商談は続く

慎重に物事を整理し、主として通勤に使うとは言え、ハードケースに入ったベースくらい運ぶという最低限の役務をこなせなければ財布の紐は緩められない、とまた別の自分が、最後には判決を下します。実用性を考えればFIAT 124 spiderを我が物にはできませんでした。

中古のアクセラは、ディスコンに可能性を見いだす扉を開けてくれました。マツダ車の中では、外見とサイズでは最も好ましかったCX-3のMTは、少し前まで2.0Lガソリンエンジンを搭載するFFが買えたようです。1.8Lディーゼルは、求めているものとコンセプトが異なっているようですが、そっちなら期待できるかもしれません。なんにせよ、MTを条件にいれて検索すれば、本当に数台しか出てこないのでターゲットは絞りやすくなります。

自宅から小一時間の距離でそのようなタマを発見しました。ディーラー系ではない、一般中古車ディーラーでした。試乗は、非常に限定的で、店の裏手にある農道(おそらく私道)を行って帰って往復するのみです。動かしただけ。MT自体、CX-3では初めて乗りましたが、まぁまぁイケてる気はしました。その仕様が稀少であるためか、価格も強含みと言っていいでしょう。クルマ好きの足元をよく見ています。

一方、視野を広げるとスズキのスイフトスポーツ、通称スイスポは非常に評判が良く、マイカー初代がスズキ・アルトだった縁もありますから、とりあえず乗っておくかと、盆休みにやっているディーラーへ試乗と見積もりを依頼します。どちらかと言えば、飛ばせ飛ばせと鼓舞してくる印象が若々しくありました。そして下取り価格が異常に高く、値引きもあり、最高の条件を提示してくれました。納車は9月後半と言われます。元の値段が安いのに、こんなに引いて利益あるのだろうか、それくらい「ヤバい」のだろうか、色々想像してしまいましたが、ここでは他社との駆け引きに使えると思うに留めます。

シビック・ハッチバックのMTを持っているホンダディーラーも訪問しました。対応された社員は元レーシングドライバーとのことで、MTを用意するのは彼にとって有意な餌のようです。私は釣られた魚です。

2020年8月現在、ホンダの英国内にある工場は閉鎖が決定しており、そこで作られて輸入されるこのシビックも生産中止がアナウンスされたばかりです。最終バージョンを今ここで発注すると、納車は2021年3月だそうです。7ヵ月待ち!

マツダの新車も納期は平均一月半と言われていました。このところずっと輸入車を乗り継いできた身としては、数ヶ月待たされるのが常識とは存じませんでした。輸入車は見込みで仕入れますので在庫がわかっていて、希望のグレードで商談すると、それが有るとか無いとか、この色なら可とか、その色は受注生産だから相当待つとか、みなさん端末を叩いて状況を教えてくれます。有るものの中から、これがいいと、仕様や色を選ぶ感じでした。国産車は、注文が入ってから作り始めるみたいなので、効率は確かにその方がいいですね。

ホンダシビックの1.5LターボをMTで走らせると、これは私は、もうほとんど不満というものを検知できませんでした。脱帽です。それまでに試乗した全てのクルマよりも意志に忠実な反応を見せ、安心と共に、安全な範囲での刺激を与えられました。私の運転技術が高くないために、これで充分過ぎるほどでした。ホンダは電気方向へ、かなり強い意志を持って舵を切り、F1もそれで辞める決断をしましたが、こうしたコンパクトなエンジンを使って楽しい車を作る、言ってみれば1980年代にやってたことの40年後の熟成という見方をするなら、当然と言えば当然ですが、頂に手が届くところまで進歩していたのかもしれません。嬉しい誤算でした。

ディーゼルからの、あるいは旧フォード傘下の姉妹関係だったことや、家で母と妹がそれぞれ使っていたとか、マツダ愛を声高に唱え、機が熟して自分もそこへ帰着する絵を描いておりましたが、そんな自身が実際にはホンダ車を2台乗っていた、という意味でのホンダ愛が裏側に潜んでいることを気付かされました。

懸念は納期です。7ヵ月後になっても、まだその1台を楽しみに待つことができるだろうか。私はご承知の通り、気が変わりやすい。次期モデルチェンジの詳細が発表されているかもしれません。また手放すことを決めたボルボに乗り続けるのも、かなりの我慢なのではないか。

加えて、サイズを縮小したかった件。V40よりも小さくしないと意義が薄いのです。今感じる不便=自宅駐車場での乗車・降車の困難さ、を解消できなければ、直ちに後悔するかもしれない。ホンダの営業さんは、Google Earthか何かで、私の住所を検索すると航空写真で自宅駐車場をノートパソコンに表示します。私のスロットはここですと示し、面前にある段差(向かいの居室の玄関先に設えられた歩道のような部分)、を除けるために切り返しが必要なことなど説明します。ホンダ・シビックの最小回転半径は5.5mと小さくありません。V40は5.2mです。ですから、クルマは気に入ったが実使用については不安があると、一旦断りを入れます。自宅まで乗って行かれて出し入れを試してくださいと進言されますが、すでに心は決まっていました。



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