ベース再生装置におけるパワーアンプについて少し の7
どうにかして、トランスというものを理解したいと苦闘中です。少しずつ学びながら、その成果もここで反映できたらと考えておりますので、温かく見守ってくださいませ。なにとぞよろしくお願い申します。
トランス、というワードなり、スイッチング電源、というワード、あるいはそれらを並列で検索したりした結果、スイッチング電源用トランスの販売サイトへ飛んだりします。ベースアンプの最軽量クラスの物にはトランスが入っていないようなのですが、おそらくそれがデジタルの恩恵ということなのかと想像します。一方、アナログアンプの場合、つまり先述のMarkbass Momarkの250W、500Wアンプフレームですが、こちらは「スイッチング電源用トランス」が積まれていたりしたのでしょうか。その辺はよくわかりません。
ただ、このような議論、つまりデジタルアンプは好きじゃなくてね、と楽器店で告白したりすると、トランス入ってるアンプの方が音はいいですよね、と同調されます。この場合のトランスとは何か。ベーシスト的に重要なのはこの辺りの理解だと思っています。
お詳しい方に、何を今さらと言われそうですが、その場合のトランスは、電源トランスを指していると思います。
音声信号増幅を目的としてアンプが登場した時、それは真空管を駆動させたものでした。その場合、電源トランスと出力トランスが搭載されています。出力トランスは、真空管で増幅された信号をスピーカーの抵抗値にマッチさせるために、アンプの出力とスピーカー入力の間に挿入されるものだそうです。電源トランスは、これまでの話の中で扱ってきた、コンセントから引き込んだ交流100V(日本の場合)を異なる電圧値に変換する役割をしてます(内部の回路を働かせるための電源を供給します)。
出力トランスが必要とされるのは真空管アンプの場合というのが基本で、トランジスタアンプの場合は原則不要とのことです。それがないほうが音が良いという話もあります(ノイズやレンジなどの点で)。ですから、なにがしかの方法でその働きをトランスではないものに置き換えた場合に、「トランスレスの真空管アンプ」などという言い回しが成立します(電源トランスは積んでいても)。逆に、本来無くてもよいはずのトランジスタアンプに出力トランスを、わざわざ積むというケースもあるみたいです。
ネットサーフィンでのにわか知識です。具体例を挙げることができずに申し訳ありません。
そして、電源トランスの方も、最も進んだスイッチング電源の場合には不要となるため、そのようなケースでは本体内に一切のトランスを持たない、という状態が可能です。
スイッチング電源用トランス、という商品カテゴリが存在する実態からして、D級=電源トランスレス、ということではないようです。一説によれば、初期アコースティックイメージ(平置きで上面にコントロールがあった時代か?)にはD級でありながら電源トランスを積んでおり、ある世代からは電源トランスレスとなっているようで、音は初期の方がスピーカー駆動力が高いという評価です(筐体は小さくなり軽量化が大幅に進みました)。
ここまでは楽器用アンプ、オーディオアンプ、つまり増幅装置として共通の話ですが、もうひとつ、トランスが使われる箇所があります。ベースアンプの背面にラインアウト用のキャノンコネクターが装備されている場合の、内部措置です。バランスアウトではhot cold groundの3極接続をしますので、信号の電位差を、便宜的に中間地点を0Vにした+−の値に直さなくてはなりません、これをトランスが担います。
DIという装置はポピュラーですよね。昨今、ベーシストのマストアイテムとなりつつあり、ライブやレコーディングにみなさん、持ち込みたがります。ベースの音をラインでとる場合に、これを噛まします。DIからの出力は、普通マイク信号と同等に扱われることになります。
DIの商品群を眺めると、アクティブDIとパッシブDIに分けられます。切り替えてどちらとしてでも使えるようなものも知っています。ただ、確実に言えることはアクティブタイプは、その名のとおり電源を必要とします。通常DIを駆動する電源はマイクケーブル上を、ミキサーの側から送られることになります。これをファンタム電源(幽霊?)と呼んでいます。電池内蔵タイプや、コンセントに挿すケーブルを使う物もあります。
これらアクティブタイプは、先の信号変換を、私には仕組みがわかりませんが、電気的に行うことができるらしいです。つまりトランスを使いません。ですのでパッシブDI=トランス、アクティブDI=トランスレス・要電源、という風に捉えて間違っていません。
ベースアンプという商品群(アンプヘッドですが)には、バランスアウト用にトランスを使うもの、使わないものの2種があるわけです。当然、キャノンのアウトを持たない機種だってありますけれど、それはさておき。
ドイツのTechAmp社の製品にPUMAというシリーズとBlack Jagというシリーズがあります。どちらもラインアウトとしてキャノンコネクターを装備しています(ですから、こちらのアンプの使用者はDIを用意する必要がそもそもありません)が、前者はアクティブ、つまりラインドライブ用のトランスを持ちません。後者はトランスを装備しています。トランスをわざわざ使うということは、その方が音が良い、という主張が込められています。
私は、PUMAとBlack Jagの弾き比べをしたことがありませんので、両者の音質傾向に違いがあるかどうか不明です。ただし、アンプの背後からPAへライン信号を送った場合には、方式の違いによる音質差が必ず発生すると想像します。
ここまでの話で、ベースアンプに搭載される可能性のあるトランスは電源トランス、出力トランス、信号用トランス(ここだけの便宜名です)となります。リニアアンプだから、デジタルアンプだから、などということだけで、どのトランスが省かれているかは判別できません。個々に、どのように設計されているか次第なのです。
トランスは、特に電源トランスは、アンプの音質に決定的な影響を与えると言われており、高級オーディオなどでは超重い、超でかい、超贅沢な専用設計のトロイダル(ドーナツ型の)トランスが、最重要部品として、まさに物量を投じた結果として、天守閣のように鎮座しています。アンプの重さの大半をそいつが占めているといっても過言ではありません。
かくしてトランスを置くということが、それ次第でクォリティを左右しかねないわけで、音質チューニングのキモともなってきますから作る方も大変でしょうね。と私は想像します。
楽器店の店員さんが、トランス乗ってると音が良い、という意味はだいたいそんなところだと理解したらいいかと思います。もちろん私は相槌を打つわけですが、そんな単純じゃないでしょ、と内心思うわけです。
おわり
あ、2つ前だったかな、家のリスニングオーディオにHUMPBACK engineering製のトランスボックスを使っていると言いましたが、それこそが信号系に使うものの典型で、バランスアウトを得るための装置ですがアンバランスで使っています。でもトランスを通すと音が良くなるんです。こんど少しその話もしましょうね。