へのスローイングは「ゆあキャノン」や「ゆあビーム」と言われる。打撃ではスタッツが残らないものの、随所にセンスを感じさせるものがあり、打ち終わりのフォロースルーは近藤健介(ソフトバンク)を彷彿とさせる。実際打撃練習等では柵越えも珍しくなく、raw powerとgame powerに乖離があるタイプの打者である。
 今季は春のキャンプで状態が良く、「遂に覚醒か」と期待していたファンも多かったが、シーズンが始まると低空飛行。イースタンでは91試合に出場し、打率.220/1HR/OPS.577と物足りないスタッツであり、いかに俊足でもCから正式にコンバートさせるほどの打撃成績ではなかった。しかし、9月に昇格すると攻守に躍動。10試合ながら打率.258/2HR/OPS.742という驚きの結果を残した。またチャンスに強く、得点圏打率が.50010試合で9打点というRBIマシンぶりを発揮。守備でもソツのない動きを見せ、何度も正確なスローイングで盗塁阻止。後半戦最も大きなサプライズとなった。
 将来的なノルマはプラトーンで起用される一軍捕手、天井は上位打線を打てるC兼OF。正直昇格前の時点では本ランキングに入っていなかったのだが、昇格後の圧巻のアピールでランクイン。ただ10試合(31打席)のみのアピールでもあり、数年燻っていたこともあるため参考記録として扱い、16位とした。来季以降も同等の活躍を続けるなら上位トップ5位に食い込むほどのパフォーマンスであるため、非常に注目している。おそらく将来的な課題は守備位置であり、今季終盤の打撃力であれば出場機会を増やすためにもOF正式転向等も現実味を帯びてくるが、今季一定水準のC守備を見せたため、まずはCとして育成して問題ないだろう。数年遠回りの時期もあったが、目標は高く大先輩近藤健介のような選手になってほしい。来季が最も楽しみな選手の一人である。

17位 松本遼大

 17位は松本遼大。20年に花巻東高校から育成1位で入団した大型右腕で、育成指名解禁後初の高卒投手であったため、注目を集めた。188cmという長身もあり、ドラフト時に一部アマチュア界隈では名前が挙がっていたが、高校時代の実績も少なく全国的な知名度はなかった。
 選手としての特徴は、長身を活かした角度のあるフォーシームとフォークのコンビネーションで、入団後順調に球速が伸びて最速152㌔に到達。日によってクオリティにバラつきはあるが、低めに決まったフォーシームの威力は抜群。投球の大半がフォーシームとフォークのツーピッチ(計80%)だが、スライダー系やカーブも時折混ぜる。コマンドは特筆すべきほどではないが、落ちる球がマネーピッチのパワーピッチャーにしては与四球が少なく、ゾーン内で勝負もできる。また、若手投手にありがちなマウンド周りの技術(牽制や守備など)も破綻しておらず、ピッチングのクオリティに安定感が増せば一軍昇格も近いだろう。
 3年目となる今季は、序盤出力が上がらず苦労したが、後半戦にかけて状態を上げ、結果的にはキャリアハイ。1年目が10.2回を投げて防御率9.28/4Kだったが、2年目に25.1回2.84/23K、そして今季は47回3.83/49Kと順調に成績を伸ばした。入団時に大渕スカウト部長は「先発をイメージ」とコメントしているが、今季はリリーフ起用がメインであり、来季以降の起用法にもよるが、リリーフであれば支配下昇格に最も近い選手の一人だろう。現在大学3年生の代であり、イースタンで50回をK/9 9.00↑かつMAX153㌔の大型右腕と考えれば支配下上位〜中位指名が予想されるので、順調に育成できているのではないだろうか。
 将来的なノルマは一軍リリーフ、天井は先発ローテーション投手。これまでの伸び具合、スペックを加味すると一軍リリーフクラスになる可能性は高く、将来的に勝ちパターンを担うことも可能だろう。しかし、チームへの貢献度を考えれば可能な限りスターターとして育成したいので、支配下昇格を急がないのであれば来季は先発要員として鍛えても良いかもしれない。柳川の寸評でも記載したが、これほどのスペックにもかかわらず17位である理由はリリーフ起用が中心だからであり、スターターとして一定の水準が担保できるならトップ10にランクインする素材。そろそろファイターズでも育成から一軍の舞台で活躍する選手が見たいので、福島・柳川・松本で支配下昇格をかけて切磋琢磨してほしい。

18位 齊藤伸治

 18位は齊藤伸治。20年に東京情報大学から育成2位指名で入団した投手。大学進学後に本格的に投手へ転向した特殊な経歴で、3年生になってからスタッツを伸ばしたものの、当時の知名度は低かった。大学時代の最速は148㌔。研究熱心な選手であり、現在畔柳等もお世話になっている外部コーチのもとでトレーニングに励んでおり、順調に伸びている育成選手のひとり。
 選手としての特徴は、マネーピッチである大きく曲がるスライダーであり、現在投球の30%を占める。投球フォームやピッチングスタイルは石川柊太(ソフトバンク)に似ており、フォームは年々微修正を重ねている。大卒3年目だが、投手経験の浅さからフォーシームの球速が伸びており、春のキャンプでは150㌔オーバーのボールを連発して大きなサプライズとなった。その他の変化球はカットボール、カーブ、フォークとオーソドックスなピッチセレクト。コマンドに課題があり、四球でランナーを溜め、カウントを悪くして痛打されるシーンが目立つ。
 今季は前述のとおりキャンプでインパクトを残したが、支配下昇格には至らず。開幕以降は力強さが少し落ちており、苦しむ時期もあったが、年間ではキャリアハイの成績。54.1回を投げて防御率2.82/48Kは立派だろう。特に今季の鎌ケ谷はイニングイーターが少なく、投手陣フル動員のような試合が多かったため、様々な場面で登板しながらイニング跨ぎもこなした齊藤の価値は高い。スタッツが伸びた要因はいくつもあるが、ひとつはピッチセレクトの修正で、指標上良くなかったフォークの割合を23%から7%まで減らし、スライダーの割合を増やした。現状リリーフとしては出力不足であるため(平均144㌔)、来季は年間を通してベストコンディションを維持し、平均147㌔程度は目指したい。
 将来的なノルマは一軍リリーフ、天井は勝ちパターンのリリーフ。現状のスタッツは優秀であり、選手としての伸び盛りではあるが、来季が大卒4年目であり、徐々に圧倒的な結果が必要となる。コマンドに改善が見られればスターターとしての起用も考えられるが、より支配下昇格に近いのはリリーフなので、当面リリーフとして起用されるであろう。慢性的なリリーフ不足に喘ぐファイターズにおいて、リリーフ要員として昇格するチャンスはあるので、ライバルとなる柳川、松本あたりと競い合いながら頑張って欲しい。

19位 長谷川威展

 19位は長谷川威展。花咲徳栄高校から金沢学院大学へ進学し、21年のドラフト6位指名で入団したサウスポー。ちなみに、高校時代は1学年下に野村佑希がおり、プロで再び一緒になるという縁を持つ。高校時代は苦労したが、大学進学を機に開花。代表選考合宿に呼ばれるほどの選手となり、同大学から直接プロ入りする初の選手となった。
 選手としての特徴は、独特のサイドスロー気味のフォームから放たれる回転数の多いボールで、非常に奪三振率が高い。出力は及ばないものの、投球フォームがエスコバー(DeNA)に似ており、本質的にはパワーピッチャー。主な球種はフォーシームと2種類のスライダーで、全体の約90%を占めるツーピッチであり、稀ではあるがアクセントとしてツーシーム系を混ぜる。現状スライダーが明確なマネーピッチとなっており、指標は優秀。対称的にフォーシームを痛打されており、課題となっている。また、リリーフとしては比較的四球が多いこともあり、今後の活躍にはフォーシームの強化全体的なコマンドの向上がカギとなる。
 今季は主に鎌ケ谷が主戦場であったものの、一軍でも登板機会があり、計9試合防御率1.08とそれなりのスタッツを残した。しかし、一軍では高被打率、低奪三振率と本人のスキルを十分に発揮したとは言い難く、内容は防御率ほど良くなかった。特に左打者によく打たれていたため、ベンチの意図に沿った活躍ではなかっただろう。対象的に二軍成績は良好で、34試合に登板し、防御率3.00/奪三振率9.21/被打率.201をマーク。ブルペンデーの多いファイターズにおいて貢献度は高く、故障もあって一軍・二軍合計で12イニングのみとなった昨シーズンと比べると、大きな飛躍となったのではないだろうか。また、スライダーは左打者よりも右打者に対して威力を発揮しており、右打者のバックフットにスライダーを落として空振りを奪うシーンが目立った。対右を苦にしないという強みは残しつつ、今後は対左のピッチセレクトをブラッシュアップしたい。
 将来的なノルマは一軍リリーフ、天井は勝ちパターンのリリーフ。前述したように対左専門の投球スタイルではないため、将来的には1イニングを任せることのできるリリーフに成長すると予想するが、極端なツーピッチであることもあり、スターターとしての起用はイメージしにくい。当然WARを稼ぐという観点では不利となるため、本ランキングでは19位となった。しかし、入団後の成長スピードは順調そのもので、おそらく来季は一軍で本格運用されるはずなので、しっかり結果を残してブルペンの一角を担いたい。大学時代から一貫して奪三振率が高いことも武器であり、上手く育成できれば勝ちパターンの投手となっても不思議ではない。

20位 山口アタル 

 本ランキング最後の20位は山口アタル。22年の育成ドラフト3位で入団した外野手で、バンクーバー出身の逆輸入選手。経歴としては、日本人の父とギリシャにルーツを持つ母のもとに生まれ、2012年にカナダ代表としてリトルリーグの世界大会に出場(日本代表には清宮など)。最終的にテキサス大学を中退。大学では投手と外野手の二刀流で活躍した。無名中の無名で、ドラフト当時はネットを中心に話題となり、筆者も様々な媒体を調べたが、とにかく情報が少なかったことを記憶している。後日、自分で12球団へPR動画付きの自己推薦メールを送り、ファイターズの入団テストを受けて合格となったため指名されたことが明かされた。
 選手としての特徴は、圧倒的なフィジカルで、179cmと小柄ながらも投手として最速153㌔、打者としても打球速度167㌔を記録するパワーがある。打撃のポテンシャルは大渕スカウト部長も認めており、「スイングの強さ、速さがずぬけていた」とコメントしている。プロスペクトとしては比較的年齢が高いが、野手転向して間もないため、荒削りながら潜在能力は高い。明るいキャラクターも特徴で、新庄監督を「ちょっと僕より格好いい」と表現するなどユーモアに優れ、二軍の選手と楽しそうに会話する姿が目立った。
 今季は開幕から二軍で実戦経験を積み、36試合出場。しかし、7月に左膝前十字靭帯再々建術を行い、今季絶望。ゲーム復帰まで8ヶ月とされており、来季開幕に間に合うかも微妙となった。スタッツは特筆すべきところがないものの、野手転向間もないことや、初めてのNPBで新しいカルチャーに触れたばかりであることを考えれば、打率.235/2HRはまずまずではないだろうか。試合の映像を見ると、角度をつけるスキルに課題があり、圧倒的な打球速度のゴロが散見されたため、来季以降打球角度を上げることができれば長打を量産できるのではないだろうか。守備は主に両翼(LF・RF)を担い、お世辞にも上手ではないが、野手歴の短さを考えると健闘した(LFで微プラス、RFで大マイナス)。Armの強さはあるので、レンジを広げつつ細かい技術を学んでほしい。幸い、現政権は外野守備に力を入れており、外野守備の上手い選手も多数在籍するため、どんどん吸収してほしい。
 将来的なノルマは一軍の代打、天井は両翼のレギュラー。現状実績が少なすぎるため予測は難しいが、今後大きな故障もなく実績を積めば一軍の代打レベルには成長するだろう(現実的には一軍の代打レベルでは支配下昇格を掴めないが)。NPBの中に混ぜても目立つほどのフィジカルモンスターぶりは間違いないので、何かのピースがハマれば一気に活躍する未来を描けなくもない。年齢や育成契約ということもあり、残された時間は多くはないだろうが、貪欲に取り組んで戦力となって欲しい。

最後に

 本ランキング11位〜20位まで、全10人をご紹介させていただきました。「この選手はいないの?」「この選手のほうが上だろ」など、様々なご意見があると思います。ぜひ皆様のランキングも作成してみてください。
 また、もう少しでドラフトということもあり、新しく入団する選手もたくさんいると思いますので、ドラフト後に「新入団選手を反映させたランキング」を作成しようと思います。本ランキングは、あくまで2023秋バージョンということで、ご了承ください。
 拙い文章ではございましたが、ご高覧いただき、ありがとうございました。誤字・脱字、「てにをは」等不自然なところがあると思いますので、お手柔らかにしていただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。

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